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デジタルトランスフォーメーション(DX)を成し遂げるか否かで企業の未来は変わる青山幹雄(南山大学 理工学部 ソフトウェア工学科 教授/経済産業省「デジタルトランスフォーメーションに向けた研究会」座長)

<連載第2回>(全4回)

2020.02.25

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成長する中小企業は、デジタルトランスフォーメーション(以下、DX)を活用して、どのような成果を挙げているのでしょうか。また、DXへの取り組みが遅れた企業には、どのような危機が待ち受けているのでしょうか。政府の「デジタルトランスフォーメーションに向けた研究会」の座長を務める南山大学理工学部教授の青山幹雄氏に伺いました。


DXは新ビジネスの創出と生産性向上の双方に有効

「DXには、『今持っている会社の資産を効率的に使って生産性を上げる』ことと、『より付加価値の高い製品・サービスなどを開発して新たな利益を生み出す』ことの両方に効果がある。この両面でDXを実現できるかが、企業の成長力を左右する大きな鍵になります」

このように力を込める青山氏は、DXを活用した新事業モデル創出の好例として、自動車配車サービスのUber(ウーバー)を挙げました。

「同社はスマートフォンのアプリで利用者と車両をつなぎ、タクシーが走っていないエリアでも移動手段の手配、精算、到着時刻の予測まで行えるようにして利用者と運転手双方の利便性を向上させました。配車をタクシーに限っている日本でも、タクシー側は稼働率の向上、利用者側は待ち時間の削減など多くのメリットが生まれています」

中小企業も販売力の強化や生産効率化が可能

DXは販売の面においても、中小企業の可能性を大きく拡げてくれます。青山氏が指摘したのは、中国系B to Bオンライン・マーケットのアリババの『独身の日』セールで莫大な売上を記録した社員約20人の「成和インターナショナル株式会社」の例です。

「これは報道で知った例ですが、ヒアルロン酸の製造・販売などを手がける同社は、2018年に1日で約1億円の販売実績を挙げたということでした。今年は現地インフルエンサーなどを活用しさらなる売上増を見込んでいるそうです。これまで人的要因で海外展開を諦めてきた中小企業も、ITプラットフォームを有効に活用すれば展開が可能になる。国内市場の縮小も見込まれるなか、こうした道ができたことは大きな意味があると思います」

製造の分野に目を向けても、職人技のデジタル化と24時間365日の無人工場稼働を可能にした京都の金属加工メーカー「HILLTOP株式会社」など、DXの先駆けともいえる先行事例が多数存在します。その一例として青山氏が挙げた愛知県の自動車部品メーカー「旭鉄工株式会社」に関しては次回の連載で詳しく説明します。

DXに取り組まない企業を襲う多くの問題

一方、DXへの取り組みが遅れた企業はどうなるでしょうか。「デジタルトランスフォーメーションに向けた研究会」が発表したレポートでは、基幹システムの老朽化・複雑化による維持管理費の高騰、セキュリティリスクの高まり、競争力の低下といった問題を挙げ、これらの課題を解決できなかった場合の経済損失は、2025年以降年間12兆円に上ると指摘されています。

「日本では多くの企業でシステムが事業部門ごとに構築され、全社横断的なデータ活用が難しくなっています。また、過剰なカスタマイズでシステムが複雑化している例も多い。大企業の基幹システムの老朽化も進み、2025年時点で運用21年を超えるものが6割以上に達する見込みです。古く複雑なシステムの維持管理費が高騰して、IT予算の9割超を占め、新規投資も難しい状況になりかねません」

本来ITと事業は一体であり、事業内容の変革に合わせてITシステムをカスタマイズしていく必要があります。

「ところが日本では、ITが事業の足を引っ張るケースが多い。IT部門とデータの重要性に気づくことも経営の根幹として捉える必要があります」

2019年末、Windows7.0のサポート終了で対応に追われた企業の多さを考えれば、この問題は決して大企業だけのものとは言えないでしょう。では、中小企業はDXをどのように進めていくべきでしょうか。続く第3回の記事では、先に名前の出た旭鉄工株式会社の例などから、そのヒントを紹介していきます。


連載「事業目標と「三つのポイント」を踏まえたDXで、中小企業もさらなる飛躍を」

第一回 今、デジタルトランスフォーメーション(DX)に、中小企業が取り組むべき理由
第二回 デジタルトランスフォーメーション(DX)を成し遂げるか否かで企業の未来は変わる
第三回 自前IoT化の成功事例に学ぶ、中小企業のDXの進め方
第四回 事業目標と「三つのポイント」を踏まえたDXで、中小企業もさらなる飛躍を


青山幹雄(あおやま・みきお)
南山大学理工学部 ソフトウェア工学科 教授/経済産業省「デジタルトランスフォーメーションに向けた研究会」座長

1980年、岡山大学大学院工学研究科修士課程修了、富士通株式会社入社。分散処理通信ソフトウェアシステムの開発などに従事。86年から2年間の米国イリノイ大学客員研究員を経て、95年より新潟工科大学情報電子工学科教授、2001年より南山大学数理情報学部情報通信学科教授を歴任。博士(工学)。05年よりDXの研究も開始し、09年より現職。18年、経済産業省「デジタルトランスフォーメーションに向けた研究会」座長。

取材日:2019年12月25日

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