BreakThrough 企業インタビュー

製造業向けにモノづくりの工程やデザインレビューを変えるVRシステム「pronoDR(プロノディーアール)」。CAD空間で実際のサイズ感、操作性の確認を可能にした株式会社プロノハーツ

2019.03.12

SHARE
  • facebook
  • twitter

ヘッドマウントディスプレイを装着することでリアルに体験できる

summary

  • 製造業の現場に特化したVRツールを自社開発
  • 中小企業向けにコストダウンを図る

VR(バーチャルリアリティ)はVirtual Realityの略で、「事実上の、実質的な現実感」という意味です。単なる虚構ではなく、「ある程度現実と同等の効果を有する」ことを指して用いられる。ヘッドマウントディスプレイというゴーグルを装着している姿は、ゲームの世界をイメージする人も多いのではないだろうか。株式会社プロノハーツは、ゲームの世界をものづくりの場に活かすツールを作成した。ゲームに使われているハードを使い、3DCADで設計したものをVRで体験できる「pronoDR(プロノディーアール)」がそれだ。安価な価格で中小企業も導入しやすい。DRというのはデザインレビューを指し、製作会議のことだ。VRで体験できる位置やサイズ感等が製造業のデザインレビューを変える。

3DCADデータを活かす

株式会社プロノハーツは、2007年、「プロフェッショナルな心と志」をモットーに藤森社長が創業。製造業を対象に3D=3次元のデータを有効活用、会社の財産にしていくことをコンサルティング、サポートする会社として設立した。当初は藤森氏が1人で取り組んでいたが、徐々にメンバーが増え業務内容も広がっている。現在は3DCAD活用のコンサルティングに加え、商品企画開発、製造業向けVR/MR(Mixed Realityミックスドリアリティー、複合現実)システムの開発販売を行う。
3DCADデータを活用した商品企画開発では、地元企業とのコラボレーションで多種多様なものを手掛けている。製造業向けVRの例では、機械の配置シミュレーションや装置の配置移動の経路の作成もある。これは、工場内部をスキャンし、新しい機械の導入がスペース的に可能かの確認やレイアウトの変更などに役立てたものだ。

日本初、中小企業向けVRができるまで

藤森社長がVRと出会ったのは2013年だったという。ゲーム用のヘッドマウントディスプレイ「oculus(オキュラス)」を体験し、世の中を変える技術であることを予感したという。以降、製造業への利用をイメージして、VRの研究開発に取り組むようになった。2014年にはフランスで行われたJapanEXPO2014においてXVI社と共同開発したドラえもんの「どこでもドアプロジェクト」を出品し好評を得た。これは、部屋に入る前に行きたい場所の名前を言い、ヘッドマウントディスプレイ「oculus」を装着すると部屋一面に行きたい場所の風景が現れ、現地を疑似体験できるというものだった。
しかし、2014年時点では製造業向けVRシステムは海外製でしかも高額だったため、中小企業が気軽に導入できるものではなかった。そこで同社は自社でコストを抑えた、製造業に特化した廉価なVRシステムの販売を目指し、開発を推進した。完成した「pronoDR」は、比較的安価なゲーム用のヘッドマウントディスプレイの「HTC Vive(エイチティーシーヴァイヴ)」や市販のゲームコントローラーなど低コストな仕組みを採用し、中小企業でも手が届く100万円台の価格を実現した。

製造業をサポートするVRシステム「pronoDR」の特長

「pronoDR」は、製造業向けの3次元デザインレビューアプリケーションだ。3次元CADで設計された3次元CADデータをコンバートし、VRヘッドマウントディスプレイでのレビューを実現する。
従来は、PCのディスプレーを通してCAD空間という“箱の中”にある3次元モデルを外から眺めるしかなかったが、「pronoDR」を使うことでCAD空間に自分自身が入り込んだようなデザインレビューが可能となる。まるでその場にいるような臨場感でレビューを行うことができ、精度向上が見込める。

「pronoDR」は3Dデータを自由に様々な角度から見たいとき、あるいはその中を動き回りたい時に適しているシステムで、大規模3Dデータ(部品数万点レベル)をVRで展開することができる。CAD上で設計したものを「pronoDR」を使い疑似体験することで、製品の大きさや内部の構造を直感的に把握でき、利用者目線でチェックできる。内部の造作の位置が利用者にとって使いやすいものなのか、大きさは適切かなど、実際に体験しないとわからない感覚的なものがはっきりわかる。今までは、つくらないとわからないこと、つくってからの直しが大変だったものが、「pronoDR」のおかげで事前にわかるようになったのだ。

