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ビニール傘の使い捨て これでいいのか? 日本人! ~レトロフィットのススメ~谷口 裕一<連載第1回(全2回)>

2018.07.05

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最近、多くの産業分野で「レトロフィット」が注目を集めています。「レトロフィット」とは、老朽化などで古くなった機械類の一部を交換、または新しく追加することで、延命化や性能の向上を可能にすること。今回は、省エネの観点から「レトロフィット」の普及に取り組む一般財団法人省エネルギーセンターの常務理事、谷口裕一氏に話をお聞きしました。


ビニール傘を使い捨てる日本人への警告

江戸時代の日本は世界一、省エネ、そして環境に優しくモノを大切にする国だったそうです。しかし今や、日本人ほど物を使い捨てにしている国はほかに見当たりません。たとえば、傘の消費量は断トツの世界一で、そのほとんどはビニール傘です。少し強風がふくと街には壊れたビニール傘が散乱しています。オーダーメイドの傘を生涯大切に使う欧州とは対照的です。家電製品でも、かつては町のあちこちに修理屋があったものですが、今は故障すれば買い替えが普通です。自動車の場合も、日本ではモデルチェンジがあれば買い替える人が多いですが、欧州では部品を交換しながら20万㎞以上乗るのは当たり前で、サステナブルな感覚が一般市民の間に根づいています。メーカー側も、そのような取り組みを積極的に行っており高い評価を受けています。

このような観点からすると日本は先進国といえるでしょうか?日本はいつからこんなに使い捨てが当然のような社会になってしまったのでしょう。そろそろ見直す時期に来ていると思われます。この転換に際して有効な概念が「レトロフィット」です。

「レトロフィット」とは

ビルや工場などの設備や機械の性能を維持し、長く安全に使うためには定期的な保守点検やオーバーホールが欠かせません。また、長期的には、設備の新規更新が必要になり、そこでは相当な費用と工事期間が発生します。これに対して、機械や設備の一部だけの更新、あるいは部品等の追加などにより、性能や信頼性を向上させることを「レトロフィット」と呼び、最近いろいろな分野で注目されています。 これまでの「レトロフィット」は、工作機械や建設分野などでの普及が主でした。今、多くの産業分野が着目している要因として、機器などの全面更新に比べ、費用・工期の大幅縮小が可能となるほか、産業廃棄物が大幅に削減されるため、環境面においても優れていることが挙げられます。また、最近の景気回復による製品需要の増加も後押ししていると考えられます。

「レトロフィット」の普及で「サステナブル社会」を実現

省エネルギーセンターは、毎年多くの事業者の省エネ診断を行っています。提案する省エネ対策には、大きく「運用改善」と「設備更新」の2つがあります。運用改善は例えば空調温度などを変更して省エネを目指すもの、設備更新は省エネを目的に高効率の機械に置き換えることです。設備更新の方が、手間がかからず省エネを確実に実行できますが、新設更新は費用がかかり、工事期間も長くなり、なかなか採用には至りません。そこを高次元で解決する方法がレトロフィットなのです。部分的にパーツを交換し、設備をできるだけ長く使う方が廃棄物削減にもなります。

機器の問題箇所や重要部分のみを高性能化し、省エネ性能を高めるということ、即ち「レトロフィット」を普及させることは、環境負荷の軽減、地球環境の保全、持続可能な「サステナブルな社会づくり」にも貢献します。

次回は、「レトロフィットのメリット」、「レトロフィットを採用した企業の取組」について話を進めたいと思います。

<連載第1回・完>

 

○本連載における「レトロフィット」について
「レトロフィット」の概念には、広義には「オーバーホール」や「修繕・修理」、「マイナーチェンジ」までが含まれますが、本連載では、「レトロフィット」を以下のように定義し取り扱っています。

<定義>
老朽化などで古くなった機械類の一部を交換、または新しく追加することで、従来の性能を超えたり、新しい機能が付加されること


連載

第一回 ビニール傘の使い捨て これでいいのか? 日本人! ~レトロフィットのススメ~

第二回 「レトロフィット」は中小企業のビジネスチャンス! ~レトロフィットのススメ~


谷口裕一(たにぐち・ひろかず)
一般財団法人 省エネルギーセンター
常務理事 工学博士

大学では、金属物性を専攻。特に、金属中の溶質原子の拡散の挙動を計算機によりシミュレートし、物性との関係を明確にした。(1981年卒)
その後、鉄鋼メーカーに勤務。転炉や連続鋳造設備など製鋼プロセスの開発、自動車用高強度鋼板の新商品開発および製造設備の材質からの設計を担当。本社部門では、研究企画を担当し、鉄による自動車の軽量化ボディーの国際プロジェクトに参画し、次世代の車体構造を検討した。
平成22年より省エネルギーセンターに勤務、政策立案の支援、事業者の省エネ指導、省エネツールの開発などを行い、現在に至る

<省エネルギーセンターとは>
工場やビルの省エネに関する診断やアドバイス、省エネ情報の発信、省エネ人材育成の支援他、省エネに関する幅広い活動を通じて、社会に貢献する専門家集団です。
詳細はホームページhttps://www.eccj.or.jp/index.htmlでご確認いただけます。

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