BREAKTHROUGH連載インタビュー

生き残る企業の明暗を分ける「考え方」田中 芳夫 <連載第1回(全4回)>

2017.09.07

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オープンイノベーション2.0とはなにか?

21世紀に入り、市場環境や競争原理は大きく変わっています。従来のままでの事業モデルや製品、サービスだけでは、これからの時代、生き延びていくことが難しくなっているのが実感でしょう。この現象は、日本企業だけが直面しているわけではなく、グローバルレベルでも同じような状況にあると言えます。

そこで、これまでの企業活動とはまったく異なる、ある意味、分野を横断するカタチでの課題解決を行うことで、次世代への活路を見出そうとする企業が増えてきています。
ただしそのような手法は、自社で確立してきた技術や知見だけでは実現できない場合が少なくありません。

その事実を解決するために唱えられたのが、「オープンイノベーション」です。
2000年の初めにハーバード・ビジネス・スクールに在籍していたヘンリー・チェスブロウ教授により提案された、この「オープンイノベーション」は、不足する知見や技術などを、相互に補完しながら事業を開発・運営しようというもの。そうすることで顧客価値を新たに創造・実現することを目的に提唱されました。そして、そのような取り組みも実際に始まっています。

その後、より社会に広げるとともに、ネットワークを利用して大きな課題を解決していく方向に進化。その取り組みを「オープンイノベーション2.0」と呼ぶようになっています。ここでは地域、個人、企業や行政など、これまで以上に広い関係者が関わり、大きなうねりを作り出すように展開していることが特徴です。

生き残る企業の明暗を分ける「考え方」とは

オープンイノベーションが求められている状況にもかかわらず、それを実践するのを苦手としている日本企業が多く見受けられます。

日本は、生産技術に注力し、「モノづくり」を推し進めてきた結果、国全体が成長してきました。

こうした「モノづくり」では、米国を脅かす状況にまで進化しました。1970年代以降の繊維や鉄鋼、自動車や半導体、テレビやビデオなどを巡る貿易摩擦が象徴的です。

日本をはじめとする後続国に苦しめられてきたことで、米国は「モノづくり」だけで世界で勝負することの限界を、いち早く体感しました。そして、社会システムやその仕組みを作り上げることや、そのための手段となるコンピューターやソフトウエアといったIT(情報技術)に活路を見出していきました。

日本もアメリカと同じように、「モノづくり」だけでは世界で勝ち抜けない状況に陥り(価格競争がその大きな要因ですが)、その対応に追われます。しかし、米国と大きく異なっているのが、それでも「モノづくり」一辺倒の姿勢を崩していないように見える企業が多いという点です。モノ(製品)とコト(サービス)を組み合わせたシステムを作っていかなければならないのに、その発想がないために時代に取り残されつつあるのです。

ITを例に出すと日本企業は、省力化や効率化という部分でしか、ITの活用法を考えていないようです。そのような考え方が、IT分野で日本が他国に置いていかれる原因となりました。外資企業はITを戦力ツールと効率化ツールとして捉えています。生産性向上だけのITと言っていると、やはり商品開発や経営戦略の捉え方が変わってしまうのです。その考え方は、20年経ってもあまり変わってないようです。他にもIT投資の動向を見てみると日本でのITへの考え方がわかります。アメリカはIT分野が、コンスタントに伸びているのですが、日本は景気の動向で大きく変動します。不景気になるとIT投資が顕著に減る傾向が、ITを効率化ツールでしか捉えてない日本の考え方を表しているのです。

IT化を単なるデジタルの活用として捉えるのではなく、より深く社会インフラや、情報産業として発達させてきたアメリカと日本では大きく水をあけられる結果となっています。

世界的にイノベーションの半分以上はIT分野で起こっていて、それ以外の分野でのイノベーションは、全てITを活用して起こっていると言われています。今のイノベーションはITが全く関わっていないということはないのです。

ですから日本の中小企業もアイデアがあれば、どんどんITを活用していってほしいと考えています。

一昨年の新価値創造展での講演で、タイヤのバルブメーカーの人にお声掛け頂き「うちの若い社員がIoTでタイヤのデータを全部とると自社のビジネスに繋がると言うのですが、どうすればいいでしょうか?」というご相談がありました。こういう場合はアイデアがあれば、すぐにやらせてあげればいいと思うのです。

オープンイノベーションで、最初に必要なことはアイデアをテーブルの上に出させることが重要になってきます。例えばバルブメーカーさんの例を発展させて考えてみるとバルブとデータをセットにして、タイヤメーカーさんと組んだり、故障率などのデータを使い、修理工場と組むなど色々と考えられます。

そういう発想を生み、繋げることが、できる場として新価値創造展を使い、活用してもらえればいいのだと思います。

<連載第1回・完>

 

田中 芳夫(たなか・よしお)

東京理科大学大学院イノベーション研究科教授
青山学院大学大学院ビジネス法務客員教授
(独)産業技術総合研究所参与

1973年東京理科大学工学部電気工学科卒業。同年、住友重機械工業(株)に入社し、Online system設計などのシステム開発に従事。1980年に日本IBMの研究開発製造部門に入社。世界向けの製品・サービス・ソフトウエアの開発、マネージメント、および 副社長補佐。1998年にIBM Corporation R&D Aisi Pacific Technical Operation担当。2001年、研究開発部門 企画・事業開発担当理事。2005年、マイクロソフトCTO就任。2007年、(独)産業技術総合研究所参与、青山学院大学大学院ビジネス法務客員教授。 2009年、東京理科大学大学院教授。 現在、国際大学GLOCOM 上席客員研究員、日本工学アカデミー会員。

◇主な著書 
『MOT歴史の検証 (共著)』(丸善) 2008

田中 芳夫(2017)/ 「モノづくりではなくIT活用でエコシステムを創る」、
『日経ビジネス ONLINE 』、2017年1月5日
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/interview/15/274502/122600019/

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