BREAKTHROUGH連載インタビュー

新価値を生むための秘訣は「オープンな議論」田中 芳夫 <連載第4回(全4回)>

2017.09.28

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新価値を生むための秘訣は「オープンな議論」

日本では、会社や大学で中心となる人が目的を作るというわけではなくて、何かをやっているうちに目標ができあがり、動き出す傾向が強く感じます。今後中小企業は大企業みたいな発想の取り組み方ではイノベーションが難しくなってくるのではないでしょうか?

そもそも、さまざまな立場の人たちがアイデアを持ち寄って何かを生み出すことが、既存の企業にとって難しいことになっているように感じます。私が関わっている「ものこと双発学会」「ものこと双発協議会」でも、起業の垣根を取り除いた議論ができることを目的としています。

日本の企業はオープンな場で議論することを嫌う傾向にあり、他分野の企業が集う場に参加したいと思っても、幹部の誰かが反対して不参加となってしまうことが少なくありません。これを防ぐために、「ものこと双発学会」「ものこと双発協議会」では、企業トップの理解がある企業の方に、トップの指示で参加してもらうことにしています。

学問でも集合知という言い方をしていて、ネット上では一つの課題を置き、世界中から解決するための情報を集めるといったやり方もあります。そのような時代なのにトップダウンだけの方法で課題解決に取り組み、結果的に取り残されしまったという事例は最近でもよくあります。

例えば、持ち込んだ企業にとっては当たり前の事例を紹介したつもりでも、異分野の会員が聞くと、まったく異なる製品やサービスのアイデアを構想する場合があります。お互いに、新たな事業や社会システムを生み出す起点になる可能性があります。

ここで問題となるのが、直近の技術開発や事業に必要な取り組みに追われている中で、他のことに時間を割けるのかということです。しかし、「ものこと双発学会」は月に1回で、集まっているのは2時間です。そこから生まれてくる今後のアイデアや、得た刺激の方が、目のも前の仕事に戻った時にも良い影響を与えると思います。それは場所を変えても同じだと思います。

そのような話を講演会で聞いて、一緒に何かをやらせてくれないかとすぐに話しかけてくれた中小企業の代表の方がいらっしゃいました。その時は研究開発をやっていたトップの方が、すぐに東京へ転勤してきて2年間共に色々と取り組みました。今では、2年毎に新しい人と入れ替わります。オープンイノベーションや外で学んだことなど、社内教育ではできないものを浸透させるために外部の機関を使うシステムが出来上がっているのです。

それは人材教育のオープンイノベーション化ともいえます。

中小企業はそういった面でもフットワークが軽いのが、アドバンテージになります。
その利点を生かしつつ、もう一つの利点であるコンパクトにまとまった会社毎の技術をくっつけていけば、それが広がりを見せて産業構造が変わってきます。

縦や横の繋がりや業種毎でなくて、これからは仕組み毎に繋がっていく構造を作っていかなければいけません。新価値創造展は、多種多様な中小企業が参加していて、オープンイノベーションを実践するのに適した多くの機会があります。また、そのような発想が現実に生まれる場所として、新価値創造展を活用し、目指す目標によって、共同する会社を選択するためのオープンな議論を生んでいく機会としてください。

 

<連載第4回・完>

 

田中 芳夫(たなか・よしお)

東京理科大学大学院イノベーション研究科教授
青山学院大学大学院ビジネス法務客員教授
(独)産業技術総合研究所参与

1973年東京理科大学工学部電気工学科卒業。同年、住友重機械工業(株)に入社し、Online system設計などのシステム開発に従事。1980年に日本IBMの研究開発製造部門に入社。世界向けの製品・サービス・ソフトウエアの開発、マネージメント、および 副社長補佐。1998年にIBM Corporation R&D Aisi Pacific Technical Operation担当。2001年、研究開発部門 企画・事業開発担当理事。2005年、マイクロソフトCTO就任。2007年、(独)産業技術総合研究所参与、青山学院大学大学院ビジネス法務客員教授。 2009年、東京理科大学大学院教授。 現在、国際大学GLOCOM 上席客員研究員、日本工学アカデミー会員。

◇主な著書 
『MOT歴史の検証 (共著)』(丸善) 2008

田中 芳夫(2017)/ 「産業構造は「製品別」から「社会システム別」に」、
『日経ビジネス ONLINE 』、2017年5月25日
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/interview/15/274502/051000024/

連載

第一回 生き残る企業の明暗を分ける「考え方」

第二回 「下請け」思考を捨てたときに起こる9つの劇的な変化

第三回 新価値を創った企業から読み解く「チーム性」

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