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生体データを用いて疲労とストレスの両方が測定できる「疲労ストレス測定システム」株式会社疲労科学研究所

2019.04.11

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2016年に開発された「VM500」

学ぶべきポイント

  • 疲労とストレスによるパフォーマンス低下の防止に寄与
  • 大学、研究所、メーカーの英知を結集させて製品を開発

国公立の大学が独立行政法人となった2005年、大阪市立大学医学部に疲労クリニカルセンターが設立された。同センターは、疲労外来として慢性疲労の患者の診断・治療・評価を行うと共に、「疲労」をテーマに研究を開始した。
疲労は主として被験者・患者の主観的な訴えで診断がされていた。客観的な評価としては血液を採取し、その中の幾つかのホルモン物質(疲労マーカー)を取り出しての評価も行っていたが、疲労は厚生労働省が定める疾病に該当しないため、慢性疲労症候群以外はその治療や診断に対しての保険適用がない。そのために血液採取・分析・評価に高額な費用を要する。また時間もかかるため簡便に客観的な評価を行う仕組みが求められていた。

このような経緯を背景として同年、株式会社疲労科学研究所が同センターの医師約10名の出資により設立された。当初の主な業務は、医師の知的財産権に関する申請・管理・運営だったが、その後は「疲労への簡潔で客観的な評価を行う」ニーズに応えるべく動き出した。同社は大阪市立大学医学部疲労クリニカルセンターや理化学研究所と共同で自律神経測定による疲労の評価を行うシステムの開発を始めた。

疲労は脳機能の疲れによるパフォーマンスの低下と位置付けられている。そのために適宜休憩や休息をとること、十分な睡眠を取ることで、パフォーマンス低下が防げる。こうした生活習慣を見直すツールとして最適なのが、同社が開発した生体データを用いて疲労とストレスの両方が測定できる「疲労ストレス測定システム」だ。開発には会社を設立してから3年程を要したという。

このシステムは脈波と心電波を同時に測定し、その結果から心拍変動を解析して疲労・ストレスの評価基準である自律神経のバランスと自律神経機能年齢を数値化して表示するものだ。システムの開発にあたり、当初は脈波と心電波を検知する、脈波計と心電計をそれぞれ使用していた。しかしどちらも一長一短があり、簡単に精度の高い測定を行うことに難点があった。そんな中、2012年に大手の電子部品メーカーが脈波と心電波の両方を同時に測定できるセンサーを開発し、同社は共同で測定器の開発を行うことになった。

2012年、大手の電子部品メーカーとの共同開発で誕生した「VM302」
機器の上部に指を入れて測定する。最短90秒で測定可能

このセンサーを使い同時計測することで脈波計と心電計が持つ以下のような課題が解消された。
心電:筋電のノイズによる測定不良
脈波計:貧血症の方や外気温が低いため血行が悪い際に起こる測定不良
このため測定ミスが解消され精度の高い測定が可能になった。

また、測定結果を評価する解析プログラムについては、大阪市立大学医学部や横浜国立大学、理化学研究所の協力を得た。そして各世代の自律神経の活動量や交感神経・副交感神経のバランスから16マトリックスに分解した評価結果表にプロットし、その結果状況に応じたコメントが出されるようになったのだ。

疲労・ストレス測定(自律神経)結果

このように「疲労ストレス測定システム」の開発は、大学、研究所、メーカーの英知の結集といえる。

「疲労ストレス測定システム」の優位性をまとめると、下記のようになる。
〇小型・軽量・安価・簡便
〇測定精度の高さ
〇16マトリックスに結果がプロットされる評価内容の精度
〇簡便に利用が可能(VM500はスマホやタブレットを使ってサーバーで解析を行うために
Wi-F環境があれば、いつでも、どこでも測定可能)
〇サーバーで解析するために多くの測定結果(BIG DATA)の評価を簡単に行える
(年齢別・男女別・課別・部別・企業別・働き方別など)

職場での疲労の状態も確認でき、さらに調剤薬局やスポーツクラブでの健康支援活動など、広範囲における活用の可能性がある。使用例としては、神奈川県で推進されている「ME-BYO(未病)」プロジェクトで、2017年に県下企業の従業員や県民の健康状態の測定のためにVM-500が採用された。また現在、大手輸送会社のトラックドライバーの疲労度測定の実証試験を関東エリアでVM500を100台使用して実施中だという。今年度は対象地域を全国に広げて、ドライバーの健康に関する指標を作成する予定だ。

さらに2018年、前出の大手電子部品メーカーとの共同開発で非医療機器扱いとなる新たな「疲労・ストレス測定システム」を発売した。同社代表取締役の倉恒 邦比古氏いわく「現在は企業向けだが、低価格になれば大手量販店などで販売する可能性も大いにあり得る」とのこと。
「働き方改革」が叫ばれている現在、様々な分野の企業から同社の製品開発には期待が集まっている。そして一般消費者が、同社の製品を手にする日が来ることも近いかもしれない。

取材日:2019年3月26日

 

企業情報

株式会社疲労科学研究所

当社は15年前より大阪市立大学医学部疲労クリニカルセンターの先生方のご支援を受けて心拍変動より自律神経の詳細を評価し疲労・ストレスの定量化・数値化を行い、多くの特許、知的財産権を取得しました。また、日本を代表するセンシングメーカーと共同で精度の高いシステムを構築しました。

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