BREAKTHROUGH発想を学ぶ

中小製造企業における「Connected Industries」の具体例徳増 伸二<連載第3回(全4回)>

2018.04.26

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技術伝承や省力化、事業拡大に有効な「Connected Industries」

「Connected Industries」は、概念的な言葉なので、分かりづらいと感じるかもしれません。しかし、決してそんなことはなく、実は中小企業にこそ意義があると考えます。大企業に比べ中小企業は迅速な判断や行動に強みを持っており、その長所を活かして様々つながりを強化することにより大きな成長が可能です。デジタル化が進んだ今日、少し工夫すれば世界中の顧客とつながることも可能です。また、社内にユニークな技術や人材を保持していれば、それを最大限活かすことも出来ます。他には負けない強みがあれば、それを核にして、外部リソースを上手く使えばチャンスは大きく広がります。そうした中、“つながり”を重視する「Connected Industries」の考えは助けとなるし、示唆を与えてくれるコンセプトだと思います。今回は「Connected Industries」を具体的にイメージしていただくために、いくつか事例を紹介して解説します。

1)人×人

デジタル技術の活用などによって、「匠の技」を見える化し、熟練技術を若手に伝承する取り組み等。

【事例】株式会社IBUKI(山形県河北町、金型メーカー、従業員数45名)
・従来は匠にしかとらえられなかった「金型の息づかい」(樹脂の流れや金型の動きなど)をセンシングでデータ化することで、「匠の技」の継承を可能に。
・AI(人工知能)を活用して、工場長のみが保持していた見積もり作成に関する知見なども見える化に成功。

 

2)人×機器

IoTやロボットの導入によって、生産性を向上させたり、単純作業や重労働を省力化して働き方改革を推進する取り組み等。

【事例】旭鉄工株式会社(愛知県碧南市、自動車部品製造、従業員数480名)
・カイゼン活動を加速化させるセンサーモニタリングシステムを自社で開発し、部品製造プロセスの問題点を見える化。生産性を短期間で向上させ、労務費を大幅低減。
・単純作業をデジタル化して、価値ある作業に従業員を配置。「働き方改革」も同時に実現。

 

3)部門×部門

3DプリンタやCAD/CAM、CAEなどのデジタルツールなどの活用によって、開発や設計、生産といった各部門を一気通貫でつなぎ、デジタルを駆使したものづくりを実現する取り組み。

【事例】HILLTOP株式会社(京都府宇治市、金属加工メーカー、従業員数23名)
・職人の技のデータ化を進めることで、24時間無人稼働での多品種、単品、短納期加工を実現。
・日中にデザインやプログラミングを行い、夜間に機械がデータ通りに加工を実施。
・かつては下請けの町工場だったが、IT化によりビジネスモデルを大きく変化。カリフォルニア進出を果たし、シリコンバレーを中心に3年で400社の顧客を獲得。

 

4)工場×工場

同業種間などによる町工場連携の取り組み。

【事例1】株式会社今野製作所<つながる町工場>(東京都足立区、油圧機器製造、従業員数36名)
・中小金属加工業者が受発注や開発、生産を一体的に推進できるプラットフォームを実現。
・連携中小企業間で、顧客の引き合い情報を共有し、見積もり依頼を発出するシステムを構築。
・顧客ポータルサイトを通じ、図面データなどの受け渡しや見積もり、注文履歴などを効率的に管理。

【事例2】シタテル株式会社(熊本県熊本市、衣服生産プラットフォーム、従業員数10名)
・地方に点在する100余りの縫製工場の生産管理データ(工場の余剰能力)を顧客(都市部のデザイナー)とつなぐことで稼働率を高め、少量かつ短納期での生産を実現。

 

5)企業×企業

オープンイノベーションなど、新たな付加価値の創出、外部資源の有効活用を促進させる取り組み。

【事例】株式会社浜野製作所(東京都墨田区、金属加工、従業員数41名)
・自社工場の隣にインキュベーション施設「Garage Sumida」を設置。技術相談や設計開発、製造支援などを行い、スタートアップ企業を幅広く支援。
・スタートアップ企業と中小企業がつながることにより、スタートアップ企業の優れたアイデアを中小企業の蓄積した技術力により早期に具体的な形にすることが可能。

 

このように、「Connected Industries」は、中小企業において、新たな価値を創造するための有効な概念です。今回挙げた事例は、そのほんの一例に過ぎません。各企業が持つリソースや立ち位置により、多種多様なつながり方があり、価値創出に向けた取組もまさに様々あるはずです。最初は小さくてもいいので、様々トライしてみることがまずは重要だと思います。

次回は、当省(経済産業省)における「Connected Industries」推進に向けた製造業IoTの支援施策と通底する基本的な考え方について解説します。

<連載第3回・完>


徳増 伸二(とくます・しんじ)
経済産業省 製造産業局 参事官(デジタル化・産業システム担当)(併)ものづくり政策審議室長

1994年経済産業省入省後、米国留学等を経て、大学連携推進課、研究開発課、NEDO出向、産技国際室長、産総研室長など、主に産業技術関連の部署を数多く経験。2016年7月に製造産業局参事官(デジタル化・産業システム担当)・(併)ものづくり政策審議室長に着任。
早大理工卒・同大学院修士、ハーバード大ケネディスクール行政修士、MITスローンスクール経営修士、東工大大学院社会理工博士、博士(学術)

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