「pronoDR」の特長的機能は6つある。
①ケーブル機能
これはVRで見ている空間に任意箇所をクリックすることでケーブルを作成し配線の設計に役立てられる。作成した配線は3DCADデータへフィードバックすることもできるため、VR空間での配管や配線のケーブルリングが可能。
②マーキング機能
気になった点や要チェックの箇所に様々なアイコンをつけてマーキングすることができる。マーキングしたデータは3DCADデータにフィードバックすることもできるため、VRによる検図が可能。
③工具選択機能
VRコントローラーに表示される手のモデルに様々な工具を持たせることができる。この機能を使うことで工具を使ったときの距離測定や組み立て時に工具が回しやすいかなどの組み立てやすさの同時検証が可能。
④足跡表示機能
移動経路の表示が足跡として残すことができ、VRでは感じにくい地面との距離感がつかみやすくなる。
⑤位置保存機能
VR空間の任意の位置を簡単に保存でき、大規模なモデルのデザインレビューの位置移動の無駄を省く。
⑥ルームライト・ヘッドライトのON・OFF機能
ルームライトのON・OFFを切り替えることが可能。また、ルームライトがOFFの場合はヘッドライトが点灯する。夜間にヘッドライトを頼りに行う作業のデモンストレーションを行うこともでき、デザインレビューだけではなく、安全講習などにも活用が可能。

「pronoDR」を使用し、CAD空間の中でサイズ感を確認している様子

「pronoDR」が製造業におけるVRとして最もその効果を発揮するのは、設計データから数台、あるいは1台だけしか作らないような少量受注生産の装置や、予算的に難しい大型工作機械のケースだ。
3DCADを使用している設計者と現場で組み立てを行っている製作担当者、その先にいるクライアントなど、誰もが同じ認識・体験を共有した上で製作を進めることができる。機械や製品の周りや中を歩きまわって確認することも可能であり、現物製作前の改良や要望を聴き出すことのできる「pronoDR」はデザインレビューのコミュニケーションツールとしての効果も発揮する。

加速するVR・ARの世界

VRやARは製造業でマニュアルの代わりにも使われ始めている。ARはCGと現実を一体化できる。現実空間の視界に、文字や画像などの「現実空間を説明、補助する情報」を付加するもので、ポケモンGOが代表的なものだ。
ARを活用したマニュアルを使えば、新人教育の場で、モノを作る工程、方法をリアルに教えられる。マニュアルで読んで理解するよりも視覚的に操作を疑似体験できること、注意ポイントがCGでその場面やタイミングに応じて出てくるなど、体感的かつ的確に学べるところが好評だ。

同社では、VRに欠かすことができないヘッドマウントディスプレイについても積極的な取り組みを行っている。
2017年6月販売された「FOVE(フォーヴ)」は同社が設計に携わった日本製初のヘッドマウントディスプレイだ。アイトラッキングという、かけた人の視線の動きをキャッチしどこを見たのかがわかる機能がついている。物販店の棚割りや販促への活用に有効だ。
また、フランス製のVRシステム「improov3(インプルーヴスリー)」の輸入販売も行っている。これはネットミーティングを行う際にあたかも参加者全員がその場にいるように体感しながらの作業を可能にした。また、このソフトは仮想マネキンを動かし、危険個所の判定や操作の確認などに応用が利く。

藤森社長はVR・ARなどの利用範囲の広がりは製造業に大いに役立つと考え、さらなる開発にも意欲的だ。製造業においては、VR・ARを活用することで、試作品の必要がなく、製作時間が短縮できる点が、大きなメリットになるだろう。

■pronoDRの動画

取材日:2019年2月19日

企業情報

株式会社プロノハーツ

プロノハーツは、プロフェッショナルの心と志を持って、日本の製造業を応援するため立ち上がりました。〝3次元データの有効活用を中心に製造業へコンサルティングを実施し、幅広いネットワークのもと、製品の企画~設計~商品化のプロデュースにも力を入れています。最近では、製造業向けVR/MRシステムの開発販売に力を入れてます。

企業情報ページはこちら

SNSでシェアしよう

関連記事