BreakThrough 企業インタビュー

鉛筆の魅力を発信し続ける鉛筆メーカーのこだわり北星鉛筆株式会社

2017.03.22

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東京ペンシルラボ内の展示

  • 鉛筆生産を「家訓」として受け継ぎながら、たくみな情報発信で鉛筆の魅力をアピールし続ける老舗企業の戦略。

「鉛筆の有るかぎり、家業として続けよ」

誰もが一度が使ったことがある鉛筆。明治時代に小学校で毛筆から鉛筆への切り替えが行われたことで、筆記具として広く普及した。戦後、ベビーブーム世代が小学生になった頃が鉛筆生産の最盛期で、その後シャープペンシルやボールペンなどの登場で需要は減少。かつては200社あった鉛筆メーカーも現在では40社程度になり、そのうち32社が東京で製造を続けていて、その半数が葛飾区と荒川区にある。実は鉛筆は東京の地場産業なのである。

北星鉛筆株式会社(東京都葛飾区)は1951年設立の鉛筆メーカーで、明治期には北海道で鉛筆用の板材を生産し、日本各地に出荷していたという。同社には「鉛筆は、我が身を削って人の為になり、真中に芯の通った人間形成に役立つ立派で恥ずかしく無い職業。鉛筆の有るかぎり利益などは考えずに家業として続けよ」という創業者の理念が代々受けつがれている。四代目に当たる代表取締役の杉谷和俊氏は「小学校で使われているので、かろうじて鉛筆の需要はあるが、これからも鉛筆をつくり続けていくためには何をすべきか」を考え、様々な取り組みを行ってきた。

代表取締役 杉谷和俊氏

「大人の鉛筆」が100万本の大ヒット

かつては鉛筆を使っていた大人たちに、もう一度鉛筆で書く楽しさを感じてもらおうというコンセプトで開発したのが「大人の鉛筆」という商品。シャープペンのようなノック式の木軸(アメリカ産インセンス・シダー材)に太さ2ミリの国産高級芯を内蔵し、専用の芯削りも開発した。シャープペンの手軽さで懐かしい鉛筆の書き心地を楽しめる大人の鉛筆は、2011年に日本文具大賞デザイン部門で優秀賞を受賞し、100万本を越える大ヒットとなった。

また鉛筆の製造工程では板の約40%が「おが屑」として廃棄されていたが、このリサイクルにも取り組んだ。おが屑に圧力をかけてブロック化した「着火薪」は、バーベキューなどアウトドアで便利な商品。おが屑を微粉末化し、粘土と混合した「もくねんさん」と絵の具と混合した「ウッドペイント」は、乾くと木に戻る特長を持つ。

鉛筆について様々なことが学べる施設として「東京ペンシルラボ」を設立。鉛筆の歴史やつくり方、鉛筆に関わる豆知識を学ぶことができ、もくねんさんやウッドペイントでの創作を体験することができる。

大人の鉛筆

年間1万人以上が見学に訪れる鉛筆工場

さらに本社工場では見学を積極的に受け入れている。地元の小学校の社会科見学の他、修学旅行生、一般の家族連れからの申し込みも多く、年間1万人以上が北星鉛筆を訪れているという。「社会科見学での経験は記憶に残るものです。鉛筆がどのようにつくられているのかを間近で見れば、愛着もわいて、使ってみたいと思うはず」と杉谷氏は語る。

見学で北星鉛筆の名前を知った人は、地元の文房具店で同社の商品を買い求めるはずで、それは店舗やバイヤーへの何よりのアピールとなる。大手メーカーのような広告費をかけられない代わりに、常に情報発信を行うことで自社のファンを増やし、口コミで販路を拡大していくのが、中小企業ならではの戦略である。

近い将来、小学校でもタブレットを使った教育が導入されるようになれば、いよいよ鉛筆の需要も無くなってしまうかもしれない。そこで北星鉛筆では液晶用タッチペンとして使える鉛筆キャップを開発し、デジタル時代にも鉛筆を生き延びさせるための策を練っている。

北星鉛筆本社

企業情報

北星鉛筆株式会社

大人のための「大人の鉛筆」をはじめとした鉛筆や色鉛筆、木軸シャープペンシルに加え、おがくずを使った木のねんど「もくねんさん」、木彩画絵の具「ウッドペイント」などの文房具を製造している。

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