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SDGsを羅針盤・共通言語として、理想の新価値創造を加藤三郎(NPO法人環境文明21 顧問 / 環境文明研究所 所長)

<連載第4回>(全4回)

2019.09.12

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本連載もこの第4回が最終回です。そこで今回は、中小企業がSDGsに取り組む意義を総括。また「環境」と「文明」のかかわりの探究者である加藤氏が考える「新価値」をふまえ、企業活動のヒントなどについても語っていただきました。


◆SDGsとは?

SDGs(Sustainable Development Goals / 持続可能な開発目標)は、2015年9月に国連総会で採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」のなかに記載されている、2016年から2030年までの国際目標。持続可能な人類社会を実現するため、「貧困」「飢餓」「気候変動」「エネルギー」「教育」など17分野の目標=「ゴール」と、分野ごとにさらに詳細な目標を定めた総計169のターゲットから構成されている。2001年に策定されたミレニアム開発目標(MDGs)の後継として、150を超える加盟国首脳の参加のもとで採択された。2017年7月の国連総会では、各ターゲットの進捗を測定するため232の指標も採択された。

SDGsが掲げる持続可能な人類社会を実現するための17分野の目標

自社にできることを主体的に考える

経営リスクを回避し、さらに今後のビジネスを考える上で、企業にとっても欠かせない指針となったSDGs。グローバル化がさらに進み、国内市場が縮小しつづける現在、広い視野を持ち、事業をより大きなスケールで展開していく上でも、SDGsの活用は非常に有効です。

「日本のものづくりはとかくガラパゴス化しがちで、大手メーカーでもまずは国内市場へ目を向ける傾向があります。まして中小のメーカーとなると、取引先や親会社を通じて自社製品が海外へ出ていく例は多くても、直接取引は国内企業というのが大半ではないでしょうか。この点、SDGsとなるとドメスティックでは済みません。実際に対応を進める上では、国連や世界の動きに敏感にならざるを得なくなります。つまり、世界のニーズを知ることにもなる。そこにより広い市場を獲得するきっかけが生まれるわけです」

これまでの記事でも触れたとおり、サプライヤーである中小企業が取引先などからSDGsへの対応を求められるケースは増えています。しかし「“取引先から言われたから”という姿勢ではもったいない」と加藤氏は力を込めます。

「先ほど述べたように、SDGsへの対応は、今ある取引先の意向に従うのではなく、自らの意思で市場を拡大する力にもなります。それは、自社の持続可能性、つまりサステナビリティを高めることにもつながる。SDGsの採択を、中小企業にとっての夜明けととらえ、自社として何ができるかを主体的に考える機会にすべきでしょう」

サステナビリティを真に追求する連携を

製品・サービスに他にない付加価値をつけることができれば、企業の競争力は大きく高まります。分野を異にする企業同士が結びつくことによって、新たな価値が生み出されることは少なくないでしょう。こうした企業連携について、加藤氏はどう考えているのでしょうか。

「独自の強みを持つ企業が連携すれば、その成果は大きいでしょう。ただ、これまで企業間の連携というものは、収益や効率性を主な目的にしていたと思いますが、SDGsに絡めた連携では、SDGsが生まれた経緯に立ち返り、17のゴールに照らしながら『企業とはいったい何のために存在するのか』ということを改めて考えてみてほしいと思います」

いまや、「サステナビリティの共通言語」と言われるようになったSDGs。それが企業同士の腹に落ち、社会と地球のサステナビリティを真に追求する連携が実現すれば、社会にとっても当該企業にとっても、新たな価値と素晴らしい成果を生み出し得ると言えます。

加藤氏は、環境庁(現・環境省)地球環境部の初代部長として、また環境文明研究所所長や認定NPO法人の顧問として、半世紀以上にわたって環境問題に取り組んできました。そのなかで「地球環境問題は、大量生産、大量消費、大量廃棄で象徴される“20世紀型文明”と、地球環境の“有限性との衝突”だ」ということを実感し、主張し続けてきたといいます。

「かつて英国の経済学者であるE・F・シューマッハーは、『技術は、大きさ・早さ・力を自ら制御する原理を認めない』と書きました。最近の身近な例は、スマートフォン。画像や動画などにかかわる技術がどんどん進み、それらのデータを処理するサーバー群だけでも、莫大なエネルギーを消費しているのです」

SDGsを新価値創造の羅針盤に

地球環境問題と向き合う上では、「大量生産、大量消費、大量廃棄」の土台となっている「価値観」の見直しも重要です。新たな価値を生み出すだけでなく、根本的に「何に価値を見出すか」という視点も、持続可能な社会の実現には欠かせないわけです。

「私自身は、かねて『足るを知る』という価値観も提唱してきました。『もったいない』『モノの豊かさより心の豊かさ』『自然との一体感』『和を貴ぶ』といった日本の伝統社会の知恵も、国内外で見直されています。こうした考え方も頭に入れ、最先端技術を追求するだけでなく、古くて新しい価値を見出すことによるサステナビリティの実現にも期待しています」

実際にSDGsを事業に取り入れる場合の手法としては、まず自社の望ましい未来像を描き、そこから逆算して、今やるべきことを考えるといった方法が推奨されています。そうして事業を見直してみることが、自社の強みや潜在能力の再発見、理想的な新価値の発見につながるかもしれません。

最後に読者へのメッセージを求めると、加藤氏はこのように締めくくりました。

「国内市場が縮小傾向にあることを踏まえ、多くの中小企業は今後のビジネス展開について模索しているところだと思います。SDGsは、あらゆる企業にとっての羅針盤であり、連携のための共通言語になり得る。これを上手に活用して、未来につながる新価値を創造し、社会と自社の持続可能性を高めてほしいと願っています」

取材日:2019年6月25日

<第4回記事>

 

連載「SDGsを羅針盤・共通言語として、理想の新価値創造を」

第一回 SDGsは中小企業にとっての重要な経営指針になる
第二回 SDGsのなかに多様なビジネスチャンスが潜む
第三回 SDGsへの取り組みで売上増や経営力強化も実現
第四回 SDGsを羅針盤・共通言語として、理想の新価値創造を


加藤三郎(かとう・さぶろう)

1939年生まれ。66年、東京大学工学系大学院修士課程を修了し、厚生省(現・厚生労働省)入省。71年に環境庁に出向し、90年に環境庁地球環境部初代部長に就任。地球温暖化防止行動計画の策定、環境基本法の作成、「地球サミット」の準備などに携わる。93年に退官し「環境文明研究所」を設立して所長となり、「21世紀の環境と文明を考える会」(現・NPO法人環境文明21)の代表理事にも就任。現在、毎日新聞「日韓国際環境省」審査委員、プレジデント社「環境フォト・コンテスト」審査委員長、日刊工業産業研究所「グリーンフォーラム21」学会委員なども務める。

<主な著書・共著>
『環境の思想 「足るを知る」生き方のススメ』(プレジデント社 / 共著)2010年刊
『環境の世紀 政財界リーダー22人が語る』(毎日新聞社)2001年刊
『「循環社会」創造の条件』(日刊工業新聞社)1998年刊など多数

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