BreakThrough 発想を学ぶ

循環型社会の実現のため、海藻養殖でイノベーションを瀬名波 出/琉球大学教授

<連載第2回(全4回)>

2019.02.14

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前回では、琉球大学工学部の瀬名波教授に「再生エネルギーとしての二酸化炭素(以下CO2)の活用」と「沖縄のものづくりの現状」についてお話を伺った。そして、第2回目となる今回は、瀬名波教授のライフワークともいえる「CO2溶解装置を用いた海藻の養殖実証事業」の取り組みについて。
沖縄で生まれ育ち、学び、研究を推進する立場だからこそ実現できたといえる、この事業のスタートの経緯について伺った。


CO2溶解装置の開発について

まず「CO2溶解装置」についてお話をしましょう。火力発電所では排ガスが出ます。この排ガスをボンベの中につめてそこに海水を霧状に吹きかけると、海水中にCO2がどんどん溶けてきます。排ガスに含まれるのはCO2と窒素が大半で、後はいくつかの成分です。CO2は他のガスより水に溶けやすい特性があり、溶解度が30倍以上あるのです。30倍以上速く水に溶けるため、CO2だけが選択的に短時間で回収できます。
様々なやり方を試行錯誤した結果、この排ガスに海水を噴霧してCO2を回収する「CO2溶解装置」を開発できました。この溶解装置ならコンパクトかつ高効率にCO2を回収できます。沖縄電力火力発電所での実験でも、排ガスからのCO2がほぼ100%海中へと回収されたことが実証されています。

CO2溶解装置

しかし、この装置を開発したものの問題がありました。海水にCO2を溶かして回収しても、炭酸水をつくっているようなもので、放置しておくとCO2が抜けてしまうのです。そこで「CO2を固定化するためには、植物に固定化するのが望ましい」と考えました。さらに海に囲まれた沖縄という土壌で何かできないと思った時に、「海水中のCO2で海藻を育てて固定化できれば」ということを検討するようになりました。

炭素回生システムの実証

そんな時、経済産業省の実証事業で、「CO2で育てた海藻からバイオ燃料をつくれば循環型のしくみができるのでは」という構想を試す低炭素社会に向けた技術シーズ発掘実証モデル事業に採択されました。そこで2012年の半年間、実証試験をさせていただきました。
この試験によって、排ガスからCO2を回収しCO2で海藻を育てて、海藻からバイオ燃料をつくる「海洋バイオマス利用によるCO2削減と炭素回生システム」が実証されました。

しかし現状では、バイオ燃料を作るために、炭素回生システム全体ではその10倍ものエネルギーを使わなければいけません。経済産業省の目標は、バイオ燃料をつくることにありましたが、現時点では、バイオ燃料生成まで含めた「炭素回生システム」の実用化は、難しいと言わざるを得ませんでした。

~CO2は資源である。海の恵みを未来のために~
海洋バイオマス利用によるCO2削減と炭素回生システム

循環型社会の実現に向けて

また、「海藻の養殖」という観点でも課題があることがわかりました。既存の養殖方法では、膨大なエネルギーがかかるということです。炭素回生システムのなかでも、この海藻養殖にかかるエネルギー割合が非常に大きく、全体の50%程度を占めています。逆に言うと海藻養殖にかかるエネルギーを省エネ化できると、炭素回生システムによるバイオ燃料作りも一気に現実化に近づきます。
海藻の最盛期は5月ぐらいですが、その時期に向けて海藻を育て上げるために、頻繁に海水をくみ上げていきます。この工程にかなりのエネルギーがかかるのです。沖縄の水産業や海藻養殖業には、「省エネで海藻を育てよう」という発想はありませんでした。
循環型の社会には、安定して省エネで運用できる仕組みをつくる必要があります。海藻養殖で「イノベーション」を起こす必要があると考えて、機械化による海藻の養殖実証事業に取り組みました。

当初から瀬名波教授は、CO2溶解装置によって排ガスからCO2を回収し、それを海藻に固定化しようというプロセスまでは考えていた。しかし、海藻を使ってバイオ燃料をつくるとなると、そのために費やすエネルギーが必要となってくる。循環型の社会のシステムを描き、実証できたとはいえ、実際に稼働させるとなるとまだハードルがあるようだ。
次回の第3回では、瀬名波教授が取り組む海藻養殖での「イノベーション」についてお話いただく。

取材日:2018年12月18日

<連載第2回・完>

 

連載

第一回 二酸化炭素を回収して、どのように有効活用すべきかの仕組みづくりが重要

第二回 循環型社会の実現のため、海藻養殖でイノベーションを

第三回 IoT化とAI導入を進めれば、海藻が一番良いコンディションで養殖できる

第四回 様々なことにトライしていくと、「これだ!」といえるものと出会えるはず


瀬名波 出(せなは・いずる)

1967年沖縄県生まれ。1991年琉球大学工学部エネルギー機械工学科卒。1993年同大学大学院工学研究科機械工学専攻修了後、同大学工学部助手に採用。2001年名古屋大学大学院工学研究科工学博士取得。2006年琉球大学工学部准教授、2018年琉球大学工学部教授に就任。2009年から海洋バイオマスを利用したCO2削減・利活用研究に着手。広く学外の研究機関と協働して、沖縄の産業にも貢献できるよう、海ブドウやモズク等といった海藻の早期育成の研究を推進している。

<受賞歴>
・社会貢献賞受賞(2009年)
・工学部貢献者賞受賞(2010年)
・国際学会(IMPRES2010)ベストポスターアワード賞受賞(2010年)
・ロッキーチャレンジ賞受賞(2013年)

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