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中小企業がロボット業界で活躍するには?黒田洋司(明治大学 理工学部 機械工学科 専任教授/SEQSENSE株式会社 共同創立者)

<連載第3回>(全4回)

2020.05.21

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今、大きく広がろうとするロボット産業。ものづくりを手がける中小企業には、どのような事業チャンスがあるでしょうか。実際に活躍する中小事業の事例などを交え、自らもロボットベンチャー企業「SEQSENSE(シークセンス)株式会社」を立ち上げた明治大学教授の黒田洋司氏にお話を伺いました。


ロボットの動作に関わるソフトウェアを提供する

ものづくり中小企業がロボット製造に関わろうとする場合、どのような参入方法が考えられるでしょうか。

「ロボットの稼働に必要となるピースは、大きく分けて三つあります。それがメカと、電子回路と、ソフトウェア。なかでも今、最も技術的な鍵となるものはソフトウェアでしょう」

ここで黒田氏が例に挙げたのが、東京都江東区に本社を置く社員115人の「株式会社MUJIN」です。

「産業用ロボット向けソフトウェアなどを開発する同社では、オープンイノベーションにより大手電機会社や重工業会社など複数の企業と連携して、AIを搭載した汎用的『知能ロボットコントローラ』を開発。これを工場などにある従来型のアームロボットにつけると、かなり高度な動きが実現できるようになります」

さらに、この分野で注目を集めているスタートアップ企業としては、ディープラーニングなどのAI研究を行う「株式会社Preferred Networks」もあります。同社はロボットなどを活用した工場の自動化で知られる「ファナック株式会社」と連携し、産業用ロボットの高度な知能化に取り組んでいます。

「ソフトウェアの中でもハードの制御等に関わるものは、長年の経験に基づく深い知見によるものが多く、一朝一夕には作り出すことができません。ここが得意な企業は強いですね」

ロボットの性能を左右するメカ類や電子機器を提供する

もちろんロボット製造には、メカ類や、センサなど電子回路が重要な役割を果たす電子機器類も欠かせません。

「ロボットの性能は、使用するパーツの性能で大きく左右されます。SEQSENSEが開発している自律移動型警備ロボットでも、ハード製造の一部は中小企業に委託したり、センサやカメラ等の電子機器類は市販のものを使っていますが、やはりその性能は重要です」

カメラの場合、明るい場所と暗い場所の両方に対応できるダイナミックレンジは、一般的に広く求められる要素であり、同社のような警備ロボットの場合は、特に暗視性能の高さも必要になってくると黒田氏はいいます。

また、同社のロボットにも搭載されている、レーザーセンサで周囲の状況を立体的に把握する『3D-LiDAR』は、自動運転に欠かせない要素として注目を集める技術。この分野で世界的な知名度を誇る中小企業の例として、黒田氏は各種センサや自動ドアを手がける大阪市のメーカー「北陽電機株式会社」を挙げました。

「大切なのは『ロボット向けパーツ』とひとくくりにせず、市場で求められるロボットはどんなもので、それに必要なパーツは何かということをよく調査することです」

連携によるロボット開発で業界をリードする中小企業も

ロボットの駆動部品、構造部品といったメカ類や、駆動回路、センサ、コンピュータなどの電子回路が重要な役割を果たす電子機器類、さらにソフトウェアといったパーツをロボット製造企業に提供する。これがロボット市場参入の一つの方法でしょう。一方、自社でロボットを開発することも不可能ではありません。その好例が、福岡県宗像市に本社を置く社員20名の「株式会社テムザック」です。

同社は前身であったベルトコンベアなどの製造ラインメーカー「株式会社テムス」時代に、工場の自動化で培った機械系、電気系、制御系などの技術を活かして試作したロボットで注目を集め、社長自ら分社・独立。その技術に注目する多くの大学や企業と協力しながら、介護事業者との連携で開発した介護巡回ロボット、大手住宅メーカーと共同開発した建築支援ロボット、自治体から開発を要請されたレスキュー用ロボットなど多くの製品を世に送り出し、注目を集めています。

このようにロボットを切り口に事業を拡大させる、あるいはロボット技術で生産性向上を実現するには何が必要か──。次回の最終回では、全体的なアドバイスもいただきます。


連載「賢いロボットの活用法とロボット事業参入のポイント」

第一回 ロボットの性能向上でより広い社会実装の可能性が広がる
第二回 ロボットの事業化には、市場・ロボットの適正・使用条件への理解が不可欠
第三回 中小企業がロボット業界で活躍するには?
第四回 賢いロボットの活用法とロボット事業参入のポイント


黒田洋司(くろだ・ようじ)
明治大学 理工学部 機械工学科 専任教授/SEQSENSE株式会社 共同創立者

1994年、東京大学大学院工学系研究科 船舶海洋工学専攻博士課程後期修了。明治大学理工学部機械工学科専任助教授、マサチューセッツ工科大学客員准教授、明治大学理工学部機械工学科専任准教授などを経て、2013年より現職。2016年、自律移動型警備ロボットなどを開発するスタートアップ「SEQSENSE(シークセンス)株式会社」を設立。東京大学生産技術研究所研究員、文部科学省宇宙科学研究所(現宇宙航空研究開発機構[JAXA]宇宙科学研究所)共同研究員。JAXAの小惑星探査ミッションに参加し、「はやぶさ/はやぶさ2」に搭載された小惑星探査ローバの開発に携わる。

取材日:2020年2月13日

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