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紙パウダーと合成樹脂、オンリーワンの混錬技術でうまれた新素材。プラスチックの使用量だけでなく、温室効果ガスの排出量も削減株式会社環境経営総合研究所

2018.12.27

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左:MAPKAの原料となる30ミクロン紙パウダー
右:MAPKAのペレット(粒状のもの)。紙パウダーと合成樹脂の混成でつくられる

summary

  • 開発をあきらめないことでオンリーワンの技術を確立
  • 世の中の潮流を読み、事業の拡大を行う

使い捨てプラスチックによる海洋汚染が問題視され、欧州委員会では使い捨てプラスチック禁止法が可決されたのは記憶に新しい。「プラスチック使用量の削減」は今、人類が取り組まなければならない重要なテーマの1つだ。
1998年創業の株式会社環境経営総合研究所は、緩衝材、断熱材をはじめ、地球環境への負荷の少ない製品づくりが国内外から注目されている企業だ。独自の技術で制作した紙のパウダーを合成樹脂(プラスチック)と混合することで、大幅にプラスチックの使用量を減らすことのできる製品の開発に成功した。
プラスチックの使用量を低減させるだけでなく、温室効果ガスの排出量も削減できる成型材料で、食品容器、文房具、家電部品、生活用品などに使用されている。使い捨てプラスチックが問題視される今、製品開発のいきさつと今後のさらなる展開について株式会社環境経営総合研究所の松下社長に話を伺った。

新素材MAPKA(マプカ)の強みと特長

MAPKAは、主原料の紙パウダーに合成樹脂(ポリオレフィン系樹脂)を熱溶解させてペレットにしたもの。紙パウダーの原料は古紙で、51%が紙のため、素材表示上は紙製品としての扱いとなるそうだ。
主原料は紙であるにも関わらず、MAPKAは低収縮、高剛性、耐熱性にすぐれた特長をもつ。従来のプラスチック成形機による射出成形やシート成形が可能なため、導入後に新たな設備投資の必要もなく、まさにポストプラスチックになり得る新素材だ。
紙であるため、「燃えるごみ」「燃やすごみ」として廃棄が可能であり、焼却時にダイオキシンなどの有害ガスが発生せず、CO2排出量も汎用プラスチック(ポリプロピレン)と比べて約35%削減することが可能。しかも燃焼カロリーが汎用の合成樹脂に比べ低くなることから燃焼炉をいためにくいという。
温暖化の防止や資源の有効活用といった面から、企業からの引き合いも多く、MAPKAを使った新しい製品の開発企画が次々と進められている。

想定外の事態からオンリーワンの製品ができるまで

現在、アメリカ、韓国などにも工場を持ち順調に売り上げを伸ばし続ける同社だが、製品が出来るまでは困難の連続だったと松下社長は語る。
損害保険会社勤務を経て、コンサルタントとして独立した松下社長は、豆腐製造時の廃棄物「おから」とプラスチックで混合材の開発に取り組む企業に出資し、応援していた。ところが、その経営者が行方をくらまし、会社は経営危機に陥ってしまう。「関係者に迷惑をかけられない」と考えた松下社長が事業を引き継いだ。しかし、「おから」は使いものにならず、その後、コーヒー滓、紅茶の搾り滓、お茶ガラなど、あらゆる素材で試すこと1年。すべてダメだったという。

そんなとき、知り合いの産廃業者の方から「これはどうか」と製本工場から廃棄された紙屑を提案され、試してみたところ新しい扉が開いた。
もちろん、当初は少量の試作品レベルだった。試した紙屑は製本の際に出る断裁の紙片で、綿状だった。ほぐさないと機械がつまるし、量産できるほどプラスチックとうまく混ざらない。そこで、紙を細かい粉にすることを思いつく。しかし、「紙片を粉にする機械」は、当時、日本中を探し回っても見つけることができなかった。「それなら、粉にする機械を自社でつくるしかない!」と決意し、試行錯誤を重ね、ついに、石臼をヒントに機械の開発にたどりついた。こうして、25~50ミクロンというサイズの紙パウダーにすることに成功した。
この紙パウダー生成の特許技術が、平成29年度文部科学大臣賞化学技術賞を得る。

