BREAKTHROUGH発想を学ぶ

レトロフィットへの取り組み ダイキン工業の事例に学ぶ~レトロフィットのススメ~施 鋒・池田 裕史<連載第2回(全2回)>

2018.07.26

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左から施氏・池田氏

他メーカーに先駆けていち早く「レトロフィット」の概念に着目し、事業化に成功したダイキン工業。その取り組みについて、前回に引続き、ダイキン工業サービス本部事業戦略担当課長の施 鋒(フェン・シー)氏、企画部営業企画グループの池田 裕史氏にお話を伺いました。
※部署・役職等は、取材当時のものです。


メンテナンスの現場から、お客様ファーストで考える

ダイキン工業の既設ビル用マルチエアコンシステム向け「レトロフィットシステム」は、従来の空調機器更新に伴う高いコストや、空調停止に伴う顧客事業への影響を回避し、圧縮機と制御基盤という主要部品を交換することで、快適性・省エネ・長寿命化を実現することを前回にお話いたしました。今回は、当社がなぜ、そしてどのように「レトロフィットシステム」の事業化に至ったのかを中心にお話いたします。

当社がマルチエアコンのレトロフィット事業を始めるきっかけは、圧縮機と制御基盤を最新技術に交換することで、より長い期間安心して使っていただく、それがお客様のためになるはずだという、メンテナンス現場を担当するサービス部門(当時、池田氏が在籍)からの発想です。お客様のためには、エアコン更新も手段の一つですが、エアコン専業メーカーである当社ならではの新しい事業の柱として、新製品を開発するだけでなく、既存の製品性能をアップし、長く使っていただく事業が可能なのではないか、と考えるようになったのです。

2014年、当社経営トップが、多様化する市場・顧客ニーズに柔軟に対応しモノからコトへ、サービスソリューション事業拡大の大きな方針を打ち出していた事も発案のベースになっています。

ただし、レトロフィットの事業化は一筋縄ではいきませんでした。社内の設計・製造・販売・営業の各部門からは否定的な反応が多くありました。営業現場から「空調の更新が遅れてしまう」「それでは新製品が売れない」「事業として採算の取れる売上高の確保が難しい」などの意見です。そもそも、マルチエアコンは一度世に出したらレベルアップはできないものと考えられてきました。よって、誰もできると思っていなかったのです。また、コンセプト・方針が固まってからも、開発現場から「開発リソースが足りない」「既設の機器の品質・信頼性の担保ができない」など、当然のことですが新事業成立に向けてシビアな意見が数多く出されました。発想のもとになったサービス部門の現場においても、「これは良いね」という反応と、「お客様が求めているのは省エネだけではない」という反応に分かれていました。

しかし、我々は既に世に出ている製品の多さに着目したのです。製品に付加価値をつけることで、他社より優位に立てる。つまり、「レトロフィット」は大きなビジネスチャンスなのです。その思いから、プロジェクトリーダーとして挑戦を続けました。

さまざま課題がありましたが、ひとつひとつ解決策を考え、何とか社内を説得し、スタートできることになりました。実際にレトロフィットサービスをはじめてみると、利用されたお客様に大変ご満足いただける結果となり、やはりこの選択は間違っていなかったとの確信を得ることができました。

「レトロフィット」という新しいビジネスモデルを発想できたのは、専業メーカーであること、また、メーカーである自社の中にサービス体制も含まれており、現場の声から様々な課題を吸い上げることができたからだと思っています。

「レトロフィット」への挑戦と可能性

他のメーカーが手を出さない分野にあえて挑んだからこそ「レトロフィットシステム」の成功があったのだと思います。私たちの会社の自慢は、人がよくて人間味があるところ。役員であっても偉そうにしておらず、自分の意見が言える自由な気風があります。

ただ、そんな当社も部門ごとの壁はそれなりにあります。つくる人、売る人、据えつける人、直す人、お互いが何をやっているか意外と知りません。何かのきっかけですべての組織を横軸でつなぐことができれば、もっといい環境になると考えていました。技術はもちろん大事ですが、大切なのはお客様。そこからの発想がなければ、何も進化しない。とは言え、主体業務がある中で、余剰部分で新しい取り組みをやることは難しい。チャレンジする余裕を持てるかどうか、ということも重要です。それがないと目先のことだけに集中してしまいます。

中小企業にも、現場の発想を生かした取り組みとしてのレトロフィットには、大きな可能性があると思います。製品は省エネなどの性能面も大事ですが、耐久性や使いやすさ、メンテナンスのしやすさ、といった点も重要です。エアコン新設の市場が飽和状態にある中で、既設機器に新たな付加価値を付けていくことで生まれた当社の「レトロフィットシステム」のように、既存製品にどういう更なる価値を提供できるかが大きなポイントだと思います。

私たちは、商品そのものの売り方を変えていく段階に来ています。お客様へソリューションを提供することで関係性を確立していく必要があります。「レトロフィット」を含め、様々な価値を提供することで、お客様にダイキンのファンになっていただき、次の購買へ繋げていきたいのです。

ダイキン工業が空調業界に「レトロフィット」という新たな価値、文化を創出することができました。より多くの企業に「レトロフィット」の概念が広がり、「レトロフィット」をキーワードに新たな事業に取り組もうとする企業が増えてくることを期待しています。

<連載第2回・完>


連載

第一回 ダイキン工業の「レトロフィットシステム」~レトロフィットのススメ~

第二回 レトロフィットへの取り組み ダイキン工業の事例に学ぶ~レトロフィットのススメ~


ダイキン工業株式会社

日本の大阪府に本社を置き、世界五大陸38ヶ国に拠点を持つ空調機、化学製品の世界的メーカー。「速さ」、「確かさ」、「親切さ」をモットーに全国を網羅するメーカーサービスの一貫体制で、ユーザーへワンストップサービスを提供。さらに保守、メンテナンス、省エネソリューション等様々なソリューションサービスも提供している。

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