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二酸化炭素を回収して、どのように有効活用すべきかの仕組みづくりが重要瀬名波 出<連載第1回(全4回)>

2019.02.07

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地球温暖化に伴う「二酸化炭素(以下CO2)削減」の取り組みは、世界的な課題となっている。排出量が問題視される中、沖縄県ではCO2を資源として有効活用する「炭素回生システム」の実施と研究が行われている。
今回の有識者インタビューでは、この炭素回生システムの一環として「CO2溶解装置を用いた海藻(海ブドウ等)の養殖実証事業」を推進するキーマンにご登場いただいた。琉球大学工学部工学科エネルギー環境工学コース専攻の瀬名波 出教授がその人だ。
沖縄で生まれ育ち、学び、研究を推進する同氏に、「海洋バイオマス利用によるCO2削減と炭素回生システム」の研究を中心に、全4回にわたってお話を伺った。


第一回目の今回は、「再生エネルギーとしてのCO2の有効活用」について。さらに「CO2溶解海装置を用いた海藻の養殖実証事業」に至るまでの経緯を語っていただいた。

CO2の位置づけと有効活用ついて

現在、世界的にもCO2が地球温暖化の原因となる「温暖化ガス」として認定され、それにともない様々な経済的な仕組みが構築されています。私個人としては、CO2が地球温暖化にどれだけの影響を及ぼしているかは、懐疑的な部分があります。しかし今さら「CO2を排出しても構わない」という社会には戻らないのではないでしょうか。10年程前から「CO2削減」がより大きく社会的な課題として取り扱われているのが事実です。
そうであれは、CO2排出をどのように防止するか、排出されたCO2を回収してどのように有効活用すべきかの仕組みづくりがますます重要になってくると思います。

CO2削減に関して一番効率的なのは、火力発電所等の大型プラントから発生する排ガスからCO2を回収することです。実は日本国内のCO2排出量の約半分が火力発電所の排ガスから排出されています。
例えば国内でCO2を5~10%削減しようとする場合、多くの自動車から排出され拡散しているCO2を回収しようとすると無理があります。火力発電所がたくさん排出しているのであれば、そこから一気に回収し処理することがCO2削減に最も効果的なのです。
沖縄電力から排出されるCO2がすべて回収できれば、それだけで沖縄県のCO2は50%削減にされることになります。また排ガス中のCO2は、空気中のものと比較すると400倍程の濃度があります。逆に言えば、空気中からCO2を回収しようとすると、400倍の労力がかわるわけです。
資源やエネルギーの観点からすると、物質の量が集中するほど価値があると考えます。CO2自体は悪者でも何でもなく、集中して一つにまとめれば資源としての価値が出てくるのです。CO2は産業利用されていますし、CO2を使用したい業界にとっては再生資源として安く手に入ればうれしいことです。

地球温暖化に関する「CO2削減」に関しては、どのメディアでも大きく取り上げている。しかし排出量の約半分が火力発電所からということは伝えられているだろうか。そして、その排出量の大もとからCO2を回収するのであれば確かに効率的な回収方法だ。
ではこの回収されたCO2が、「炭素回生システム」として「CO2溶解装置を用いた海藻の養殖実証事業」に至るまで、どのような経緯があったのだろう。その前段として、まず沖縄のものづくりの現状について伺った。

「持続可能な社会」のために、沖縄でものづくりを

海藻の養殖実証事業を手掛ける前から、沖縄県に新しい産業を起こしたいという想いがありました。沖縄では琉球大学の工学部の学生が400名、そして沖縄県内の工業高校合わせると年間2,000名以上の工学分野の学生が卒業します。しかし沖縄県は、産業構造として第三次産業が強く、第二次産業である「ものづくり」では弱いところがありました。島である以上、ものづくりをする場合は資源を仕入れなければいけない、つくったものを島外に輸送しなければならない。このため非常にコストがかかり、沖縄自体はあまりものづくりに適していないのです。

沖縄県の産業は、他県と比較して第二次産業の割合が低く、第三次産業の割合が高い
(出典:沖縄県ホームページより)

工学部や工業高校で学んだ学生の半分以上が沖縄県に残りたいと望んでも、エンジニアとしての就職は難しい。また、就職のお願いを県内の企業にしても、企業側も雇用の増大が難しいのです。こうした状況をふまえて新しい工学で第二次産業を作っていかなければ、という考えに至りました。島でメーカーをつくるのは難しいのが実情です。そこで「どうすればいいのだろう?」となった時に、沖縄という島に適した第二次産業をつくる必要があると考えたのです。
沖縄県は、亜熱帯気候であり、周りに大きな海という資源があることが端的に特徴として挙げられます。そして沖縄県民が求めるのは、新たに産業ができても沖縄の自然環境を壊さない、持続可能な社会の形成です。
10年程前から様々な研究者や他分野の方々と議論したり、相談に乗ったりしてもらいました。そして彼らの意見もくみ取りながら色々と考えた結果、結論に達しました。それは持続可能な社会のためには、CO2を資源として有効活用する「炭素回生システム」が沖縄に最も適していることです。次回ではその詳しい内容と、CO2溶解装置を用いた海藻の養殖実証事業についてお話いたします。

取材日:2018年12月18日

<連載第1回・完>

 

連載

第一回 二酸化炭素を回収して、どのように有効活用すべきかの仕組みづくりが重要

第二回 循環型社会の実現のため、海藻養殖でイノベーションを

第三回 IoT化とAI導入を進めれば、海藻が一番良いコンディションで養殖できる

第四回 様々なことにトライしていくと、「これだ!」といえるものと出会えるはず


瀬名波 出(せなは・いずる)

1967年沖縄県生まれ。1991年琉球大学工学部エネルギー機械工学科卒。1993年同大学大学院工学研究科機械工学専攻修了後、同大学工学部助手に採用。2001年名古屋大学大学院工学研究科工学博士取得。2006年琉球大学工学部准教授、2018年琉球大学工学部教授に就任。2009年から海洋バイオマスを利用したCO2削減・利活用研究に着手。広く学外の研究機関と協働して、沖縄の産業にも貢献できるよう、海ブドウやモズク等といった海藻の早期育成の研究を推進している。

<受賞歴>
・社会貢献賞受賞(2009年)
・工学部貢献者賞受賞(2010年)
・国際学会(IMPRES2010)ベストポスターアワード賞受賞(2010年)
・ロッキーチャレンジ賞受賞(2013年)

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