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IoT化とAI導入を進めれば、海藻が一番良いコンディションで養殖できる瀬名波 出<連載第3回(全4回)>

2019.02.21

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前回の第2回目では、「二酸化炭素(以下CO2)溶解装置を用いた海藻の養殖実証事業」に至る経緯をお話いただいた。だが、まだ循環型社会の実現のためにはイノベーションが必要なようだ。今回は瀬名波教授が取り組む、海藻養殖における「イノベーション」についてお話を伺った。


海藻の成長を左右する要素

CO2を活用するためには、海藻の養殖が一番適していると思い研究を重ねていきました。
CO2を海水に溶かすと、海藻の光合成が活性化するのでは、ということで「ミリン」という赤色の海藻で実験しました。水槽にCO2を溶かしこんで1カ月ほど経つと、CO2がない水槽と比べると4~5倍近く海藻が成長することがわかりました。ちなみに海藻の成長は、1カ月が目安です。ですからCO2を活用することで、1カ月の短期間でかなりの成長が望めることがわかりました。

もう一つわかったことは海水の流れを変えると成長効果が高くなることです。流れがある場合とない場合を比較するために1カ月ほど実験すると、こちらも5~6倍近く成長が変わることが検証できました。

私の研究の専門は「熱物質移動」なのですが、この研究内容に非常に近い現象が起きていることがわかりました。私たちが、夏に扇風機の風にあたると涼しいのは身体の表面から熱が移動しているからです。海水の中の栄養素やCO2も一種の物質です。流れがあると物質の移動も熱の移動と同じぐらいしやすくなります。この「熱物質移動」と同様の原理によって、ある程度の流れがあると栄養素やCO2が海藻の表面を通って吸収されやすくなることがわかりました。海藻の周囲に流れがあるほど、吸収されやすくなるのですが、あまり流れが速すぎると成長しなくなり、適度な流れが必要なことがわかりました。

CO2・流れによる海藻成長促進効果

海藻の成長を速めるために必要なのは「CO2」、そして「適度な流れ」。この二つの要素を合理的に取り入れるために、瀬名波教授が推進したのが「海藻の養殖実証事業のIoT化とAI導入」だ。

IoT化とAI導入によって効率的な養殖を目指す

今私たちが取り組んでいるのが、海中の水流がどうなっているのかをハイスピードカメラで可視化することです。今、水流がどの向きにどのように風に流れているのか。私は元々熱流体工学をやっていたので、計測の知識・技術があります。
流れを可視化することで、海藻の回りの流れの速さや、乱れの度合いがわかります。水の流れが速くなり過ぎると海藻がうまく育たなくなります。また、乱れが強くなると海藻の表面に渦がぶつかるため、海藻は身を守ろうとして光合成で得たエネルギーを使ってしまい、成長性が落ちてしまうのです。海藻に快適な流れをつくってあげることが大事です。快適性を数値化するために、光合成の活性化の度合いを測る装置も導入しました。
今後は海藻の成長の度合いに応じて、海水の流れを変えると光合成がどのぐらい行われているかを全てデータ化していきます。そのデータを用い、IoT化とAI導入によって海藻が一番良いコンディションで養殖する仕組みをつくることが目標です。

海藻の養殖に関しては、技術があったとしてもIoT化や AI導入がなければ、人が朝早くから準備して日が沈んでも作業を続けなければなりません。どんどん過酷な労働状況になってきます。
しかし機械化を進めれば人が寝ている時も機械が稼働して、かなりの負担低減にはつながります。沖縄でも一次産業には人が集まりにくくなっているのが現状です。少子化で人手も足りない。その部分を補ってくれるのがIoT化やAIの導入ではないかと考えています。

今後、IoT化とAI導入による海藻の養殖が進めば、漁業や養殖業といった一次産業の活性化が望めるだろう。さらに海藻をバイオ燃料として使用するなど、循環型社会にいっそう寄与することも可能になるはずだ。産業の新たな展開に期待は高まっている。

海藻(海ブドウ)養殖の様子

取材日:2018年12月18日

<連載第3回・完>

 

連載

第一回 二酸化炭素を回収して、どのように有効活用すべきかの仕組みづくりが重要

第二回 循環型社会の実現のため、海藻養殖でイノベーションを

第三回 IoT化とAI導入を進めれば、海藻が一番良いコンディションで養殖できる

第四回 様々なことにトライしていくと、「これだ!」といえるものと出会えるはず


瀬名波 出(せなは・いずる)

1967年沖縄県生まれ。1991年琉球大学工学部エネルギー機械工学科卒。1993年同大学大学院工学研究科機械工学専攻修了後、同大学工学部助手に採用。2001年名古屋大学大学院工学研究科工学博士取得。2006年琉球大学工学部准教授、2018年琉球大学工学部教授に就任。2009年から海洋バイオマスを利用したCO2削減・利活用研究に着手。広く学外の研究機関と協働して、沖縄の産業にも貢献できるよう、海ブドウやモズク等といった海藻の早期育成の研究を推進している。

<受賞歴>
・社会貢献賞受賞(2009年)
・工学部貢献者賞受賞(2010年)
・国際学会(IMPRES2010)ベストポスターアワード賞受賞(2010年)
・ロッキーチャレンジ賞受賞(2013年)

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