日照があり、携帯電話の電波が届く場所ならどこでも簡単に設置できる。
製品名=「さるぼぼアラーム」
自然災害で起こり得る危険データを検知して発信
2019年は台風15号、19号と激甚災害指定の災害がわずか1カ月の間に立て続けに発生し、河川の氾濫や土砂崩れなど甚大な被害をもたらしたことは記憶に新しい。有限会社デザインオフィス・シィの「さるぼぼアラーム」は、自然災害で起こり得るあらゆる危険データを検知し、リアルタイムで警報を発信する多機能センサ装置だ。
傾斜や気温、湿度、気圧などの自然環境の微細な変化をモニタリングし、クラウドに送信。傾斜データが変化した時は専用の警報器やメールによるアラートが通知される。
太陽光電池と蓄電池によりセルフパワーで半永久的に動作。日照があり、携帯電話電波が届くところであればどこでも設置できる。保護性能はIP65と、十分な耐塵・防噴流仕様。200g程度と非常に軽量であるため既設構造物への取り付けも簡単で、スイッチを入れるだけで起動する。
エナジーハーベスティング技術によるIoT
同製品を支えているのは「エナジーハーベスティング技術」だ。本体に取り付けられている小さな太陽光パネルは、曇天や雨天でもわずかではあるが発電している。このエネルギーを無駄なく回収し装置のエネルギーとすることに加え、センサ情報を適切に扱うソフトウェア技術と低消費電力を実現している。まさに社会インフラを支えるIoT技術の集積と言ってもいいだろう。
開発には「平成30年7月豪雨」の実体験が活かされている。近年のゲリラ豪雨においては広域の気象情報だけでは自らの身を守ることはできず、局所的な情報が必須だ。そんな折、協業先から傾斜センサの相談を受ける形で開発がスタートした。水位計、雨量計、風向風速計、クラウドシステム、振動発電型BLEビーコンなどとの接続に関しては、他社とのコラボレーションが結実。すでに電力会社や鉄道会社において実証実験を終え、一部で試験導入が始まっている。
同製品をベースに、多くの要望に対応
同製品の能力が最も発揮されるのは、やはり土砂災害の危険をいち早く察知すべき場所だ。自宅近辺に危険箇所のある個人、遠隔地に農場などを持つ農業従事者、構造物の保守管理が必要なインフラ事業者などは重宝するに違いない。
そんな同社には現在、屋外の無電源環境での計測に関する数多くの要望が寄せられているという。当面は同製品を基本システムとして、USBカメラによる静止画像の伝送、LPWAを使った無線回線でのデータ伝送の実現を目指しつつも、要望に耳を傾けた開発も進めている。
「さるぼぼ」とは、岐阜県飛騨地方で昔から作られているサルの赤ちゃんの人形で、人々を病気や災いから守るお守りのこと。災害大国日本に住む私たちを予期せぬ自然災害から守ってくれる小さなお守りの今後の大きな展開に注目したい。
取材日:2019年10月31日
企業情報
有限会社デザインオフィス・シィ
「あなたの創りたいを作ります」をコンセプトに、岐阜県で電子機器の設計・施策・製造やソフトウェアの開発などを行う。既存の機器やモジュールでは解決できない多くの課題やお客様ニーズに応えるため、あらゆる可能性を視野に入れた自由な発想と、今までに培われたノウハウを活かした技術サービスをワンストップで提供。
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