BREAKTHROUGH発想を学ぶ

次代の日本企業の姿を映す日本の農業平藤 雅之<連載第1回(全4回)>

2018.05.08

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ロボットにより自動化される大規模農業

中小企業経営者の年齢構成の頂点は、1995年頃は40歳代後半の経営者が多かったのに対し、2015年頃には60歳代後半の経営者が多くなっています。この20年間で、20歳も高齢になっているのです。農業は、かねてより「20年後の日本の姿」と言われてきました。つまり、高齢化を先取りしている今の農業を見れば、日本の企業の20年後の姿がわかるということです。では、日本の農業はいったいどうなっているのでしょうか。先進的な農業地帯を詳細に見ていきましょう。その舞台は、食料自給率1400%を誇る北海道の十勝エリア。この地域の平均耕作面積は44haですが、近年は100haクラスが増加しており、少ない人数で大規模に経営して稼ぐモデルを構築しています。黒字経営は当たり前で年商は軽く億を超え、手取りは数千万円を超えるところも多いのです。農業といえば零細で儲からないというイメージがありますが真逆。十勝エリアの農業をロボット化すれば、アメリカに匹敵するレベルになる可能性さえあります。

十勝エリアの大規模農場で主に使用されているのは、海外製の高機能な大型農業機械。これを活用した大規模農業は、とてもコストパフォーマンスが高いことが特徴です。そのため、十勝エリアでは、急速に普及しています。例えば、葉緑体の濃度を測るセンシング技術を使った高機能な可変施肥技術を利用すれば、肥料代を大幅にカットできる。大規模農業ではその金額は意外と大きく、その導入費用が1年でとれてしまうほど。今やRKT-GPSを搭載した自動操舵が可能な自律走行トラクターも普及しており、農業の自動化が浸透しつつあります。さらに、海外では、洗練されたデザインでしかも馬力のある大型農業機械も登場しています。私は、あと10年もすれば、大規模農業のほとんどがロボットによって行われることになると予想しています。

無線LANやドローン技術によって低コストを実現

近年、不耕起栽培が注目されています。不耕起栽培とは、土を耕さない環境にやさしい農業。農業では昔から土を耕してきました。なぜ土を耕すかというと農業機械や家畜、人間が土壌を踏み固めてしまうためからです。もし、踏み固めなければ土壌は森の中の土のようにフカフカになります。すでにドローンで農薬散布ができるようになりましたが、最近は空から種をまくことができるドローンも登場しました。収穫もドローンでできるようになると、不耕起栽培が可能になります。この方法が普及すれば、耕作など、農業に投入するエネルギー量は激減するでしょう。現在、十勝エリアでは特区を申請する動きがあります。もし採択されることがあれば、ハイパワーな無線LANやドローン技術が使えるようになり、低コストで自由な農業が実現するでしょう。

農地面積の減少を防ぎ、遊休農地を解消して意欲ある者へ農地を集積するために政府は、2009年に農地制度を改正し、民間企業の農業への参入を解禁しました。これにより農業へ進出する企業は増加したものの、ほとんどうまくいっていないのが現状です。なぜ、農業はうまくいかないのでしょうか。

次回は、農業に横たわるデータ取得の壁と海外勢の動向について解説します。

<連載第1回・完>


平藤 雅之(ひらふじ・まさゆき)
東京大学大学院
農学生命科学研究科附属生態調和農学機構 国際フィールドフェノミクス研究拠点
特任教授 ドリームサイエンスホールディングス株式会社・CEO

1983年東京大学生命科学研究科修了。農林水産省・農業研究センター(現在の農研機構)主任研究官、農林水産技術会議事務局研究調査官、農研機構研究領域長などを経て、現在に至る。計算生物学、生物・生態系のモデリングと計測制御、IT・複雑系・人工生態系技術を用いた宇宙農場・快適な生活空間の研究等が専門。

◇主な著書
『バイオエキスパートシステムズ - 生物生産におけるAI/ニューロコンピューティング -』(コロナ社)1990年4月刊

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