筋力測定とトレーニングを同時に行える「レッグカールリハビリ機器」
学ぶべきポイント
- 長年培った微細加工技術を応用し、医療機器分野に参入
- 高齢化社会を見据えた、リハビリ機器に対するニーズに対応
- リハビリ機器開発により、患者の回復と健康促進に貢献
株式会社衣川製作所は、三次元切削加工、三次元型彫りレーザー加工、成形研削加工、ワイヤー放電加工、型彫り放電加工等を駆使し、これらの微細加工技術を組み合わせることで半導体やエレクトロニクス分野の幅広いニーズに対応してきた。
この長年培った微細加工技術を応用し、同社は約15年前から医療機器の開発試作をスタートさせた。そして現在、循環器系、整形外科系、消化器系、眼科系、脳神経外科系等の領域で使用される手術機器の開発試作に取り組んでいる。
医療機器の開発試作により、多くの実績と知見を持った同社が注力するのが、筋力測定とトレーニングを同時に行える「レッグカールリハビリ機器」だ。この機器の特長は、力やポジショニング等を制御するサーボ式モーターを使用することで、等速性・等尺性・等張性の筋力の数値化ができること。そして測定モードとトレーニングモードを有することで筋力の回復が一目でわかること。このため手術後の患者の筋力がどのくらい回復したかを数値で確認できるのだ。これは患者にとってのトレーニングの意識向上にもつながるという。また情報をデータ化することで、より効率の良いトレーニング方法を提案することができるのだ。
この製品の開発経緯は、リハビリ機器の重りや椅子の高さの調整などをアナログな手法で行っていた医療の現場を改善したいという同社の想いからだ。
2016年に同社が主体となり開発に取り掛かり、製品の中枢となる計測部分のアイディアを担った。そして製造工程に関しては、トレーニングマシンのメーカーに委託することで開発が進んでいった。現場の理学療法士とイメージを共有しながら、機能をどのくらい加えるかなどの議論を重ねて、製品づくりへと反映させた。
開発にあたり重点を置いたのがデザインだ。利用者が使いたくなるような、実用性のあるデザインを意識し、座り心地なども実証実験を重ねていった。また、市販のマッサージチェアなどを参考にしながら、精度の高さや快適性により磨きをかけていった。そして2018年に「レッグカールリハビリ機器」は完成する。
そして、この機器のさらなる汎用化を進めるため、同社は「筋力RUNキング」と呼ばれるシステムを開発した。これはクラウドサーバーによる管理で、利用者の個々の計測データを、リアルタイムのランキング形式で表示できるシステムだ。カラオケボックスにあるランキングのように国内各地の機器とクラウド上でつながっているため、利用者の結果が性別・年齢・地域ごとにランキングされるという。各地の利用者の結果をデータ化できるためセグメントされたデータが抽出でき、より効果的なトレーニング方法を提供できるのだ。さらに自治体等と連携することで、それぞれの地域に特化した健康促進に貢献することも可能だ。
同社の営業・技術部部長 石井達夫氏いわく、「『筋力RUNキング』という名称は、現在、商標登録を出願しています。この機能に関しても特許を出願中です。『筋力RUNキング』が広まることで、楽しみながらより多くの方に『レッグカールリハビリ機器』を使用してもらえれば」とのこと。
さらに「レッグカールリハビリ機器」の開発技術をもとに、現在は「レッグプレスリハビリ機器」「ショルダーリハビリ機器」「チェストリハビリ機器」「アブダクションリハビリ機器」といった、身体のその他の部位を測定するリハビリ機器の開発もはじまっているという。


同社にとっての課題は、「レッグカールリハビリ機器」やその他の機器をどのように拡販をしていくかだ。来るべき高齢化社会に向けて、このようなリハビリ機器に対するニーズは高まりを見せている。まずは介護機器の販売を手掛けるメーカーとのコラボレーションで国内展開を目指していくという。
同社の社員は現在、23名の少数精鋭だ。20代も多く、前職はカメラマンだったという技術者をはじめ、様々な得意分野をもった社員が集まっている。また同社の敷地内には、常設のショールームを設置。企業の技術開発者や、医療従事者、医師の方々にとって製品づくりのヒントになるような製品が展示されている。こうしたものづくりに対する自由な雰囲気が、既成の概念にとらわれない製品づくりを推進しているといえる。さらに2018年7月には医療機器に特化した関連会社(株式会社スクエアメディカル)も設立。同社と技術開発における相乗効果も期待されている。
こらからの高齢化社会に向けて。同社の技術開発への挑戦はこれからも続いていく。
取材日:2019年3月15日
企業情報
株式会社衣川製作所
長年半導体、エレクトロニクス関係で培われた、精密微細加工技術で持って、15年前から、医療機器の開発試作を行なっております。特に循環器系で使用されるマイクロカンシや整形外科における、膝、股関節に挿入される人工の骨、インプラント等を装着する為の、手術器具等の製作も行なっております。
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