BREAKTHROUGH発想を学ぶ

転換期にある我が国の製造業徳増 伸二<連載第2回(全4回)>

2018.04.25

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産業構造を一変させる技術のブレークスルー

前回の記事では、「Connected Industries」の内容について解説しました。繰り返しになりますが、「Connected Industries」とは、業種や企業、人、データ、機械などがつながることにより新たな付加価値が創出される産業社会であり、我が国が目指すべきと考える産業の姿です。また、この「Connected Industries」の取組を通じて、付加価値創出や生産性向上に加えて、我が国が直面している高齢化や人手不足、エネルギー制約など、多様な社会課題の解決も図っていくことが期待されます。

私は製造業を担当していますが、我が国の製造業のGDPは、1997年に記録した約114兆円をピークにここ数年は約2割程度減少しています。減少幅を業種別に見ると、最も大きいのが「電気機械」。一方、「輸送用機械」や「一般機械」は、ほぼ同額で推移しています。この背景には、「電気機械」が最も早くデジタル化の波の影響を受けた業種であることが関係していると考えています。製品そのもの、さらにはそのビジネスモデルにおいてもデジタルの影響が最初に顕在化したのが「電気機械」であり、我が国企業群はこれに上手く対応できずGDPを減少させてしまったのではないか、そうした変化の波が今日あらゆる業種に及びつつあり、有効な対策を早急に打つ必要があると考えています。

このように我が国の経済の屋台骨と言える製造業も大きな転換点を迎えていると言えると思いますが、その背景として、今いったい何が起こっているのでしょうか。そのポイントは「技術のブレークスルー」と「製造業のバリューチェーンの変化」にあると考えます。「技術のブレークスルー」は、主に下記の3つによってもたらされています。

1)処理性能の向上
  ハードウェアの性能は指数関数的に進化。
2)データ量の増加
  上記に伴い世界のデータ量は2年ごとに倍増。
3)AIの非連続的進化
  ディープラーニング等によりAI技術が非連続的に発展。

これらにより、IoTやビッグデータ、AI、ロボット等を様々な場面で活用できるようになりました。それに伴い、これまで実現不可能と思われていた社会が実現可能となり、産業構造のみならず、就業構造も劇的に変化する可能性が出てきています。

データ利活用を通じた「ソリューション」が今後の付加価値創出の鍵に

下記の図は、「製造業のバリューチェーン」を「製造現場・ハードウェア」「ソリューション」「IT基盤・ソフトウェア」の3層に分類したものです。欧米企業も含め、今後の競争の主戦場であり、利益の源泉となるのは「ソリューション」層であると認識しています。モノだけでは、なかなか付加価値を得ることが難しくなっており、顧客の課題解決につながる「ソリューション」を如何に提供できるかが価値獲得の鍵です。その際、「製造現場・ハードウェア」層が主導して「IT基盤・ソフトウェア」層と組みながらもあるでしょうし、その逆もあると考えます。いずれにせよ、「予知保全」や「遠隔保守」「多品種少量化」などの「ソリューション」をいち早く創り出し、「ソリューション」層でポジショニングを確保することが鍵を握ります。

また、新しい「ソリューション」を生み出す基盤のひとつが生産プロセスなどのデータです。当省(経済産業省)が2016年12月に実施した調査では、製造現場で何らかのデータを収集している割合が前年の40.6%から66.6%に飛躍的に増加しており、関心の高まりが明らかになりました。他方、収集したデータを活用した「見える化」や「トレーサビリティ管理」等への活用は殆ど増えておらず、「可能であれば実施したい」方々が大幅に増加しています。データを取るところまではきたが、その後のデータの具体的な活用方法について悩んでいる中小企業等が相当数いることがわかりました。今後は、具体的なデータの利活用の推進に向けて、先進事例の共有や、活用方法に関するハンズオン支援が重要となると考えます。

データの利活用を主導する部門についても課題があります。現状では製造部門が45%である一方、経営者・経営戦略部門は30%です。データの利活用が現場主導のボトムアップである場合、生産現場の合理化などには有効ですが、ビジネスモデル変革などによる新たな付加価値の創出にはなかなかつながりません。やはり、データの利活用を通じた付加価値創出を進めるには、経営者・経営戦略部門主導でデータ利活用を行う割合がもっと増加する必要があると考えます。

さらに、人材不足も大きな課題として顕在化してきています。当省の調査によると、人材確保について約8割が課題として認識し、約2割がビジネスにも影響が出ているとしています。また、人材確保対策としては、現在は定年延長等によるベテラン人材の活用が主ですが、今後についてはロボット導入やIT・IoT等の活用に取り組みたいとの回答が最多です。今日、我が国の製造業は、デジタル革新を特徴とする第四次産業革命と深刻な人材不足という大きな環境変化の中、「付加価値の創出・最大化」と「人手不足が進む中での現場力の維持・強化」という2つの困難な課題に直面していますが、この2つの課題に対してIT、IoT、AIやロボット等の先進ツールの利活用が鍵を握っていると言えます。

次回は、中小企業における「Connected Industries」の具体例について解説します。

<連載第2回・完>


徳増 伸二(とくます・しんじ)
経済産業省 製造産業局 参事官(デジタル化・産業システム担当)(併)ものづくり政策審議室長

1994年経済産業省入省後、米国留学等を経て、大学連携推進課、研究開発課、NEDO出向、産技国際室長、産総研室長など、主に産業技術関連の部署を数多く経験。2016年7月に製造産業局参事官(デジタル化・産業システム担当)・(併)ものづくり政策審議室長に着任。
早大理工卒・同大学院修士、ハーバード大ケネディスクール行政修士、MITスローンスクール経営修士、東工大大学院社会理工博士、博士(学術)

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