BreakThrough 発想を学ぶ

「オープン・イノベーション」の概念でプラスチック代替のアイディアを宇山 浩/大阪大学大学院教授

<連載第4回(全4回)>

2018.12.27

SHARE
  • facebook
  • twitter

前回では大学と企業のマッチング、特に中小企業との産学連携について自身の例もふまえながら語っていただいた。連載第4回目の最後となる今回のテーマは「プラスチック代替への対応に伴い、今後の中小企業や世の中に求められるもの」。宇山教授独自の視点から生まれた、日本のこれからのものづくりを導くヒントとは。


プラスチック代替の潮流に対して、中小企業は今後どうすべきか

まず「プラスチック代替」に対する動向を世の中に広く働きかけるときに、誰がどのように牽引していくかが重要になってくると思います。企業側はこの流れをしっかり見極めておくことも大事ですよね。また日本のものづくりの中小企業は成形技術が非常に高いですから、適合することはいくらでもできると思います。第2回でも申しましたが、何をつくるかのアウトプットが明確でないと意味がないと思いますね。中小企業にとっては、現状のプラスチックに替わるものとして新しいプラスチックを採用するのでなく、新しいプラスチックで何ができるかを探るべきです。それには企業内の技術者同士でアイディアを出すだけでなく、もっと別の形で、外部の発想を取り入れることも良いと思います。
現状のプラスチックそのものにももちろんメリットがありますから、プラスチックの事業は継承しつつ、代替素材で何をアウトプットできるかを模索することが今後の課題になっていくのではないでしょうか。

プラスチック代替の対応への動きは進んでいるものの、プラスチック代替となる新しい素材で何がつくれるかは未知数な部分も多い。宇山教授にとって、新しい可能性を秘めたプラスチック=バイオプラスチックとは具体的にどんなものだろうか。

多糖類に秘められた、今後の可能性

バイオプラスチックの素材に関しては、多糖類が可能性を秘めていると思います。具体的に言えば、海藻が原料の寒天や、デンプンベースのものですね。教授の任期が終わるまで、後9年ですが多糖類を利用したバイオプラスチックで自分の研究にもうひと花咲かすことができればと思っています。
プラスチック代替の流れが高まっている中、この研究に従事して産学連携などを含めて、中小企業の皆さんを支援できるといいですね。

最後に、新しいプラスチック=バイオプラスチックの可能性を広げるための指針となるヒントを宇山教授からいただいた。日頃から研究室で大学生らと接する機会が多い宇山教授ならではの意見ともいえる。

新しいプラスチックの可能性を広げるために

プラスチック代替への対応の動きが世の中でも高まっているため、企業側も私たちもどのようにすべきか?は、ただ今、模索中です(笑)。ただ、私たちのようにずっと研究に従事していると新しい発想の転換がなかなかできなくなりますね。また企業側でも、斬新なアイディアや意見はすぐには出てくるものでもないのです。
ですから、例えば、新しいものをつくろうとする意識の高い若い企業家さんやクリエーターが集まる場で「プラスチック代替」の議論をしたり、製品づくりのアイディアを出していただいたり、それに対してアイディアが優れているもの、ビジネス化ができそうなものに関しては、中小企業などがバックアップすることで新しい流れをつくっていく。そうした活動を通して、世の中にもっと「プラスチック代替」の意識が徐々に浸透していければ良いのではと思います。これは「オープン・イノベーション」という概念に当てはまると思いますが、世代や分野を超えた様々な人々が「プラスチック代替」に関してアイディアを持ち寄れば、新しいプラスチックの可能性がもっと広がっていくのではないでしょうか。

取材日:2018年11月5日

<連載第4回・完>

 

連載

プラスチックが現在の化学工業をつくったといっても過言ではない

新しいプラスチックで、何をアウトプットすべきかを明確にすることが大事

産学連携では、大学と企業の双方が信じあえることがベスト

「オープン・イノベーション」の概念でプラスチック代替のアイディアを


宇山 浩(うやま・ひろし)

1962年 神戸市生まれ。京都大学工学部卒。同大学院大学大学院工学研究科修了。花王株式会社の研究員を経て、88年東北大学工学部助手となる。97年に京都大学大学院に移り、工学部工学研究科助手、2000年工学研究科助教授となる。2004年より大阪大学大学院工学研究科応用化学専攻教授。高分子材料化学の専門家として、中小企業をはじめとする様々な企業と研究・開発を進めている。

<受賞歴>
・高分子学会 Polymer Journal 論文賞(平成7年)
「Dispersion Polymerization of N-Vinylformamide in Polar Media. Preparation of Monodisperse Hydrophilic Polymer Particles」
・日本化学会 進歩賞(平成9年)
「酵素触媒を用いる新しい高分子合成反応の開拓」
・日本農芸化学会 農芸化学研究企画賞(平成17年)
「再生可能な植物資源を基盤とする新規グリーンポリマーの開発」
・第8回バイオビジネスコンペJAPAN 最優秀賞(平成20年)
「安価なバイオマス原料からのポリ乳酸系新材料の開発」
・高分子学会 平成29年度三菱化学賞(平成29年)
「植物油脂を用いた機能性高分子材料の開発」

SNSでシェアしよう

関連記事