BreakThrough 発想を学ぶ

ロボットの性能向上でより広い社会実装の可能性が広がる黒田洋司(明治大学 理工学部 機械工学科 専任教授/SEQSENSE株式会社 共同創立者)

<連載第1回>(全4回)

2020.05.07

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世界一の産業用ロボット生産国である日本※。世界中でロボットの注目度が増していくなか、日本の中小企業は、この「ロボット」とどのように関わればいいのでしょうか。またそこにはどんなビジネスチャンスがあり得るでしょうか。本連載では、ロボット工学者であり、自ら起業してロボット事業も手がける明治大学の黒田洋司教授にお話を伺いながら、こうしたテーマについて4回にわたり掘り下げていきます。第1回では、ロボットを取り巻く状況を整理します。
※出展:国際ロボット連盟「World Robotics Report 2018」より


大きく広がる「ロボット」市場

生産性向上の一手段として、また、今後大きな発展が見込める成長市場として、産業界から大きな期待を集めるロボット。世界の産業用ロボットの販売台数は2013年から17年の5年間で倍増し、今後も年平均14%のペースで増加すると見込まれています。

「『ロボット』の定義には幅がありますが、何らかの物理的な『メカ』があり、それをソフトウェアなどを使って電気制御するものと考えるのが一般的でした。近年多くなっているのは、これに『各種センサを内蔵し、そこで得た情報に応じて作動するもの』という条件を加えた見方。この見方でいくと、昨今注目が高まる自動運転もロボットの一種だと言えるでしょう」

このように「ロボット」の定義は多様。後述する政府の「ロボット新戦略」など、ロボットの範囲を広く取る視点で見れば、市場は無限に広がっていると言えそうです。

情報処理技術の進化で性能が大幅に向上

産業用ロボットは50年以上前から活用が始まり、すでに広く社会実装されています。そのロボットがなぜ今、改めて注目を集めているのでしょうか。やはり大きいのは、情報処理技術の進化によるロボットの性能向上でしょう。

「これまでロボットの活躍の場は工場など特定の空間に限られていました。工場であればロボットの性能に合わせ、組み立て部品が何秒おきに、どの位置に流れてくるかを正確に制御できるからです」

しかし、そうした環境を整えることが難しい外の世界では、不確定要素やノイズとなる情報が増えすぎるため、ハードウェア・ソフトウェア含め過去の処理技術ではデータを処理しきれず、ロボットを適切に作動させられなかったといいます。

「大量のデータを、リアルタイムでノイズを除去しながら処理できるようになった今、ロボットのより広い社会実装の可能性が広がっています。自動運転の実用化が視野に入りつつあるのも、その成果だと言えるでしょう」

政府もロボットの社会実装と活用を推進

各国がロボット分野への注力を国家戦略として打ち出すなか、日本政府も2015年に発表された「ロボット新戦略」で、
1.センサー、AIなどの技術進歩により、従来はロボットと位置づけられてこなかったモノまでもロボット化し(例えば、自動車、家電、携帯電話や住居までもがロボットの一つとなる。)、
2.製造現場から日常生活の様々な場面でロボットが活用されることにより、
3.社会課題の解決やものづくり・サービスの国際競争力の強化を通じて、新たな付加価値を生み出し利便性と富をもたらす社会を実現する
と定義した“ロボット革命”に向け施策を進めています。

この「より広い場面での活用」に向けた取り組みの一つに数えられるのが、黒田氏が自ら立ち上げた「SEQSENSE(シークセンス)株式会社」の警備ロボット「SQ−2」。レーザーセンサや超音波センサ、画像認識などの技術を使い、自律走行しながら巡回警備業務を行います。

中小企業としては、ロボット技術を活用して生産性向上を図るほかに、例えばこうした会社への部品供給といった事業チャンスが大いに考えられるでしょう。しかし黒田氏は、ロボット技術やその活用について、「ロボットに“幻想”を抱かず、今の技術が実現できることを踏まえ、堅実に対応することが必要」と警鐘を鳴らします。第2回では、SEQSENSEの例も交えながら、この言葉に秘められた意味を掘り下げていきます。


連載「賢いロボットの活用法とロボット事業参入のポイント」

第一回 ロボットの性能向上でより広い社会実装の可能性が広がる
第二回 ロボットの事業化には、市場・ロボットの適正・使用条件への理解が不可欠
第三回 中小企業がロボット業界で活躍するには?
第四回 賢いロボットの活用法とロボット事業参入のポイント


黒田洋司(くろだ・ようじ)
明治大学 理工学部 機械工学科 専任教授/SEQSENSE株式会社 共同創立者

1994年、東京大学大学院工学系研究科 船舶海洋工学専攻博士課程後期修了。明治大学理工学部機械工学科専任助教授、マサチューセッツ工科大学客員准教授、明治大学理工学部機械工学科専任准教授などを経て、2013年より現職。2016年、自律移動型警備ロボットなどを開発するスタートアップ「SEQSENSE(シークセンス)株式会社」を設立。東京大学生産技術研究所研究員、文部科学省宇宙科学研究所(現宇宙航空研究開発機構[JAXA]宇宙科学研究所)共同研究員。JAXAの小惑星探査ミッションに参加し、「はやぶさ/はやぶさ2」に搭載された小惑星探査ローバの開発に携わる。

取材日:2020年2月13日

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