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ボタン一つでドアが開く!車椅子用玄関ドア自動化システムエバグリーンシステムズ株式会社

2018.12.11

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車椅子のパイプに直接取り付ける「リモートキー」。一人ひとりの状態に合わせて、足や腕などでの操作ができるような、カスタマイズもしている

学ぶべきポイント

  • 既存の事業で培った技術を活かし、障害者の生活環境向上という新たな目標に挑む
  • 自治体の障害者向け住宅改修助成金制度の活用、住宅リフォームメーカーとのパートナーシップなどによる更なる拡販を目指す

平成30年版の障害者白書(内閣府)によると、日本の在宅の身体障害者数は、約428万7千人。体の運動機能に障害(肢体不自由)があり、車椅子を利用している人も少なくはない。中には、事故などによって、後天的に障害を負った人もおり、こうした人たちが意欲的な社会参加をしていくためには、ユニバーサルデザインの考え方を踏まえたバリアフリーの推進が必須となる。

「自由に、自立した生活が送りたい」。そんな肢体不自由者の声を受けて、エバグリーンシステムズ株式会社が開発したのが、車椅子用玄関ドア自動化システム「イージードアシステム」だ。健常者にとっては何でもない、カギを開けるという動作も、車椅子の利用者にとっては困難なことがある。障害の程度や症状にもよるが、車椅子に座った状態でカギをカギ穴に差し込むこと、開き戸をつかんで後ろに下がる操作をすること、カギをポケットから出すことにも苦労する人がいる。「イージードアシステム」は、どんな人にとっても、簡単に、そして安全に使用するための工夫が随所に施されている。

もともと、同社は、独自開発の非接触ICカードと同システムを製造販売するセキュリティシステムの専門メーカーとして、事業を拡大してきた。非接触ICカードシステムというと、一般的には、「SuiCa(JR東日本)」などの交通用電子マネーに使用されている無線通信技術「FeliCa」が知られている。同社のシステムでは、「FeliCa」より低い周波数の電波を使用することで、より長い通信距離を実現している。雨風などの環境の影響を受けにくく、屋外での使用がしやすい点もメリットの一つだ。これまでは、企業のオフィス、工場、研究所などの高いセキュリティ確保が求められる分野への納入で実績を重ねてきたが、その技術を活かして、中小企業庁による「ものづくり補助金」の採択を得て、新規事業として、開発を始めたのが「イージードアシステム」だ。

   電子錠をドアの内側に取り付ける。既存のカギも使用できる

それまでにも、玄関ドアの自動化システムは存在したが、車に搭載されているリモートキーのような形状のものが多く、肢体不自由者にとっては、必ずしも使いやすいものではなかった。
また、車椅子の利用者は、腕力では犯罪者にかなわないことが多く、カギを奪われるようなことがあっても、取り返すことは困難であり、安全性(防犯)の面でも課題があった。

このように障害者目線での、使いやすさと安心・安全を検討した結果、行きついたのが、3メートル程度離れた場所でも操作が可能なリモートキーを、車椅子本体に取り付けるアイデアだ。操作はボタンで行うか、障害の程度や症状によって、腕や足などでも操作ができるカスタマイズにも応じている。リモートキーを車椅子から外すと、一切の機能を停止して再起動することはないため、万が一強奪されることがあっても、使用される心配はない。健常者の家族用として、ポケットに入るサイズのリモートキーも用意している。

リモートキー連動して稼働するのが、既存の開き戸に設置することのできる「ドア駆動装置」だ。リモートキーから発信された電波をセンターが感知すると、自動でドアの開け閉めをする。動力はモーターだが、モーターとドアの間にバネを挟む特種構造によって、開閉操作時に手などを挟まれた場合の安全性にも配慮した。この構造により、停電時にも手でドアを押し開けることが可能だ。

モーターでバネを圧縮して、そのバネが伸びる力でドアを開閉するドア駆動装置(特許:開き戸駆動装置)。リモートキーの電波を受信しドアを動かす(特許:自動ドア装置用送信機)

ドア駆動装置等を設置するのは、ドアの内側なので、外観からはシステムを導入していることはわからない。また、万が一、リモートをなくしたりした場合などを想定し、家庭内でのボタン操作で、指定したカギのみの登録・抹消することができる方法も採用している(特許:出入管理システムの個人識別データ登録又は抹消装置)。

開発から、約5年。展示会などを通じて、地道に認知を広げてはいるが、普及においては課題もある。
その一つが、システムを自宅に取り付ける際に、地方自治体で受けられる助成金の有無だ。これまでの設置例では、障害者向けの住宅改修の助成金を受けられたケースもあるが、自治体によって、扱いがまちまちとなっている。個人で自宅にシステムを導入する場合、助成金を受けられるかどうかは判断を左右する大きな材料となるため、一律に助成金を受けられるようにすることが非常に重要なポイントだ。
一方で、障害者向けの住宅リフォームを手掛けるリフォームメーカーや、福祉施設にシステムを納入する設備メーカーなど、システムの導入と普及を協働して進められる企業とのパートナーシップにも意欲的だ。今後は、オフィスや介護現場などでも、健常者と障害者がともに使用することのできるドア管理システムの開発なども視野に入れているとのことだ。

2020年には、東京オリンピックパラリンピック の開催が予定され、障害者と健常者が、同じ場所で、同じように社会生活を営む時代がやってくる。誰もが暮らしやすい社会の実現に、同社のシステムが大きく貢献していくに違いない。

取材日:2018年11月5日

 

企業情報

エバグリーンシステムズ株式会社

当社は独自開発の非接触ICカードと同システムを製造販売する開発型企業です。新規事業としてものづくり補助金の採択を得て肢体不自由者向け玄関ドア自動化システムの開発に取り組んでおり、2017年に新価値創造展に出展した際は、非接触ICカードと玄関ドア自動化システムの実機によるデモを行いました。

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