BreakThrough 企業インタビュー

これからを見据えて。医療業界への参入と「セルロースナノファイバー」の開発に挑戦日進工業株式会社

2018.12.27

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カラーバリエーションが豊富なオール樹脂(プラスチック)製の鉗子。医療用に製作されたが、使用用途は自由だ

summary

  • 高齢化社会への貢献や福祉社会の促進の想いから医療機器の製作に参入
  • オール樹脂(プラスチック)の鉗子開発により、医療現場の環境向上に貢献
  • 次世代の新素材である「セルロースナノファイバー」開発に挑戦

射出成形をベースに“従来通りを打破する”技術開発を信条とする、日進工業株式会社。射出成形に加えて金型設計・研究開発にも注力する企業として、様々な成形技術の開発と量産を行っている。その中でもとりわけ「環境配慮型医療器具の開発」と「セルロースナノファイバー添加材料の成形技術」は、既存成形技術の殻を破った同社独自の技術開発の賜物といえる。

現状を打破するために、医療機器の開発に参入

現在、自動車部品製造が同社の取引全体の約8割を占めており、このことに同社は危惧を抱いている。なぜなら自動車部品におけるプラスチック製品の生産は、日本から海外へシフトしており、このままでは国内で際限ない価格競争が起こり、会社が疲弊する恐れがあるからだ。

こうした状況を打破するために、同社が行った取り組みが「環境配慮型医療機器の開発」への参入。その一環として誕生したのが“オール樹脂(プラスチック)製の鉗子”だ。

もともと同社は、来るべき高齢化社会への貢献や福祉社会の促進という想いから、医療業界への参入を考えていた。しかし医療業界への伝手や知識がないため、なかなか実現化が難しい状況が続いていた。そうした中、2016年、医療機器を扱う商社からプラスチック製の鉗子の開発を依頼される機会に恵まれ、念願の医療器具づくりがはじまった。
同社はこの鉗子開発に約1年半の期間を要した。その期間、同社のある東京都大田区から助成金が提供されたこともあり、開発に十分専念することができた。

回収することで再生可能。オール樹脂(プラスチック)製の鉗子

同社がこの鉗子を開発するにあたり、最もこだわった点。それは金属部品を一切使用しないオール樹脂(プラスチック)製であることだ。そのためプラスチックとしてリサイクルする、あるいは安全な処分が可能になった。また形はステンレス製と同様にして、固いものから柔らかいものまで把持力を調整できるようにした。そしてステンレスよりも重量が軽いため、使いやすく、持ち運びの負担も大幅に軽減。さらに使用の際のノイズが減るため、医師や患者のストレスも少なくなるという。

同社代表取締役の竹元 盛也氏曰く、「免菌や感染予防という概念から医療機器はステンレスからプラスチックへの代替が進み、現在はディスポーザブルが主流になっている」という。
衛生面だけでなく、使用後に回収することで再びプラスチック製品として再生できる上、さらにプラスチックはステンレスよりも軽いため輸送燃料がかからず、環境面でも配慮されているともいえる。

プラスチックを使ったこのような製品開発に注力する中、同社の特筆すべき、もう一つの取り組みが「セルロースナノファイバー(以下CNF)添加材料の成形技術」だ。

新素材「CNF」の技術開発に挑戦

CNFは植物繊維をナノオーダーにまで細かく解きほぐした次世代の新素材として大きく注目されている。
同社はこうした新素材に対しても、開発を手掛けることで業界のイニシアチブを取っていきたいと考えていたが、そうした折、ぜひとも開発に協力してほしいという依頼が舞い込んできた。大手メーカーでも技術開発が難しいとされるCNFに関して、すぐれた開発力を備えた同社に白羽の刃が立ったようだ。
CNFは、軽量、高強度、高弾性、低熱膨張性、高比表面積などの優れた特長を有している。しかし親水性が高いため、工業材料など広い用途に使用する場合には最適化のため高い技術が要求される。

そうした大手メーカーでも難易度が高い問題を同社は独自の技術で解決していった。CNFを添加したプラスチック材料を用い鉗子のサンプルの製作まで漕ぎ着け、現在、展示会で紹介するまでの技術成果を上げている。同社は基幹製品である自動車部品はもちろん、航空関係や住宅建材にもCNFの使用用途が広げられるよう、技術開発をさらに推し進めている。

プラスチックは大切な資源

射出成形がメインの同社にとって、プラスチックは決して欠かすことができない素材だ。
同社専務取締役の竹元 茂氏はこう続ける。
「現在、海洋におけるマイクロプラスチックが問題になっています。しかしそれは『不法投棄によるもの』です。ですからプラスチックをもっと再生できるように。有効な資源として大切に使用されていけばと考えています」

軽くて汎用性のあるプラスチックが大切な資源として活用され、医療や福祉の現場でもっともっと浸透していくこと。それが同社にとっての願いだ。
そして、活躍の場が広がるプラスチックを、CNFといった自然由来の原料から生成できれば、環境の保全や天然資源の節約の面でひとかたならぬ貢献となる。
「小さくても一流である」ことをモットーにした同社の、さらなる可能性に期待したい。

東京大田区、目蒲線武蔵新田駅から徒歩3分の同社。回りには中小企業の工場が点在している活気のあるエリアだ

取材日:2018年12月11日

企業情報

日進工業株式会社

「従来どおりの打破」を経営方針/品質方針として掲げる日進工業は、既存成形技術の殻を破った技術開発をして参りました。高強度樹脂の量産化をも可能とする「配向制御技術」(特許)、「塗装レス メタリック樹脂成形技術」、「超厚肉成形技術」「環境配慮型医療器具の開発」といった目に見える形で実現されています。

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