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エポキシ樹脂を取り除いた再生炭素繊維で「地球環境の改善」と「地場産業への貢献」を推進株式会社サンケンテック

2019.01.31

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株式会社サンケンテックの取締役社長 池下兼明氏

summary

  • 資源リサイクルを通じて地球環境改善に貢献
  • 優れた技術と発想力で再生炭素繊維の可能性を探求
  • 瑞浪市窯業技術研究所と共同研究で製品を開発

株式会社サンケンテックは「環境型社会を目指して、資源リサイクルを通じて地球環境改善に貢献すること」を理念とした、建材開発メーカー。優れた技術と発想力で再生炭素繊維の可能性を探求している。

建設業での長年の実績から、再生炭素繊維に着目

同社の取締役社長 池下兼明氏は現在、79歳。建設業に長い間携わり、その実績と知見をもとに着目するようになったのが、炭素繊維強化プラスチック(以下CFRP)をリサイクルして精製する再生炭素繊維だ。
池下氏が本格的に再生炭素繊維の開発を進めるようになったのは、プラントの建設を請け負ったことによる。プラントで万が一、火災が発生した際、熱による収縮で防火扉の断熱材等が剥がれ落ち延焼する恐れがある。それらを防止するために無収縮の建材の開発依頼があったのだ。

エポキシ樹脂を取り除き、炭素繊維を再生させる

無収縮の建材開発にあたり、池下氏は以前から着目していたCFRPをリサイクルした再生炭素繊維を使った建材の製作を思いついた。そこには「地球環境の改善」と「地場産業への貢献」を推進できるという想いがあった。

同社のある愛知県は、自動車や航空機の製造がさかんな地域だ。製造工程で多種の素材が使用される中、特に航空機の部材にはCFRPが多用されている。CFRPをリサイクル炭素繊維にするにはコストが高いため、CFRPのリサイクル処理が困難で、そのほとんどが埋め立て処分されているのが現状だ。

池下氏は技術者と共にこの製造時に出るCFRPの端材から、独自の技術でエポキシ樹脂を取り除き再生炭素繊維のみ抽出することに成功。抽出した再生炭素繊維は、用途に応じて「炭素繊維タイル」や「炭素繊維シート」等の形に成型する。
製造工程で取り除かれたエポキシ樹脂は気化され無くなるため、廃棄されるエポキシ樹脂を低減することができる。

CFRP端材処理品のエポキシ樹脂を取り除き、加工することで「炭素繊維タイル」と「炭素繊維シート」となる

さらに、瑞浪市窯業技術研究所(岐阜県)と共同研究による美濃焼の技術で、この再生炭素繊維にセラミックを絡ませて複合材を作る試みも行っている。こうして完成させたのが「DANT:炭素繊維断熱タイル」。特長としては、以下の点が挙げられる。
・優れた耐熱性(熱収縮なし、1200℃の耐熱)
・軽量(水に浮く、比重0.42)
・加工も簡単(ノコギリ・カッターで切断可能、施工も簡単)
・環境に配慮(製造時に出る端材を再利用)

「国土交通大臣の認定」取得、さらなる活用が見込まれる

2018年1月、この「DANT;炭素繊維断熱タイル」は「国土交通大臣の認定」を取得した。さらに、プラントの防火扉の収縮による剥がれと無収縮による防火扉のサポートの他にも次のようなシーンで活用が見込まれている。
・飲食店キッチンの伝導過熱による火災を断熱・耐熱することで火災予防
・工業炉における断熱効果と断熱による省エネ、職場環境の改善

こうした事例が示すようにターゲットは、建設メーカーや建材商社、製造メーカーなどから、飲食業界に至るまで多種多様である。

炭素繊維の調音効果を活かし、音響製品の開発をサポート

さらに最近では、再生炭素繊維がオーディオアクセサリーの「ルームチューニングパネル」に採用された。音響・防音設計の専門メーカー株式会社KOTOBUKI(本社:名古屋市)から同社に、再生炭素繊維を使用してルームチューニングパネルの性能を上げることができないかという依頼があったのだ。炭素繊維に調音効果があることを活用して、製品となったのが同社のルームチューニングパネル「音快速極烈」だ。80Hz以下の低周波を調音し、低域を引き締めタイトな音を再現する、最新のルームチューニングパネルとなっている。

再生炭素繊維を使用した、ルームチューニングパネル「音快速極烈」
「音快速極烈」のように、一般消費者向けの製品開発に携わったことは初の試みであり、同社にとってはかつてない大きな飛躍となったようだ

古民家や高速道路に至るまで、その可能性はさらに広がる

また、再生断熱繊維を使用した「炭素繊維シート」は、古民家再生プロジェクトにも取り入れられている。シートを壁や床の内側に貼ることで、景観を損ねることなく、断熱性が低い古民家の温度を保つことができる。CO2排出も防げるため、一石二鳥の効果があるのだ。

さらに大手ガラスメーカーから高速道路の吸音のために、この炭素繊維を使用するための引き合いが同社に来ているという。
大きな受注に繋がれば、廃棄されるCFRPの量も大幅に削減できる。資源リサイクルの観点からも地球環境改善の貢献にますます期待が高まる。

再生炭素繊維はもちろん、プラスチック複合材にも可能性を

「開発することに終わりはない」と同社の池下氏はいう。
現在、ポリプロピレン樹脂(PP)と炭素繊維を合成することで、新たなプラスチック複合材の製造に向けて取り組みを進めている。建材などの工業用途をはじめ、日用品にも展開できるかの実証実験を行っており、実験の結果、強度が増すことがわかった。現在、この開発のために岐阜大学と産学連携を進めることも模索中だ。
プラスチック複合材に関しても再生炭素繊維とともに、同社は一層の可能性を秘めていると捉えている。炭素繊維に関する技術開発における、今後のさらなる展開に期待したい。

取材日:2018年12月19日

企業情報

株式会社サンケンテック

航空機の部材などに使用されるCFRPの製造時にでる端材より、自社独自技術で樹脂を取り除き、炭素繊維のみを取り出して複合材を開発・製造しています。

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