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「レトロフィット」は中小企業のビジネスチャンス! ~レトロフィットのススメ~谷口 裕一<連載第2回(全2回)>

2018.07.12

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第1回は、「日本人の使い捨て文化への警鐘」、「レトロフィットとサステナブル技術の関係」などについて話をお聞きしました。今回は、「レトロフィットのメリットや課題」、「レトロフィット関連の製品事例」などについて、お話いただきます。


「レトロフィット」のメリット

「レトロフィット」は、機器の重要部分のみを高性能化し、省エネ性能を高めます。ここでは、平成28年に省エネ大賞を受賞したダイキン工業株式会社の空調機器を例に、「レトロフィット」のメリットについて話したいと思います。ダイキン工業の空調用室外機機器の場合(下図参照)は、耐用期間の途中で、圧縮機と制御基板のみを従来よりも高性能な物に交換することで、空調機の省エネ性能を15%向上できます。また、室外機全体を新製品と交換するより、コストも激減。さらに、工事期間も1日以下と短くて済みますので、休日に工事を実施することで、ビル等の平日業務への支障も心配する必要がありません。もちろん、廃棄物の量も1/3に減り環境に優しいといえるでしょう。単なる部品交換と違い、より高性能な機器として再生できます。省エネルギーセンターは省エネの観点から、このような「レトロフィット」の普及に力を入れています。

「レトロフィット」の課題

しかし、「レトロフィット」の普及にはまだまだ課題があります。メーカー(設備生産者)と使用者の利害が相反することです。メーカー側には、新製品を買っていただき利益を出したい。「レトロフィット」技術により高性能化、延命化を行えば、しばらく製品が売れなくなるという懸念があっても当然でしょう。一方使用者にとって、低コスト、短工期で高性能化、延命化が享受できるというメリットは大きな魅力です。この乖離が「レトロフィット」普及の大きな課題といえるでしょう。「レトロフィット」でも、メーカーにも使用者にもメリットのあるビジネスモデルの確立。つまり、メーカーは懸念していた売上も減少することなく、使用者に納得の上で、引き続き自社製品を使用していただける努力が必要です。
また、設備や機器のサイズでレトロフィットの適用の容易さが異なってきます。たとえば、飛行機などの大規模な設備やシステムは、構成部位間の取り合い・すり合わせ等により、「レトロフィット」の導入が難しいでしょう。また、小形の家電品などの場合、修理するより新たに購入した方が安上がり。従って「レトロフィット」に相応しい製品は中規模程度の設備や機器といえます。

「レトロフィット」は中小企業のビジネスチャンス!

前述のように、「レトロフィット」は中規模程度の設備や製品に適しており、また部品の更新や追加というビジネスです。この点から、当該設備・機械本来のメーカーだけでなく、中小企業の皆さんにとっても参入のチャンスの大きい領域です。既に工作機械や機械要素、機能性塗料等の分野で、いくつかの中小企業の皆さんが「レトロフィット事業」を展開し、ビジネスチャンスを広げています。

すでに「レトロフィット」ビジネスが展開されている分野の製品等を以下の表にまとめてみました。

「効果の見える化」が「レトロフィット」の普及を更に加速

当センターでは、以前からレトロフィットによる省エネ効果の見える化を検討しています。企業が設備投資をする場合、事業への貢献性や投資回収性、省エネ性、既存部品の廃棄容易性、設置作業工期の事業への障害性など、多くの観点から有用性を検討します。我々も、レトロフィット効果の見える化を検討するに当たり、省エネ性に主眼を置いた有用性指標を試作し、いくつかのレトロフィット事例に関して評価してみました。下図はその1例を示したものです。例えば工作機械の場合、設備全体の更新よりレトロフィットの方が省エネ視点の有用性が非常に高い、即ち、省エネの観点から工作機械全体を更新することは難しいことが分かります。また、工作機械と工業炉のレトロフィットを比較した場合、工業炉(外壁の遮熱塗装)の方が有用性が高く、同じ投資金額による二酸化炭素の削減量も7倍と大きくなります。

このように、レトロフィットの有用性を「見える化」することで、企業の的確な投資活動に貢献できると考えています。 一般のものづくり分野においても、省エネと同様にレトロフィットの有用性や効果を具体的に「見える化」することで、レトロフィット企業の効果的な訴求手段になるとともに、導入企業にとっても的確な投資判断の材料になります。「見える化」がレトロフィットの普及を更に加速するものと考えます。

最後に、「レトロフィット」は、私たち省エネルギーセンターが進めるCO2削減の取り組みに効果的なばかりでなく、産業界全体の有効な「ものづくり手段」です。今後ますますレトロフィットが多くの産業分野に普及することを確信しています。

<連載第2回・完>

 

○本連載における「レトロフィット」について
「レトロフィット」の概念には、広義には「オーバーホール」や「修繕・修理」、「マイナーチェンジ」までが含まれますが、本連載では、「レトロフィット」を以下のように定義し取り扱っています。

<定義>
老朽化などで古くなった機械類の一部を交換、または新しく追加することで、従来の性能を超えたり、新しい機能が付加されること


連載

第一回 ビニール傘の使い捨て これでいいのか? 日本人! ~レトロフィットのススメ~

第二回 「レトロフィット」は中小企業のビジネスチャンス! ~レトロフィットのススメ~


谷口裕一(たにぐち・ひろかず)
一般財団法人 省エネルギーセンター
常務理事 工学博士

大学では、金属物性を専攻。特に、金属中の溶質原子の拡散の挙動を計算機によりシミュレートし、物性との関係を明確にした。(1981年卒)
その後、鉄鋼メーカーに勤務。転炉や連続鋳造設備など製鋼プロセスの開発、自動車用高強度鋼板の新商品開発および製造設備の材質からの設計を担当。本社部門では、研究企画を担当し、鉄による自動車の軽量化ボディーの国際プロジェクトに参画し、次世代の車体構造を検討した。
平成22年より省エネルギーセンターに勤務、政策立案の支援、事業者の省エネ指導、省エネツールの開発などを行い、現在に至る

<省エネルギーセンターとは>
工場やビルの省エネに関する診断やアドバイス、省エネ情報の発信、省エネ人材育成の支援他、省エネに関する幅広い活動を通じて、社会に貢献する専門家集団です。
詳細はホームページhttps://www.eccj.or.jp/index.htmlでご確認いただけます。

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