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SDGsへの取り組みにより優秀な人材の獲得競走で有利になる横田浩一株式会社横田アソシエイツ 代表取締役/ 慶應義塾大学大学院 政策・メディア研究科 特任教授)

<連載第2回>(全4回)

2020.03.17

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SDGsに取り組むことで、事業をサステナブルなものに変えていける──。前回の記事では、SDGsのメリットについてそうお伝えしました。実はもう一つ、優秀な人材の獲得につながり得るという点も大きなメリットになります。専門家の横田浩一氏に具体例を交えてご説明いただきました。


◆SDGsとは?
SDGs(Sustainable Development Goals/持続可能な開発目標)は、2015年9月に国連総会で採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」のなかに記載されている、2016年から2030年までの国際目標。持続可能な世界を実現するため、「貧困」「飢餓」「気候変動」「エネルギー」「教育」など17分野の目標=「ゴール」と、17の各分野での詳細な目標を定めた169のターゲットから構成されており、2001年に策定されたミレニアム開発目標(MDGs)の後継として、150を超える加盟国首脳の参加のもとで採択された。2017年7月の国連総会では、各ターゲットの進捗を測定するため232の指標も採択された。

SDGsの17の目標(国連広報センターウェブサイトより)

SDGsへの取り組みで自社の特色を打ち出す

企業の最大の悩みは、つまるところ売上利益の確保と、優秀な人材の獲得といえるでしょう。前回説明したとおり、SDGsは事業機会に直結するため売上利益とは深く関わりがあります。では、優秀な人材の獲得に関してはどうでしょうか。

「SDGsの成功事例として度々登場している企業ではありますが、金沢で自動車リサイクル業を営む『会宝産業株式会社』は、解体された日本の自動車部品を開発途上国を中心に90ヵ国へ輸出し、現地で走っている日本車の補修部品需要に応えています。現地で多くの雇用を生み出すこの活躍ぶりが、『社会に出たらBoP※ビジネスをやりたい』と考えていた一流大学卒の学生の目に止まり、縁もゆかりも何もない金沢にある同社に就職することになったそうです」
※BoP:base of the economic pyramid=低所得層を対象に、収益を確保しつつ社会課題を解決する国際的な事業活動の総称。

もう一つ、地方の中小企業が優秀な人材を獲得した好例として、前橋市の産業廃棄物処理事業を手掛ける「株式会社ナカダイ」を挙げました。

「同社は産廃事業で培ったノウハウをもとに、リユースやリサイクルなどゴール12『つくる責任 つかう責任』の達成につながるビジネスを展開するコンサルタント会社を立ち上げており、そこに学歴の高い優秀な人材が入ってきています。しかも、これからの日本のビジネスを考える上で欠かせない女性が多い点も特徴です」

同社は女性従業員が約4割にのぼります。しかも「素材の新しい使い方を世の中に提案する仕事」として新事業の人材を募集したときは、応募倍率が約600倍にも達したそうです。

「自動車解体業にしても産廃処理業にしても、これまでは人気とは言えない業種の一つでした。そういった業種でも、SDGsを切り口としてその会社にしかない特色を打ち出すことができれば、それが優秀な人材を引きつけることが可能になるわけです」

中小企業がまず取り組むべき2つのゴール

ではSDGsの17のゴールのうち、中小企業は何から取り組むべきでしょうか。横田先生はまずゴール8の「働きがいも 経済成長も」を挙げます。

「ある調査によると、日本で働きがいを感じている人の割合は先進国中最低。昨今、日本でも働き方改革が叫ばれていますが、これはどちらかと言うと“働きやすさ”の改革であり、“働きがい”の改革ではありません。働きがいを高めるには、仕事が自らの成長につながる、達成感が得られる、誰かに感謝されるといった経験が必要。ここをどうやって向上させていくかを考えると従業員のモチベーションも高まるでしょう」

加えてゴール5の「ジェンダー平等を実現しよう」も、中小企業が意識すべき目標とおすすめしています。

「金沢市の『直源醤油株式会社』では、商品開発はすべて女性主導で行うなど、女性の感性などを事業に落とし込んでいます。言うまでもなく生産年齢人口が減少するなか、女性の積極採用は欠かせません。さらにシニアや外国人なども積極的に活用していく必要があります。多様性を受容して一人一人の違いを生かす“ダイバーシティ&インクルージョン”を意識すれば、変化に対応しやすい企業になり得るでしょう」


連載「ミドル層を動かし、2030年以降も持続可能な企業へ」

第一回 中小企業がSDGsに取り組むべき2つの理由
第二回 SDGsへの取り組みにより優秀な人材の獲得競走で有利になる
第三回 連携で成功した社会起業家たちにビジネスのヒントを見出す
第四回 ミドル層を動かし、2030年以降も持続可能な企業へ


横田浩一(よこた・こういち)
株式会社横田アソシエイツ 代表取締役/慶應義塾大学大学院 政策・メディア研究科 特任教授

1988年日本経済新聞社に入社。2011年同社を退職後、株式会社横田アソシエイツを設立。15年より慶応義塾大学大学院政策・メディア研究科特任教授を務める。多くの企業のブランディング、マーケティング、CSR、CSV、HRM、イノベーション分野や働き方などの改革に携わると共に、さまざまな地域で地方創生に関わる。また、日本ユネスコ国内委員会や中小企業基盤整備機構、大手企業研修などでSDGsをテーマにした講演も多数行う。

◇主な編著書
・『デジタル・ワークシフトマーケティングを変えるキーワード30』
  (共著/産学社)2018年刊
・『明日は、ビジョンで拓かれる』(共著/碩学舎)2015年刊
・『ソーシャル・インパクト~価値共創(CSV)が企業・ビジネス・働き方を変える』
  (共著/産学社)2014年刊
・『愛される会社のつくり方』(共著/碩学舎)2014年刊

取材日:2020年1月9日

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