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今、デジタルトランスフォーメーション(DX)に、中小企業が取り組むべき理由青山幹雄(南山大学 理工学部 ソフトウェア工学科 教授/経済産業省「デジタルトランスフォーメーションに向けた研究会」座長)

<連載第1回>(全4回)

2020.02.20

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近年、「デジタルトランスフォーメーション(以下、DX)」という言葉を耳にする機会が増えてきました。しかし、その意味を正しく理解している人はまだ多くないのではないでしょうか。産業界に“破壊的変革”をもたらすというDXは、中小企業の未来にも大きく関わってきます。そこでDXの意義や、低予算から始められるDXへの取り組み方、中小企業がDXを成功させるポイントなどについて、政府の「デジタルトランスフォーメーションに向けた研究会」で座長を務める南山大学理工学部教授の青山幹雄氏にお話を伺い、4回の連載記事として紹介していきます。


経済産業省も産業界にDXを求める

デジタル化が急速に進むなか、産業界には「新しいデジタル技術を活用し、戦略的に新たな付加価値を生みだしていくこと(デジタルトランスフォーメーション)」が求められている——。経済産業省は「デジタルトランスフォーメーションに向けた研究会」の設置に関するリリースの中でそう伝えています。

DXが注目を集めるようになった一つのきっかけは、2018年9月、同研究会が「DXレポート~ITシステム『2025年の崖』の克服とDXの本格的な展開~」を発表したことでした。

「このレポートによって、基幹システムの老朽化やそれに伴うセキュリティリスクの上昇など、日本企業のIT活用に関わるさまざまな課題と対策が指摘されました。また業界によっては、データを活用しきれない企業が競争から取り残されていく状況が実際に生まれつつある。そこで日本の産業界でも、ようやく危機感が高まったというのが今の状態です」

DXは何を実現するのか

「DXと言われても、今までのIT活用と違いがよく分からない」と感じる方も少なくないでしょう。

「従来型のIT活用で多かったのは、『過去のデータを使って、今の仕事を効率化する』という使い方です。しかし、大量のデータをAIなどで分析すれば、『これから起こること』も分かるようになる。この“未来予測”はDXの重要な要素といえます」

その分かりやすい具体例が、ものづくり企業における機器の故障予測。IoTを駆使して工場にある機器のデータを収集し、AI分析にかけることにより、非常に軽微な異変から機器の故障を事前に察知するという、これまでごくわずかな目利き職人以外には難しかったことが可能になります。また小売店や飲食店では、過去の販売実績に気象や人流のデータを掛け合わせた、より正確で細やかな需要予測も行われています。

「もう一つ、技術を活用して『新たなサービスや付加価値を生みだす』というのもDXの重要な要素です。例えばスマートフォンなどを通じて企業が顧客と直接つながることで、消費者をより深く理解できるようになります。そのデータを生かすことで、よりよい商品・サービスや新たな事業モデルを生み出すことができるわけです」

DXの本質は“事業変革”

こうしたDXの本質を、経営者はどう理解すべきなのでしょうか。

「日本ではDXというと“新しいデジタル技術の活用”という技術面に目が行きがちです。しかし、DXの本質は“事業を変革すること”。IoT、AI、クラウドなどを活用しながら『課題を発見し、事業のあり方を変え、企業の価値を高める』ことが中心で、データや技術を事業にどう活かすかが問われることになるでしょう」

“ヒト”“モノ”“カネ”に続き、これからは“データ”が第4の経営資源になる──という言葉もあるとおり、今後は人材活用や資産管理と並び、「データを上手に活かして、会社の利益につなげる」ことが経営の条件になってくるわけです。

「ものづくりで成功してきた企業が多い日本では、こうしたデータの重要性はあまり理解されていません。しかし、DXは“破壊的変革”と言われるような、100年に1度レベルの大変革をもたらします。しかもIT技術は、ものづくりの変化とは比較にならないほど早く進化する。まずはその認識を持つことが大切と言えるでしょう」


連載「事業目標と「三つのポイント」を踏まえたDXで、中小企業もさらなる飛躍を」

第一回 今、デジタルトランスフォーメーション(DX)に、中小企業が取り組むべき理由
第二回 デジタルトランスフォーメーション(DX)を成し遂げるか否かで企業の未来は変わる
第三回 自前IoT化の成功事例に学ぶ、中小企業のDXの進め方
第四回 事業目標と「三つのポイント」を踏まえたDXで、中小企業もさらなる飛躍を


青山幹雄(あおやま・みきお)
南山大学理工学部 ソフトウェア工学科 教授/経済産業省「デジタルトランスフォーメーションに向けた研究会」座長

1980年、岡山大学大学院工学研究科修士課程修了、富士通株式会社入社。分散処理通信ソフトウェアシステムの開発などに従事。86年から2年間の米国イリノイ大学客員研究員を経て、95年より新潟工科大学情報電子工学科教授、2001年より南山大学数理情報学部情報通信学科教授を歴任。博士(工学)。05年よりDXの研究も開始し、09年より現職。18年、経済産業省「デジタルトランスフォーメーションに向けた研究会」座長。

取材日:2019年12月25日

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