BreakThrough 企業インタビュー

土を使わず、フイルムで野菜を育てる農業革命メビオール株式会社

2016.10.17

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アイメックフイルムを使った陸前高田市のトマト農場

  • 医療分野で培われた先端高分子技術を用いて開発された土の代わりとなるフイルムが、農業分野に革命を起こそうとしている。

先端高分子技術を医療から農業へ

メビオール株式会社は1995年に設立されたベンチャー企業。代表取締役社長の森有一氏は東レ、テルモ、W.R.Grace社で長年にわたり高分子素材を医療分野で活用することを目指し、人工血管などの研究開発に取り組んできた。メビオールの創業にあたり、森氏は「これまでは人体を対象とした研究をしてきたが、これからは同じ生物である植物を対象としよう」と考えたという。そこで注目したのが農業分野。農業は人類の歴史とともに発展してきた産業だが、人口の急激な増加、地球温暖化による土壌劣化、水不足などによって危機的な状態に直面してきた。メビオールでは医療分野で培ってきた先端高分子技術を基に、土と水の役割を担う新素材開発を進めていった。

アイメックフイルム

土を使わないフイルム農法の誕生

10年以上をかけて開発に成功したのが「アイメックフイルム」と名付けられたハイドロゲルの薄膜である。キッチン用のラップのように見えるフイルムだが、水・養分などは通すものの、菌・ウイルスなどは通さない無数のナノサイズの孔が空いている。 メビオールは土の代わりにアイメックフイルムを使って野菜を育てる「フイルム農法」を開発した。養分を含んだ水の上にフイルムを敷き、そこにレタスなどの種を蒔くと、フイルムの表面に大量の毛根が張り付き、フイルム中の養液を吸収し、レタスが生長していく。また根は、養液が腐っても、フイルムが菌・ウイルスを遮断するために農薬の使用量が大幅に減少し、安全な野菜栽培が可能となる。 農業では、作物に適した土作り、天候・季節・土質・作物に適した水やり技術を習得することは非常に難しい。フイルム農法では、アイメックフイルムによって土作りと水やりから解放された。土を使わないという点では水耕栽培が普及しているが、根が浸漬している養液の汚染防止のために、養液の循環および定期的な殺菌・交換が必要で設備コストがかかる。フイルム農法ではその設備が不要で、水耕栽培よりも導入しやすいメリットがある。 またアイメックで栽培したトマトは、フイルムに由来する水分ストレス効果によって水耕栽培と比べて糖度や栄養価(リコピン、アミノ酸、GABA等)が非常に高くなるという、予想もしていなかった利点も判明。糖度8%以上のフルーツトマトとして、高値で市場取引されるようになった。2008年頃から日本国内でアイメックによる農法が始まり、2016年には150カ所の農場でフルーツトマトが生産されている。フルーツトマト以外では、レタスなどの葉野菜、キュウリ、メロン、パプリカ、ナスなどが試験的に生産されている。興味深いのは製造業、卸売・小売業や建設業など、農業関係以外の業種がフイルム農法を行っていること。アイメックは誰もが農業に参入できるという意味でも、革命を起こしたと言える。

フイルム農法で育てられたトマト

津波の被災地や砂漠でトマトを育てる

アイメックフイルムが土から解放された農法を実現したことで、これまで農業ができないと思われていた場所、例えば東日本大震災の被災地で、土壌汚染が深刻な中国で、そして中東の砂漠地帯で野菜を作ることが可能となった。 東日本大震災の津波による塩害で農業ができなくなった岩手県陸前高田市では、フイルム農法によるトマトの生産が始まっている。中東のドバイでは、砂漠で生産された高糖度のトマトが高級食材として現地のレストランで人気となっている。農業不毛の地と考えられていた砂漠地帯も、豊富な太陽光に恵まれているため、フイルム農法によって一大農産物生産地となるかもしれない。すでにアイメックは134カ国で特許出願され、116カ国で特許が成立している。今後も世界各国で導入事例が増えていけば、国際社会の長年の課題である食料問題の解決へ大きく貢献することも期待できそうだ。

砂漠の農場で収穫されるトマト

企業情報

メビオール株式会社

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