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イオン導電ポリマーマトリックスシステムを確立し、安全性の高い固体電解質リチウムイオン電池の開発に成功パイオトレック株式会社

2019.04.25

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イオン導電ポリマーマトリックスシステムにより、様々な固体電解質リチウムイオン電池と高電圧リチウムイオン電池を開発

学ぶべきポイント

  • 固体電解質リチウムイオン電池などの開発の基礎となる「イオン導電ポリマー」の量産化技術を確立
  • イオン導電ポリマーの応用から、イオン導電ポリマーマトリックス技術を開発
  • 固体電解質リチウムイオン電池と高電圧系リチウムイオン電池のプロトタイプを完成

パイオトレック株式会社は1996年の創業当時から、リチウムイオン電池(以下、LIB)の新規開発を目標に掲げていた。というのも、現在も主流の有機電解液系LIBには、石油化学系薬品が含まれ、発火の危険性を抱えている。そのため、たびたびノートPCやスマートフォン、航空機部品などが炎上する事案が発生するのだ。こうしたリスクのある有機電解液系LIBに変わる、安全性が高く、また、薄くてやわらかいフレキシブルなLIBの開発が、社会的にも熱望されていた。

そんな中、同社は、LIBなどの開発の基礎となる「イオン導電ポリマー」の量産化技術を確立。2016年には日本と世界の主要国の特許を取得した。可燃性の有機電解質を、不燃性である「イオン導電性ポリマー」電解質に置き換えてしまう事が出来れば、リチウムイオン電池を全固体化して高い安全性が確保できるのだ。
「イオン導電ポリマー」は、たとえばフッ素系ポリマーにイオン液体骨格を重合し、本来は絶縁体であるフッ素樹脂ポリマーにイオン導電性を付与することで合成する。つまり同社は、多機能導電ポリマーの基本骨格素材の合成をコントロールする技術を確立したわけだ。この「イオン導電ポリマー」は、幅広いニーズに合わせて発展・応用が可能で、同社は、導電率や結着力などの特性をコントロールし、イオン伝導バインダーや固体電解質の界面コントロール材など多くの新素材を開発している。

さらに同社は、固体電解質(SE)-イオン導電ポリマーマトリックス(ICPm)技術のシステム化に成功し、有機電解液系LIBと同等の性能を有し、安全性の高い「固体電解質LIB」のプロトタイプを完成させた。

粒子界面抵抗と、電極と固体電解質の界面抵抗を完全にコントロールした

それまで、「固体電解質LIB」の合成が困難だったのは、おもに2つの課題があったからだ。
①固体電解質の粒子界面に生じる抵抗のコントロールが非常にむずかしかった。同社は粒子界面に用いる界面コート材を開発し、薄膜でコートすることで、界面抵抗をほぼゼロにすることに成功した。
②固体電解質と電極に生じる界面抵抗も問題だった。同社は、従来のポリフッ化ビニリデン(PVdF)の電極を、イオン伝導バインダーに代替して最密充填することで均質な導電ネットワーク構造を形成し、Liプラスイオンが安定的に導通できる理想的な電極を完成することができた(上図参照)。

類似の開発は、ヨーロッパ地域でも推進されているが、これまでは温度依存性があるものしかできなかった。同社の「固体電解質LIB」は温度依存性が極めて少ないことから、マイナス30℃~60℃で使用可能だ。同社が確立した「固体電解質LIB」は、世界的にも優位性をもつ優れた技術と言える。

さらに同社は、高電圧系LIBも開発している。
これは固体電解質ではなく液体系だが、従来の発火の危険性のある有機電解液系ではなく、不燃性で不揮発性のイオン液体処方電解液を用いる。液体系LIBに必要なセパレーターをイオン導電ポリマーで表面処理を行い、三次元立体構造に数ミクロンの層を形成して、イオン液体やそのほか各種電解液の含侵を画期的に改善した。この表面処理で、それまで課題であった静電気も消失させることができるようになったという。
この結果、現在より高電圧のLIBが製造できるようになり、電池容量の長時間化がはかれた。また、自動車など蓄電池の必要容量が決まっているものは、高電圧電池にすることで、電池セルの搭載個数を減らすことができるため、車の軽量化、省スペース化にも貢献できる。

東京ビッグサイトで開催された第10回国際二次電池展にて、同社ブースは盛況を極めた

イオン導電ポリマーマトリックス技術の確立は、2019年2月27日から3日間行われた第10回国際二次電池展で発表された。同社のブースにはのべ600名近い来場者が訪れ、注目度の高さを物語っている。
今後、同社は、イオン導電ポリマーの量産化に取り掛かる。そのため、滋賀県内に新工場を設立すべく、2019年3月22日に地鎮祭を執り行った。2020年には、新工場が本格稼働する予定だ。
併せて、同社への事業投資を募っていく。同社が特許ライセンスやエンジニアリングのアシスト、ノウハウなどの提供を行い、それぞれの事業用途に合わせた量産化工場を世界各国に建設していくという。

LIBの世界市場は2018年には約4兆円、2022年には7兆円超と見込まれている(2019年・富士経済)。同社では、「2022年頃には固定電解質LIBの量産化が始まり、徐々に現在主流の有機電解液系LIBを代替し、2025年には主流となる。さらにその数年後には、高電圧系LIBも大きな割合を占めるようになる」と予測している。
これほど大きな市場規模の中で、世界でも類を見ない同社のイオン導電ポリマーマトリックス技術は、LIBの発展に大きく寄与すると期待される。また、LIBの発展だけにとどまらず、樹脂の改質や電気化学の様々な用途に応用範囲は無限大に広がっている。今後の動きに注目したい。

取材日:2019年3月28日

 

企業情報

パイオトレック株式会社

イオン液体やグラフト重合ポリマーを独自開発し、イオン導電ポリマーの商品化達成をコアに多機能導電バインダや同素材を使用したLIB用電極、イオン導電機能材料などを商品化しています。また、素材評価から安全性試験に至る各種受託試験、技術コンサルティング業務も展開しています。

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