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自前IoT化の成功事例に学ぶ、中小企業のDXの進め方青山幹雄(南山大学 理工学部 ソフトウェア工学科 教授/経済産業省「デジタルトランスフォーメーションに向けた研究会」座長)

<連載第3回>(全4回)

2020.02.27

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デジタルトランスフォーメーション(以下、DX)はこれからの企業の成長の鍵となるもの。中小企業はこのDXをどう実践していけばよいのでしょうか。専門家の青山幹雄氏のお話をもとに、自前でDXを成功させた中小ものづくり企業の事例などを紹介していきます。


自前IoTを使った効率化で増産要求に対応

DXがいかに重要だと言われても、うちの会社には何百万、何千万円もかけてIT投資をする余裕はない……。こう考える中小企業の経営者は少なくないでしょう。しかし、数万円程度の自前IoT化で生産性を大きく向上できるとなれば、試したいという方も多いのではないでしょうか。そんな企業に参考になるのが、愛知県の自動車部品メーカー「旭鉄工株式会社」の事例です。

「同社は、大手取引先から増産を依頼された時、新たに生産ラインを増設するのではなく、データを活かした稼働率の向上で生産性を上げようと考えました。そのためにはより正確なデータを取得する必要があります。そこでこれまで製造ラインの担当者が行っていた生産データ測定を、IoTを活用した自動モニタリングに変更することにしました」

しかし市販のシステムは価格も高く、自社の設備に合うものも見つかりません。同社はセンサやシステムを自ら調達し、自前のIoT化を行うことを決めました。

1万円からの簡易IoT化も可能

同社が自前IoT化に向け、秋葉原でまず購入したのは、一個数千円で購入できる教育用コンピュータ「ラズベリーパイ」と、数十円の光センサ、数百円の磁気センサなどでした。

「ラズベリーパイは、小学生が夏休みの自由工作に使ったりもしているもので、これを簡易IoTに活用しようという動きが世界中で広がっています。同社ではセンサとこのコンピュータを生産設備に連結し、プログラミング学習がてら自分たちでシステムを組んでIoT化に取りかかりました」

最初は一つのラインで、生産数やラインの停止時間を正確に把握することからスタート。その結果をもとに、停止時間を短くし、サイクルタイムも圧縮できるよう対策を行い、成果を他ラインにも広げながら生産数を大きく増加させました。現在ではシステムをさらに拡張し、AIの導入も検討。品質を落とさず納期も大きく短縮しました。

「企業の方にこの話をすると、1万円足らずで簡単にIoT化ができるということに多くの方が驚きます。ごく少額の投資でこうした簡易IoT化を試し、その結果を見てみる。そうした方法も可能なことを知ってほしいと思いますね」

製造業のIoT化の実現をデモするシステム。旭鉄工が自社のIoT化などのノウハウを他社に提供するために立ち上げたiSmartTechnologies株式会社が提供している。

 

農業もDXで付加価値向上

DXが進展しているのは、製造業や販売業、サービス業といった分野に限りません。これまでIT化とは関わりの薄かったとされる農業などの分野でも、データの活用による作物の付加価値向上といった取り組みが進められています。

「紀州有田みかんの栽培を行う和歌山県の『株式会社早和果樹園』は、センサで得た土中の水分量やドローンで撮影した農園の状況などのデータをクラウドで管理・分析。まずは栽培にまつわるさまざまな条件の計測によって糖度の高いみかんをつくる要素を探り当て、高糖度みかんの栽培に役立てるなど多様な取り組みを行っています」

同社では生産から加工、販売まで一貫して行う6次産業化にも注力。長年、後継者難が課題となっている農業分野にあって、若い人材の確保にも成功しています。

青山氏によれば、こうしたDXを中小企業で成功させていくには、いくつかの重要なポイントがあると言います。連載を締めくくる第4回の記事では、そうしたDX成功のポイントと中小企業経営者へのメッセージを紹介します。


連載「事業目標と「三つのポイント」を踏まえたDXで、中小企業もさらなる飛躍を」

第一回 今、デジタルトランスフォーメーション(DX)に、中小企業が取り組むべき理由
第二回 デジタルトランスフォーメーション(DX)を成し遂げるか否かで企業の未来は変わる
第三回 自前IoT化の成功事例に学ぶ、中小企業のDXの進め方
第四回 事業目標と「三つのポイント」を踏まえたDXで、中小企業もさらなる飛躍を


青山幹雄(あおやま・みきお)
南山大学理工学部 ソフトウェア工学科 教授/経済産業省「デジタルトランスフォーメーションに向けた研究会」座長

1980年、岡山大学大学院工学研究科修士課程修了、富士通株式会社入社。分散処理通信ソフトウェアシステムの開発などに従事。86年から2年間の米国イリノイ大学客員研究員を経て、95年より新潟工科大学情報電子工学科教授、2001年より南山大学数理情報学部情報通信学科教授を歴任。博士(工学)。05年よりDXの研究も開始し、09年より現職。18年、経済産業省「デジタルトランスフォーメーションに向けた研究会」座長。

取材日:2019年12月25日

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