「S-CAST(エスキャスト)」による地震予測情報配信画面の例
製品名:S-CAST(地震予測情報サービス)
事前予測で地震に備える時間を確保できる
世界で発生するマグニチュード6以上の地震の約5分の1が起きていると言われる日本。 日本列島での地震は途切れることなく続いており、近い将来発生の切迫性が指摘されている南海トラフ地震・首都直下型地震を想定した巨大地震・津波への防災・減災対策が推進されている。巨大地震を事前に予測し、対象エリアに注意喚起を行っているのが、富士防災警備の地震予測情報サービス「S-CAST(エスキャスト)」だ。18年6月〜19年5月の地震該当率※は約95%を誇るという。
同社と複数の大学や研究機関の共同研究により生まれたこのシステムを使えば、大規模地震がいつ・どこで起こるのかを、発生日よりおよそ数日〜10日前に予測することができる。予測した地震に対して、地域別の警戒レベルも通知。地震が発生するまでの期間に、一時避難所や備蓄品の準備、避難行動、インフラ対策など、さまざまな事前対策を施せるため、被害の軽減が期待できる。
※地震予測情報検証に基づき、同社の「S-CAST BCP情報」に対して気象庁が発表した有感地震(暫定値)が予測エリア・予測期間・予測レベルに該当していた場合の年間平均確率(2018年6月〜2019年5月)。
前兆現象を研究することで地震の早期予測が可能に
「S-CAST(エスキャスト)」は、地震発生後のメカニズムを研究する地震学から地震の前兆である電磁気現象を研究する分野である地震電磁気学にアプローチを変更。専門機関や大学との共同研究を行いながら、15年に特許を取得した電離最下層(D層)の擾乱観測と電離層全層(F2・F1・E・D層)を観測する手法を含め、全7種の観測手法を組み合わせることなどによって、地震の前兆現象を観測・解析することが可能になった。
このシステム開発の背景にあるのは、11年に発生した東日本大震災だ。同社は震災発生後、本業である警備サービスを提供する上で数々の想定外に直面し、一時満足なサービスの提供が困難となる局面があったという。その時に「これからの警備サービスには、地震などの災害も想定する必要がある」と痛感。ただ当時は、最先端の技術力を誇る日本でさえ十分な地震予測技術が確立されていなかった。そこで自社での研究開発をスタート。開発当初は精度が低く、地震を予測するという試みそのものに対しても各所より多くの厳しい声が寄せられたが、諦めずに努力や研究を続けた結果、先に挙げた地震該当率約95%を実現。現在、自治体や医療機関、教育機関、企業、ホテル、百貨店など、多種多様な業種業界に必要とされ、ユーザー数は1000を数えるという。
さらなる精度アップと新機能の追加に期待
「災害は忘れたころにやってくる」ではなく、「災害が忘れる間もなくやってくる」という意識が広がりつつある近年の日本。地震だけに限っても、人的・物的被害を伴う大型地震が毎年のように発生しているのは、多くの日本人が認識しているところだろう。その大型地震の発生を阻止することは不可能だが、いつどこで起きるのかという情報を把握し、事前に適切な準備ができていれば、その被害を大幅に軽減することは可能だ。
今後、観測拠点の増設や新たな観測手法を研究していくほか、気象予想情報などを付加することなどにより、さらなる精度の向上を図るという「S-CAST」。同製品のさらなる進化によって、被害をより一層低減することも可能になるだろう。
取材日:2019年7月1日
企業情報
富士防災警備株式会社
警備・防犯・セキュリティーサービスを事業の柱としながら、巨大地震が「何時」「何処で」起こるかという地震発生予測情報を、数日〜10日程度事前に告知する「S-CAST」を開発。地震予測の最も有効な手段とされる「電離層擾乱観測」に重点を置き、7種類の観測手法を組み合わせるとともに、地震専門研究機関や関連大学との協同で地震の前兆現象をモニタリングしている。
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