BreakThrough 発想を学ぶ

中小企業がSDGsに取り組むべき2つの理由横田浩一(株式会社横田アソシエイツ代表取締役/ 慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科特任教授)

<連載第1回>(全4回)

2020.03.12

SHARE
  • facebook
  • twitter

これまでと同じビジネスモデルで、果たして自社に未来はあるか──。このような不安を抱えている中小企業は少なくないのではないでしょうか。国連が2030年までの共通目標として掲げたSDGsは、そんな閉塞感を打破する切り口になり得ます。その詳しい要因や、SDGsを事業に取り入れる際のポイントなどを、SDGs関連の事業を幅広く手掛ける「株式会社横田アソシエイツ」代表で、慶應義塾大学大学院特任教授も務める横田浩一氏に伺い、4回に分けて発信していきます。


◆SDGsとは?
SDGs(Sustainable Development Goals/持続可能な開発目標)は、2015年9月に国連総会で採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」のなかに記載されている、2016年から2030年までの国際目標。持続可能な世界を実現するため、「貧困」「飢餓」「気候変動」「エネルギー」「教育」など17分野の目標=「ゴール」と、17の各分野での詳細な目標を定めた169のターゲットから構成されており、2001年に策定されたミレニアム開発目標(MDGs)の後継として、150を超える加盟国首脳の参加のもとで採択された。2017年7月の国連総会では、各ターゲットの進捗を測定するため232の指標も採択された。

SDGsの17の目標(国連広報センターウェブサイトより)

SDGsへの取り組みやESG経営が取引先から求められるようになる

15年の国連総会において全会一致で採択されたSDGsに対しては、現在国内外の多くの企業で取り組みが進められています。しかし、18年12月に関東経済産業局が発表した「中小企業のSDGs認知度・実態等調査」によると、「SDGsについて全く知らない」と回答した中小企業の割合は84.2%にものぼりました。

「中小企業だと上場していない企業が多いため、市場からのプレッシャーが少ないというのがその主な要因だと思います。ESG投資が加速度的に広がる昨今、上場している大企業だとそうはいかないでしょう」

ESG投資とは、企業の環境(Environment)・社会(Social)・ガバナンス(Governance)への取り組みといった非財務情報を重視して投資先を決定する投資の行動規範です。このESG投資の規模は各国で年々急速に拡大しており、18年の世界のESG投資額は約31兆ドルにのぼりました。資金調達においてこのESG投資の影響をダイレクトに受ける上場企業は、非上場企業に比べてSDGsなど社会に貢献する事業や活動への感度が高まっているわけですが、その影響は確実に中小企業にも及んでいきます。

「ESG経営を心がける大企業は、調達先の経営状況にも目を光らせており、有名企業の海外のサプライヤーが人権を無視した労働を強いていたことが問題になったこともありました。今の時代、大企業に選ばれる企業になるためには、中小企業もESGやSDGsに無関心ではいられません」

加えて、ESG経営やSDGsへの取り組みという無形資産を評価して中小企業向けに融資する金融機関も見られます。

「中小企業においても、もはやSDGsは“ビジネスに影響する”どころの話ではなく、“ビジネスそのもの”といえるでしょう」

企業自身も未来への閉塞感を感じている

横田氏は「今の延長線上に明るい未来があるのか?」という疑問や閉塞感を抱えている中小企業にこそ、SDGsを経営に取り入れることをおすすめしたいと力を込めます。

「SDGsの最大の特徴は、未来を予測するのではなく、2030年にどうありたいかというゴールから逆算して今何をすべきかを考える“バックキャスティング”にあります。今の時代、事業を成長させたいなら、このバックキャスティングを取り入れない手はありません」

すでに日立製作所は中期経営計画を立てるにあたり、2030年からのバックキャスティングを取り入れています。また、流通業大手の丸井グループは、さらに先の2050年までのビジョンを発表し、そこへ向かって経営していくということを打ち出しているそうです。このような大企業のサプライヤーとなり得る中小企業も、「現状で手一杯で先のことは考えられない」などとは言ってられません。今の事業の先にどんなゴールがあるのかを説明できるかが中小企業の事業機会に直結する日は、もうすぐそこまで迫っていると言えそうです。

「『中途半端に利益が出ているから切り捨てられない』というイノベーションのジレンマに陥ってはいけません。今の延長線上で本当に会社の未来があるか。この機会に一度真剣に考えてみることをおすすめします」


連載「ミドル層を動かし、2030年以降も持続可能な企業へ」

第一回 中小企業がSDGsに取り組むべき2つの理由
第二回 SDGsへの取り組みにより優秀な人材の獲得競走で有利になる
第三回 連携で成功した社会起業家たちにビジネスのヒントを見出す
第四回 ミドル層を動かし、2030年以降も持続可能な企業へ


横田浩一(よこた・こういち)
株式会社横田アソシエイツ 代表取締役/慶應義塾大学大学院 政策・メディア研究科 特任教授

1988年日本経済新聞社に入社。2011年同社を退職後、株式会社横田アソシエイツを設立。15年より慶応義塾大学大学院政策・メディア研究科特任教授を務める。多くの企業のブランディング、マーケティング、CSR、CSV、HRM、イノベーション分野や働き方などの改革に携わると共に、さまざまな地域で地方創生に関わる。また、日本ユネスコ国内委員会や中小企業基盤整備機構、大手企業研修などでSDGsをテーマにした講演も多数行う。

◇主な編著書
・『デジタル・ワークシフトマーケティングを変えるキーワード30』
  (共著/産学社)2018年刊
・『明日は、ビジョンで拓かれる』(共著/碩学舎)2015年刊
・『ソーシャル・インパクト~価値共創(CSV)が企業・ビジネス・働き方を変える』
  (共著/産学社)2014年刊
・『愛される会社のつくり方』(共著/碩学舎)2014年刊

取材日:2020年1月9日

SNSでシェアしよう

関連記事