世の中の流れが追い風になり大きく展開

紙パウダーとプラスチックを混ぜて緩衝材にする発泡体の製造に取り組みはじめた頃、ヨーロッパで発泡スチロールの梱包材が使用禁止という事態が起こる。輸出に発泡スチロールの緩衝材を使用していた企業は代替品探しに迫られることになった。その流れを受け、国内のある自動車部品会社から、同社に緩衝材の問い合わせが入った。その後、間もなくフランチャイズの工場ができ、他の自動車関連会社との取引が始まることで、現在の事業成長へとつながったという。

この紙パウダーと合成樹脂の緩衝材を、さらに進化させ、プラスチックのようにさまざまな形がつくれる代替品もできないかとさらなる研究の上に開発されたのが「MAPKA」だ。
緩衝材のように発泡させればうまく製品になるものと違い、成型材にするには比重の異なる紙パウダーと合成樹脂を均一に混ぜる必要があった。紙パウダーの比重は合成樹脂の9分の1。普通に混ぜたのでは浮いてしまう。これを均一に分散して混合させるのも同社オンリーワンの技術だ。さらに、緩衝材とは異なり、「MAPKA」はペレット化したことで、さまざまな形状に成型することができるようになった。

「MAPKA」を使用した食品容器

また、同社ではMAPKAに先んじて開発した、紙パウダーとでんぷんを混ぜたペレットを使った断熱材「earth republic(アース リパブリック)」も製品化している。この断熱材は接着剤も発泡剤も使っていないため人体に影響を与える化学物質は含まれない。安全な建材としてハウスメーカーに使われ、現在、断熱材としてシェアを伸ばしている。

断熱材「earth republic」を使用した保冷箱

メイドインジャパン企業として貢献と発展を目指す

同社は世界的な評価を受ける3つの独自技術を有している。
1.紙の乾式連続パウダー化技術
2.紙パウダーと合成樹脂の均一混成技術
3.紙パウダー・澱粉・合成樹脂の水蒸気発泡技術

また、国内では中小企業新技術・新製品大賞(りそな中小企業振興財団)、東京都ベンチャー技術大賞/優秀賞(東京都産業労働局)、ものづくり日本大賞/優秀賞(経済産業省)を始め、GPEC 国際プラスチック環境会議/環境管理賞などを受賞している。

そんな同社の将来目標は「メイドインジャパンの企業としてアメリカで上場をすること」と、「生分解樹脂(微生物などによって分解され自然界で悪影響を与えない低分子化合物に分解されるプラスチック)を使ったMAPKAを量産すること」と松下社長は語る。
MAPKAの生分解性を実現させるため、原料の合成樹脂を生分解性の樹脂に変更しようと考えているが、日本では生分解樹脂の量産体制が無い。現在、アメリカでは1ドル程度で購入できる生分解樹脂も、日本では約4倍の価格だ。良い製品でもコストが高いと市場に普及しない。アメリカの拠点で生産すれば、コストにおける課題も解決可能と考えている。
また、生分解性の向上という課題については、紙パウダーを混ぜることでより早く分解されることも試験でわかったという。今後の環境問題に貢献できると意欲的だ。

環境負荷低減を意識したオンリーワン商品の開発や受賞を機に、事業を順調に軌道に乗せてきた松下社長。新製品の開発だけでなく、これまでのビジネススキルを活かして、今後はベンチャー企業などに向け、環境経営を主軸としたコンサルタント事業などにも力を入れていきたいとのことだ。

取材日:2018年11月15日


株式会社環境経営総合研究所

当社は、独自の技術で制作した紙のパウダーを合成樹脂(プラスチック)と混合することで、大幅にプラスチックの使用量を減らした紙パウダー入り成形材料の製造・販売を行っています。緩衝材、断熱材をはじめ、地球環境への負荷の少ない製品を国内だけでなく海外にも拠点をつくり供給しています。

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