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レーザを用いた網膜投影技術「VISIRIUM Technology(ビジリウム テクノロジー)」を世界で初めて実装した市販品「RETISSA Display(レティッサ ディスプレー)」株式会社QDレーザ

2019.03.21

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網膜走査型レーザアイウェア「RETISSA Display」。外見は一般のサングラスと変わらない

学ぶべきポイント

  • 微弱なレーザ光線を用いて網膜上を走査し、映像を投影する技術VISIRIUM Technologyを確立
  • レーザを用いた網膜投影を搭載したRETISSA Displayを世界で初めて市販品として販売
  • VISIRIUM Technologyは、医療・福祉用と民生用の両面で研究開発を促進

2006年に創業した株式会社QDレーザは、量子ドットレーザ技術をはじめとしたレーザ技術の開発を中心に事業を展開している。そのなかに、レーザを光源とするプロジェクタの開発事業があった。しかし、壁面等により美しい映像を投影するためにレーザの出力を上げようとすると、レーザに関する安全規制からはずれるという問題を抱えていた。

そこで、逆転の発想が生まれた。室内で出力の高いレーザ光線が使えないなら、直接、目に投影できないだろうか。それなら、レーザ光線は微弱な方が良い結果を得られるだろう。
このアイデアをきっかけに、同社は5年ほど前から研究開発を始め、3年ほど前に網膜投影技術「VISIRIUM Technology」を確立、事業化を始めた。

通常「見る」とは、目の中の水晶体で見たいものにピントを合わせ、スクリーンやフィルムの役割を果たす網膜に映像を結ぶ。見たいものにはピントが合っているが、その奥や手前にあるものにはピントが合っていないため、ぼやけた状態で見えることになる。

一方、網膜投影技術とは、光源からの光を水晶体でいったん収束させ、網膜に投影する。そのため、水晶体のピント調節機能の影響を受けにくい状態で、ものを見ることができるのだ。同社が開発したVISIRIUM Technologyは、網膜投影技術の原理を活用し、超小型プロジェクタを用いて、微弱なレーザ光線で網膜上にスキャン(走査)することで、映像を投影するものだ。

通常の「見る」(視光学系)と、網膜投影技術(Maxwell視光学系)の違い

「RETISSA Display」は、市販品では世界で初めてVISIRIUM Technologyを実装した網膜走査型レーザアイウェアだ。メガネ型のフレーム部分に超小型レーザプロジェクタが内蔵され、レーザモジュールが格納されたコントロールボックスと光ファイバーケーブルで繋がっている。PCやスマートフォン、タブレットなどをコントロールボックスに接続すれば、デジタル映像が片目に投影される。見たいものが水晶体のピント調節機能の影響を受けにくい状態で網膜に直接投影され、目に映るため、視力に関わらずクリアな画像が期待できる。

RETISSA Displayの初期プロトタイプは、コントロールボックスがA4版程度と大きく、総重量は7㎏を超えるものだった。しかし、現在販売されているものは、メガネ部分が60g、コントロールボックスは手のひらサイズで約460gと、長時間の連続使用にも支障のない軽量でコンパクトなものに改良された。また、通常のメガネやサングラスと比べても違和感のないデザインにすることで、誰でもいつでもどこでも使えることも目指している。

右が初期プロトタイプで、左が現在販売中のもの

網膜投影技術は、さまざまな研究開発に活用されるが、なかでも、AR(拡張現実)との親和性が高い。現在のARは、半透過の仮想スクリーン上にコンテンツを投影して、現実世界と融合させるのが主流だ。つまりARコンテンツを見る場合、仮想スクリーンにピントを合わせる必要がある。自分の目でピントを調節するため、ARコンテンツから現実世界の風景に視点を移すとき、そして、戻すときにも、ピントの移動が必要になる。それは眼精疲労の原因となり、スクリーンの手前、奥の実視界と同時に見ることが困難となる。

だが、VISIRIUM Technologyを使えば、コンテンツは網膜に直接投影されるため、コンテンツも現実世界の風景も同じようにクリアに見える。つまりARを現実世界の中に自然に重ね合わせられるのだ。
こうしたことからRETISSA Displayは、AR用途の開発、作業支援など網膜投影技術に関心の高い企業の注目を集めている。網膜走査型の技術はこれまで実験室系や、プロトタイプとしては存在しても、一般販売されている商品はなかったので、今後はRETISSA Displayを使うことで研究開発の進展が期待されているのだ。

なお、RETISSA Displayは医療用器具ではない。
しかし、視覚障害者の方向けで視覚支援を目的とした医療モデルの開発はすでにスタートしており、2019年2月21日には、医療機器製造販売承認の申請を行うなど、準備を進めている。
同社は「誰もが見やすいアイウェア」の実現を目標に、今後も研究開発を進めていくという。

【動画】VISIRIUM Technology

取材日:2019年2月28日

 

企業情報

株式会社QDレーザ

富士通研究所と東京大学との産学連携の共同開発を基に、可視光領域から波長1300nm帯までの量子ドットレーザをはじめとする高性能半導体レーザの開発・製造・販売を行っています。「光で世界は進化する。」というコーポレートキャッチフレーズは、レーザ及び光学技術で社会に貢献していく当社の意志を象徴しています。

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