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日本は「ゲノム医療」先進国になれるか。政府が課題とりまとめに着手

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2016.06.20

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政府の健康・医療戦略推進本部の作業部会は、ゲノム(全遺伝情報)を医療に適用する上での検討課題を今夏にも取りまとめる。改正個人情報保護法によるゲノム情報の取り扱いのほか、ゲノム医療における質の確保などについての課題や方策などを盛り込む方針。これらの課題を整理し、ゲノム医療の推進や健康関連産業の育成を支援する。

作業部会では具体的には、改正個人情報保護法におけるゲノム情報の取り扱いとして、個人情報の一部である「個人識別符号」との関係を議論する。また、遺伝子関連検査の品質・精度の確保などについても、作業部会の有識者から出た発言を反映する。さらに、ゲノム情報に基づく差別の防止のほか、データ管理と二次利用などについても意見交換した上でとりまとめる方針。

同作業部会は、ゲノム医療の推進にあたり、特に重点的な課題について検討することを目的に、2015年11月に設置した。厚生労働省が事務局となり、文部科学省や経済産業省などと連携して検討を進めている。

ゲノム医療は、既にがんなどで実用化が進められている。ただ、医師を介さずに検体を採取して行う遺伝子検査ビジネスも始まるなど、新たな課題も浮上しており、対策が求められている。

国立がん研、ゲノム医療の研究組織

国立がん研究センターは10日、全遺伝情報(ゲノム)の解析結果に基づく「ゲノム医療」を推進する組織「ゲノム医療推進本部」を設置したと発表した。遺伝子の異常を診断し患者に合った治療法を選択する研究や、ゲノム解析結果を創薬に生かす研究など、既存の研究プロジェクトを同本部の下で連携させる。センター一丸となりゲノム医療への取り組みを強化する。

同日、都内で会見した同センターの中釜斉理事長は「ゲノム医療の実現に向けた医療拠点のネットワーク作りも、同推進本部が主導して進めたい」と語った。

中釜理事長は4月1日付で就任した。会見では「がん専門の研究所と病院の両方を持つ強みを生かし、人材育成や国際連携についても強化していきたい」と説明。中でも「ゲノム情報に基づく、個々人に最適化された医療提供体制の整備は重点課題の一つ」と強調した。

経産省は「スマートセルインダストリー」戦略

経済産業省は、微生物や動植物から繊維や医薬品材料など高機能物質を生産させる新たなバイオ産業の振興戦略を策定する。生物の機能をデザインし、正確に発現させて細胞から有益な物質を大量に取り出す姿を「スマートセルインダストリー」と名付け、産業として成立、発展するか整理する。30日に開く産業構造審議会(経産相の諮問機関)バイオ小委員会で議論を開始。7、8月をめどに中間整理をまとめ、振興戦略の一部を2017年度予算の概算要求に盛り込む方針だ。

経産省がバイオ産業の概念定義から始めた本格的な産業戦略を策定するのは、ここ10年程度なかった。10―15年程度の期間で産業像を設定し、今後の政策展開の基礎認識とする。「スマートセルインダストリー」は、技術的にはまず、遺伝子などに対し、ITやAI(人工知能)を活用して生物の特定の機能をデザイン。さらに全遺伝情報(ゲノム)編集や代謝制御により、その機能が発現するよう制御。生物が化学合成では作れない高機能物質を大量に作れるようにする姿と定義した。

すでに製薬企業による抗体医薬品(バイオ医薬品)やスパイバー(山形県鶴岡市)が製品化した高機能な人工合成クモ糸は、生物細胞を活用している。

戦略では、生物による生産が新たな生産方式として成立すると、既存の方式に比べてどんな点に強みと弱みがあるか、どのような産業や製品の領域で活用されるかを予測。その上で日本の産業界として注力する点や競争力を引き出すために必要な方策をまとめる。

生物による高機能品の世界市場は、アミノ酸や抗生物質、酵素を中心に13年に約2兆5000億円に達している。

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