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手術トレーニング用に感触、質感がリアルな血管モデルや腎臓モデル「EXSURGエクサージ」を製品化。医師の技術向上に貢献する有限会社テクノ・キャスト

2019.04.04

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腎臓モデル「EXSURG.(エクサージ)」

学ぶべきポイント

  • 利用者の意見を反映させたものづくり
  • リアルな質感を追求
  • 症例に適応したモデル

手術を受ける患者にとって結果を委ねる医師の技術力は重要だ。若手医師の技術向上のための練習用には実際の人間に近い人工のモデルが使われる。有限会社テクノ・キャストはそういった生体模型を製造している企業だ。同社が製造している血管モデルと腎臓モデルは熟練の医師による官能試験を繰り返し、実際の人間に限りなく近い感触、質感を実現した。特に腎臓モデルは医師からの要望で腎臓自体の感触、質感だけでなく、病変である腫瘍の状態も再現できる。手術手技の技術向上に寄与するモデルだ。

有限会社テクノ・キャストが製造している血管、腎臓のモデルが、生体に近い感触を実現できている理由は、ポリビニールアルコール(以下PVA)を主原料とし他素材の配合にもこだわっていることだと同社取締役の柴田氏はいう。PVAは親水性に優れた素材で、「接着のり」や「冷却ジェルシート」等に使われている。
同社は歯科技工をメインにする会社だが、10数年前に歯科用インプラントが普及し始めた際に、歯肉や骨素材が生体に極めて近似した歯科インプラント練習モデルを製造した。その後歯肉に使われているPVA素材に目を留めた神戸大学形成外科の橋川先生から微細血管吻合練習用血管モデル(以下血管モデル)の製作依頼があり、製造を開始したという。

血管モデルは、従来シリコンを原料としてつくられることが多いが、電気を通さないことと、実際の血管とは質感が違い、吻合時の力加減などが臨床とは異なることが問題だった。
その点、官能試験を繰り返しPVAの分子の大きさや含有量を加減しリアリティを追求した同社の血管モデルは、弾性や摩擦性が生体の血管の質感に近く、極めて繊細な力加減を要する顕微鏡下で行うマイクロ吻合の手術手技において臨床に近い感触を体感でき、ラットなどの動物を使用した練習に比較して感染や衛生管理が非常に容易であるというメリットがある。

血管モデルには長さが80mmと60mmがある。
80mmは血管の外径が0,5mm、0.7mm、1mm、2mm、3mm、4mm、5mm、の7種類あり、太いものから細いものへ吻合の難易度を上げながらの学習が可能だ。
60mmは血管壁が薄くくったりした質感のもので、健康ではない血管を再現し外径1mm、2mmの2種類がある。現在、形成外科や脳神経外科を中心として国内だけでなく、アメリカ、スペイン、アルゼンチン、タイ、チリ、フランス、メキシコなど海外でも採用されている。

腎部分切除術トレーニング用モデル(以下腎臓モデル)は順天堂大学泌尿器科の磯谷周治先生の依頼から開発がスタートした。このモデルの特長は、単に腎臓を模倣したものでなく、腫瘍の部分切除の練習を目的にしたモデルということだ。手術練習には豚が使われることがあるが、豚には病気がなく、腫瘍を再現できないことに加えて、近年では動物愛護の観点からも化学物質による同手術手技のトレーニングに特化したモデルが必要となり、製作することになった。
腫瘍部と腎臓の実質部でそれぞれに異なる固さを有しているため、実物に近い触感を体験できる。また、従来使われてきた電気を通さないシリコン製のモデルとは違い,電気メスや超音波エコーも使用することができ,腫瘍部には血管が埋め込まれているため、血管のクリッピングや縫合のトレーニングも可能だ。

また、「EXSURG.」には処置の難易度が異なる以下の3種類のタイプが用意されており、様々なケースを想定して練習を行うこともできる。
レベル1:見てすぐにわかるところに腫瘍がついている
レベル2:場所はわかるが、腫瘍の全体はわからない
レベル3:腫瘍がどこに埋まっているのかわからない

タイでの腎臓モデルを使用したトレーニングコースの様子

この3種類のタイプは、タイで行われた腎臓モデルを使用した手術練習のために開発したもので、磯谷医師はこの腎臓モデルを使用したトレーニング成果に関する研究発表を2017年香港で開催されたUAA(Urological Association of Asia congress/アジア泌尿器科学会)にて行い、Best Abstract Presentation を受賞した。

さらに本年2019年には、褥瘡(一般的に「床ずれ」ともいわれる)の壊死組織を除去するデブリードマンという処置のトレーニングモデルをリリースする予定になっている。壊死した組織を取り除くための初期教育用のモデルだ。

また、同社は、医師の技術向上に役立つような製品を開発していく一方、パートナーを募集しているとのことだ。具体的には、ドライラボ(医療の練習に動物を使わないで行う)に関する取組やワークショップを行っている企業や、医療に対するトレーニングを提供しているセンターや医療機器のメーカーの方たちなどだ。
現在、医療の世界では遠隔操作によるロボットなど、従来の手術手技とは大幅に違うアイデアやコンセプトによって発展する医療機器も増えている。
例えば上記のようなパートナーと提携することで、血管モデルや腎臓モデルを使って医師たちがロボットや最新の医療機器を使いこなす技術習得のトレーニングが提供できるかもしれない。医師たちが安心して新しい機器を使いこなせるようになることに貢献したいと柴田氏は言う。

人の身体は千差万別で、経験知がないと手術などの技術向上は難しい面が多々ある。しかし、トレーニングの段階から少しでも実際に近いケースを体験できれば、若手医師たちの基礎技術習得と自信を高めることに役立つ。結果、医療レベルが向上し、多くの患者が安心して手術を受けられるに社会の構築につながっていくことが期待される。

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取材日:2019年3月19日

 

企業情報

有限会社テクノ・キャスト

PVA(ポリビニルアルコール)を用いた生体模型を製造しております。含水性であり生体に酷似した感触を持つ当社製品は手術のトレーニングに最適です。動物由来の材料と比較して感染を考慮した衛生的な管理を必要とせず、セットアップが非常に簡単です。また電気メスやエコーなどの電気デバイスを使用することできます。

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