BreakThrough 企業インタビュー

パンを瞬時に識別するAIレジを開発。がん研究への応用にも期待大株式会社ブレイン

<連載第1回>(全2回)

2019.12.12

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日本の未来を考える時、少子高齢化や労働力人口の減少といった現実が暗い影を落とします。そこで必ずキーワードとなるのが「生産性向上」です。人員を増やすことができないなら、やり方を工夫して1人が担える業務量をアップさせる。この生産性向上をパン屋において実現する製品「BakeryScan」を開発したのが株式会社ブレインです。同社はいかにこの製品や技術にたどり着いたのか──。代表取締役社長の神戸壽氏に伺った話を2回に分けてお届けします。


トレイに並べたパンをAIが自動で識別

人気のパン屋の中には行列を伴うほどの店もあり、その大きな要因となっているのが煩雑なレジ業務です。パン屋のレジ担当は、パンの種類を正しく見分け、一つ一つレジに入力して精算を行い、さらに包装なども行う必要があります。

同社が開発した「BakeryScan」は、トレイに乗っているパンの種類をAIが瞬時に見分け、その合計金額を表示するシステムです。精算もセルフ式レジで行われるため、レジ担当は基本的に包装に注力でき、AIの識別に間違いがないかを確認するだけで済みます。

「100種類ほどのパンの種類を覚えるのには、早い人でも1ヶ月、遅い人だと3ヶ月かかるそうです。この労力を省力化できたのは非常に大きい。誰でも即日使うことができるわけです。しかも、自ら学習して精度を向上させるAIの機能も加えました」

「BakeryScan」を使えば、パンの識別、金額計算、精算といったレジ業務を簡素化できる

利用店・利用客に加え、GoogleのAI担当者も称賛

2013年3月にリリースされるやいなやその反響は大きく、各種メディアでも取り上げられたほか、17年にはあのGoogleのAI担当者が「日本にスゴイAIレジがある!」と同製品に関してツイート。また、グッドデザイン賞2015の「第6回ものづくり日本大賞」優秀賞受賞なども併せた話題性に加え、実際に利用した店や利用客からの好意的な声などが広がり、19年8月時点で600台ほどと順調に導入実績を伸ばしています。

「しかも、この技術を応用したいというお声がけも各方面からいただいております。すでに実用化が始まっているのが、神社やお寺にある200種類以上のお守りの画像識別、工業技術分野の1500万枚ほどの画像データを分類・解析するという調査研究への技術協力、また1万種ほどの薬の中からスキャンした薬が何かを識別する機器も数年前から販売しています」

技術をがん細胞識別に応用。医学会からの注目も集まる

加えて今同社が力を入れているのが、がん細胞を発見する技術の開発です。同製品をテレビで知ったルイ・パストゥール医学研究センター(京都府)から17年に声がかかりました。

「現在がん細胞発見に使われている技術の多くが、同じAIでもディープラーニングの方なんです。ただディープラーニングには膨大なデータが必要な上、10%程度の誤診があったり、その結果に導かれた根拠がわからなかったりといった欠点があります。その点、弊社製品の画像識別技術は、まずそれほど多くのデータを必要としませんし、個体差などを見極める技術なので、少なくとも診断の根拠ははっきり提示できる。しかも学習能力も備わっているため、どんどん精度が高まるわけです」

18年に学会で発表し、医学界デビューを果たすと、すぐに国際学会へのオファーも届きました。肝心のがん識別精度は、すでに一部のがんであればほぼ100%の識別が可能になり、これから他の種類のがん識別への挑戦が始まるといいます。人類の長年の宿敵と言えるがんの驚異を最小化したのは、ある日本企業が開発したパン屋のレジシステムがきっかけだった──。そんな未来が訪れる日も近いかもしれません。

ただ、今に至るまでの道のりは決して平坦ではありませんでした。次回は、同社がどのようにして新価値「BakeryScan」にたどり着いたのかを具体的に掘り下げていきます。


連載「リスクを取った人だけが、本当の自由を勝ち得る」

第一回 パンを瞬時に識別するAIレジを開発。がん研究への応用にも期待大
第二回 リスクを取った人だけが、本当の自由を勝ち得る


企業情報

株式会社ブレイン

代表取締役社長・神戸 壽(かんべ・ひさし)

繊維産業が盛んな兵庫県西脇市で、1982年にPCショップとして創業。その後、熟語変換ソフトやNHKの文字情報表示システムの開発、繊維の画像識別の技術開発などを行うなかで、コンピューターシステムの研究開発が事業の柱に。2013年に「BakeryScan」を開発し、この技術を応用したさまざまなソリューションを展開中。

取材日:2019年11月15日

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