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産学連携では、大学と企業の双方が信じあえることがベスト宇山 浩<連載第3回(全4回)>

2018.12.25

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中小企業にとって大学との産学連携は、技術・開発面においても大きなメリットがある。宇山教授の研究室においても、様々な企業から技術・開発支援の依頼が舞い込んでくるようだ。また宇山教授自身も民間企業に在籍した経歴があり、企業側の視点を持ち合わせたうえで研究を進められる、極めてまれな存在だ。そうした経歴をふまえて、今回のテーマは、「『バイオプラスチック』を例に、産学連携で得られるもの」について伺った。


産学連携の意義や展望について

産学連携は若い時からずっとやらせてもらっています。大学の立場から言えば、様々な分野の方々とお話できるので非常におもしろいですね。製品に関する色々なことを教えていただけるため非常に勉強になります。
また「この技術を使わせてほしい」と依頼してくる方もいれば、「こんなふうに、あの技術をうちの製品に使えない?」と提案してくる方もいらっしゃいます。企業の担当者の方が私の研究に興味を持って、アプローチしてきてくれますので本当にうれしいことですね。メーカーさんとの連携は、難しい面もありますが非常にやりがいを感じています。また化学メーカーとの産学連携よりは、別の分野のメーカーと連携した方が、互いの技術や知見を補い合って、シナジー効果が生まれるのではと思います。

大学側にとっても企業側にとっても、産学連携には大きなメリットがある。お互いに補い合い、切磋琢磨することで新しいものづくりが生まれていくだろう。また産学連携の場合、大手から中小企業までその企業規模は様々ではあるが、宇山教授にとって中小企業との産学連携はどんな印象だろうか。

中小企業との産学連携の具体例とは

産学連携ですが、大企業の場合は、現場の担当者さんの意向がそのまま通らないことがあったり、企業側の事情で途中で終わってしまったり、といったことも少なくありません。私はどちらかと言えば中小企業さんとの方がやりやすいですね。特に中小企業さんの場合は、決定権のある社長と直接やりとりできることが多いので展開もスピーディに行えると思います。
これまでにも中小企業さんと数々の産学連携を行ってきました。建築用合成樹脂メーカーの水谷ペイントさんとの産学連携は、私の研究内容と企業側が開発したい製品がうまく合致したケースだと思います。
水谷ペイントさんとは、植物油脂を使った屋根用塗料樹脂を共同開発しています。5年かけて開発を進めて「バイオマスR-Si」という環境配慮型塗料として販売しました。それまでの製品より強度が増したうえ、屋根との接着力が高まって、紫外線からの劣化も抑えられるメリットがあり、発売以来お陰様で好評をいただいています。
水谷ペイントさんの専務さんが、大学の先輩だったのです。同窓会でお会いした際、私の研究内容に、大変興味を持っていただいて産学連携が決まりました。

「バイオマスR-Si」が使用された工場の屋根

大学と企業側の特性を組み合わせて開発された環境配慮型塗料「バイオマスR」は、産学連携での製品開発の好例といえる。それでは、宇山教授にとっての産学連携の理想形とはどのようなものだろう。

大学と企業、産学連携の理想形とは

理想形といわれると少し大げさかもしれませんが、やはり大学と企業の双方が信じあえることがベストだと思います。一方的に研究者が教えたり、指導する、という立場ではうまくいかないと思います。私もビジネスのことを熟知しているわけではないし、大資本による技術をもっているわけでもないですから。企業がつくろうとする大規模な技術開発も事情を教えてもらえば、自分の持っている知見や技術でサポートできます。補い合えることが大事ですし、本当にお互いがリスペクトできる夫婦関係のよう関係がベストではないでしょうか。
中小企業の場合は社長さんとの信頼関係や、社長さんの力量も大きいですね。それと社長さんとは別に事業を牽引していく力のある方が企業の中にいるかどうかも重要ですね。大学と企業同士とのマッチングではありますが、最終的には人と人とのつながりだと感じています。

取材日:2018年11月5日

<連載第3回・完>

 

連載

プラスチックが現在の化学工業をつくったといっても過言ではない

新しいプラスチックで、何をアウトプットすべきかを明確にすることが大事

産学連携では、大学と企業の双方が信じあえることがベスト

「オープン・イノベーション」の概念でプラスチック代替のアイディアを


宇山 浩(うやま・ひろし)

1962年 神戸市生まれ。京都大学工学部卒。同大学院大学大学院工学研究科修了。花王株式会社の研究員を経て、88年東北大学工学部助手となる。97年に京都大学大学院に移り、工学部工学研究科助手、2000年工学研究科助教授となる。2004年より大阪大学大学院工学研究科応用化学専攻教授。高分子材料化学の専門家として、中小企業をはじめとする様々な企業と研究・開発を進めている。

<受賞歴>
・高分子学会 Polymer Journal 論文賞(平成7年)
「Dispersion Polymerization of N-Vinylformamide in Polar Media. Preparation of Monodisperse Hydrophilic Polymer Particles」
・日本化学会 進歩賞(平成9年)
「酵素触媒を用いる新しい高分子合成反応の開拓」
・日本農芸化学会 農芸化学研究企画賞(平成17年)
「再生可能な植物資源を基盤とする新規グリーンポリマーの開発」
・第8回バイオビジネスコンペJAPAN 最優秀賞(平成20年)
「安価なバイオマス原料からのポリ乳酸系新材料の開発」
・高分子学会 平成29年度三菱化学賞(平成29年)
「植物油脂を用いた機能性高分子材料の開発」

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