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日本企業の社会課題解決型ビジネスに、SDGsへの取り組みのヒントを見る平本督太郎(金沢工業大学 情報フロンティア学部 経営情報学科 准教授/金沢工業大学 地方創生研究所 SDGs推進センター長)

<連載第3回>(全4回)

2020.02.06

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社会課題解決型ビジネスで成功した日本の企業は、どのような形で取り組みを進めているのでしょうか。連載第3回では、専門家である平本督太郎氏にそうした成功事例を踏まえ、日本の中小企業が社会課題解決型ビジネスと関わる上でのあるべき形について語っていただきました。


◆SDGsとは?
SDGs(Sustainable Development Goals/持続可能な開発目標)は、2015年9月に国連総会で採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」のなかに記載されている、2016年から2030年までの国際目標。持続可能な世界を実現するため、「貧困」「飢餓」「気候変動」「エネルギー」「教育」など17分野の目標=「ゴール」と、17の各分野での詳細な目標を定めた169のターゲットから構成されており、2001年に策定されたミレニアム開発目標(MDGs)の後継として、150を超える加盟国首脳の参加のもとで採択された。2017年7月の国連総会では、各ターゲットの進捗を測定するため232の指標も採択された。

SDGsの17の目標(国連広報センターウェブサイトより)

 

SDGsにおける中小企業の成功パターンとは?

「BoP(Base of the Pyramid)ビジネスとは、主に開発途上国の低所得層を対象とした事業を指します。また『Inclusive Business(=包括的なビジネス)』とも呼ばれていて、これは前回紹介した“誰一人、取り残さない”というSDGsのポイントにもつながります」

自身が長年、現場で携わってきたBoPビジネスについて、平本氏はこう説明します。近年では、このBoPビジネスも時代の変化を反映して、貧困解決だけでなく持続可能な開発へと視野が広がり、SDGsのさまざまなゴールに合致するようになってきました。

「今、まさに起きている問題を解決し、人の役に立てるようなプロジェクトには、多くの人が協力してくれるようになります。すると、企業は自分たちにしかできない付加価値の高い製品・サービスが提供でき、コスト競争を脱して利益が上がりやすい体質に変わっていける。もちろん、信頼性も上がるでしょう。さらにその事業を、国内外で広く展開していけるというのは前回お伝えしたとおりです」

瓦をリサイクルした舗装事業を全国に展開

日本国内でも、こうしたビジネスモデルが広がりつつあるといいます。その例として最初に挙げたのが、金沢工業大学と共同研究も行っている「株式会社エコシステム」です。産業廃棄物として排出される瓦を環境にやさしい舗装道路にリサイクルするという同社の取り組みは、大雨の際の都市型災害の防止や、ヒートアイランド効果の減少にも貢献。さらにこの取り組みを行う企業のネットワークも作り、そこにノウハウを提供しています。

「離れた地域に同様の課題が存在するといっても、中小企業が単独で全地域をカバーするのは難しい。そこで、各地の中小企業が有機的に繋がることで、大企業と同じような対応を実現していくわけです。これは日本の中小企業の良さを活かせる仕組みだと思いますね」

今のところ同社は国内での活動が中心ですが、調査の結果、南米でのニーズが大きいことも分かり、BoP層を包摂したネットワークづくりやさらなる調査の準備を進めています。

エコシステムのリサイクル瓦で舗装された道路の一例

 

横展開で他社と事業ノウハウの共有や教育も行う

もう一社、平本氏は「会宝産業株式会社」という自動車リサイクルの企業を例に挙げました。

「同社はかつて廃車の解体業を営んでいましたが、中古部品の品質表示規格を設け、それに基づいたオークションシステムを構築。国内の同業他社60社以上とアライアンスを組み全国に自動車リサイクルのネットワークをつくりながら、事業のノウハウも共有しています」

同社はインドで合弁会社を創設して事業を進めながら、ブラジルでは国立大学と連携してトレーニングセンターも設立。ケニアでも立ち上げ準備をしています。

「しかもこの会社は各地域で横展開をする際、製品を提供してマニュアル通りに進めろという方法でなく、現地の状況を理解し、自社のやり方を定着させる方法をとっている。こうして教育に力を入れていけるのも、日本企業ならではの強みだと思います」

地域で根付いてきた考え方を上手く製品に落とし込んで、世界に提供していくことができれば日本の中小企業は十分世界で戦える。平本氏はそう確信しているといいます。


連載「オープンイノベーションも生かして、SDGsを成長のきっかけに」

第一回 世界を導くSDGsは、自社を成長させる大きなチャンス
第二回 SDGsの「三つのキーワード」を踏まえ、自社の事業を広く展開
第三回 日本企業の社会課題解決型ビジネスに、SDGsへの取り組みのヒントを見る
第四回 オープンイノベーションも生かして、SDGsを成長のきっかけに


平本督太郎(ひらもと・とくたろう)
金沢工業大学 情報フロンティア学部 経営情報学科 准教授/金沢工業大学 地方創生研究所 SDGs推進センター長

慶応義塾大学大学院政策メディア研究科修士課程、メディアデザイン研究科博士課程修了後、野村総合研究所入社。同研究所の経営コンサルタントとして、貧困等のグローバルイシューを解決するBoPビジネスや、アフリカビジネス推進支援、経営改革支援などに2016年度末まで携わる。BoP Global Network日本代表、BoP Global Network Japan創設者兼代表。08年より宮城大学事業構想学部非常勤講師、12年より明治大学経営学部特別招聘教授を歴任し、16年に本学講師就任。2019年より現職。

◇主な編著書
・『アフリカ進出戦略ハンドブック』(東洋経済新報社/共著)2015年
・『BoPビジネス戦略』(東洋経済新報社/共著)2010年

取材日:2019年11月18日

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