PICK UP

石灰石からできる「LIMEX(ライメックス)」は紙やプラスチックの代替となる新素材。水と森を守り、石油資源の使用量削減に貢献する株式会社TBM

2018.12.27

SHARE
  • facebook
  • twitter

石灰石(LIMESTONE)のLIMEに、無限の可能性を意味するXをつけて命名された

学ぶべきポイント

  • 石灰石というありふれた石から、紙とプラスチック、両方の代替となる新素材を開発
  • 製造自体に環境への負荷が少なく、なおかつ、リサイクルも可能
  • さらに、価値を高めていくアップサイクルを推進

株式会社TBMが開発した新素材「LIMEX(ライメックス)」は、原料の約6割が石灰石だ。石灰石は、世界のいたるところで多量に埋蔵されている、いわばありふれた石。石灰石なら、日本でも100%自給自足ができる。
この「LIMEX」から、紙とプラスチックシートの代替となりうる「LIMEXシート」を、さらに、プラスチックの代替となりうる「LIMEXペレット」を作ることができる。

開発のきっかけは、2008年、同社代表の山﨑敦義氏が、台湾の「ストーンペーパー」を知ったことにさかのぼる。当時はエコが注目され始めた時期で、石灰石からできたというストーンペーパーに山﨑氏は注目、日本への輸入を始めた。日本の企業は、そのコンセプトに興味を示したが、残念ながら、品質面で問題があった。
そこで山崎氏は、合成紙研究の第一人者である角祐一郎氏に相談。角氏を中心に2010年から、独自製法で石灰石から紙代替物を作る研究を始めた。角氏は現在、同社会長である。
その後数年にわたる研究開発の末「LIMEX」が誕生し、2014年には基本特許が日本で登録された。現在、世界の40カ国以上で基本特許を出願し、そのうち30カ国以上で登録されている。

紙の代替品となる「LIMEXシート」は、「LIMEX」から水をほとんど使わずに作成できることが大きな特長だ。従来の紙は木材パルプを原料とするため、その洗浄に大量の水を必要とする。通常、普通紙を1トン作るために必要な水は約100トンといわれる。
だが、「LIMEXシート」は木材パルプをいっさい使用しない。そのため、洗浄などの必要がなく、水を使わないのだ。水資源が豊富な日本ではあまり注目されないが、世界的には、環境に与える最大のリスクは水危機とされる。そのうえ、2030年には、全世界の紙の消費量が今の2倍になるとの予測もある。「LIMEXシート」は、こうした水危機や森林問題の解決の糸口となると期待されている。

また「LIMEXシート」は、従来の紙と同様に軽くて、印刷適性が高いうえ、安価だ。「LIMEXシート」製の名刺は、すでに2400社以上で採用されている。さらに、高い耐水性を持つため、浴室や水回り、屋外、水中でも利用できる。スポーツイベントなどに用いられる横断幕を「LIMEXシート」で作り、使用後はリサイクルに回す動きも始まっている。

紙の代替品となる「LIMEXシート」。名刺などに使われる(中央に置かれているのは原料となる石灰石)

もう一方、「LIMEXペレット」はプラスチックの代替となりうる性質を持つ。真空成形や射出成形など多くのプラスチック成形方法に対応できるため、今後、多彩な製品が生まれることが期待される。
「LIMEX」は約6割が石灰石と、残り約4割が石油由来のポリオレフィン樹脂とでできており、石灰石を利用する分、石油資源の使用量削減につながる。昨今、石油価格の上昇がみられるが、石灰石は安価で供給量も多いため、安定的に低コストで供給できる。

「LIMEXペレット」から様々なプラスチックの代替品が生まれる(中央に置かれているのは原料となる石灰石)

「LIMEX」は、シンプルで容易にリサイクルできることも大きな特長だ。「LIMEX」でできた製品を粉々に砕き、それを固めると、また新たな「LIMEX」ができるイメージだ。
また、石灰石は無機質であるため、リサイクルなどで劣化しづらく、リサイクルを繰り返しても、「LIMEX」の物性が落ちにくい。こうしたことから、半永久的にリサイクルを続けられると同社ではアピールしている。

物性が劣化しにくいため、「LIMEX」はリサイクルによって価値の高いものに変えていくアップサイクルも可能だ。
たとえば、「LIMEX」製の名刺を異動などで処分する際に、供給元であるTBMが回収。それらを粉々に砕き、固めれば、「LIMEXペレット」を作ることができる。その後は、たとえば「LIMEX」製のスマートフォンケースなどに作り変える。
また、「LIMEXシート」のメニュー表を導入しているレストランなどで、メニューの改定時期に古いメニュー表を回収し、「LIMEX」製の皿に作り替えることもできるのだ。

現在、企業向けの製品については回収の道筋が見えているが、将来的には、国や地方自治体と協力して、一般消費者からも「LIMEX」を回収できるように働きかけたいという。プラスチック容器やペットボトルのように、「LIMEX」にも独自のリサイクルマークが割り当てられ、そのマークを見て各家庭が分別し、回収できるような未来を目標としている。

また、「LIMEX」の原料であるポリオレフィン樹脂を、バイオ由来で生分解性のある原料に変えていき、「生分解性LIMEX」を作る研究を行っている。 現在は、コンポストにて生分解が可能な「生分解性LIMEX」を開発中で、使い捨てのごみ袋やレジ袋などの製品化を急いでいる。2019年春には上市する予定だ。
また中長期的には、現在世界中で課題となっている、海洋におけるマイクロプラスチックなどの問題に貢献すべく、土壌や海洋中でも 生分解する「生分解性 LIMEX」 の開発を目指すと言う。

現状、「LIMEX」は宮城県白石市の第一工場で製造しており、年間6000トンの製造能力を持っている。また、宮城県多賀城市に量産を目的とした第二工場を建設中で、2020年夏の竣工を予定している。第二工場では年間3万トンの生産体制を確立し、品質のグレードアップとさらなるコストダウンを目指す。

将来的には、世界各国、特に水が貴重とされる地域で工場を作りたいと考えている。原料の石灰石は世界中どこにでもあるので、現地調達が可能だ。そのような「自国で作り、利用した製品を現地で回収し、再資源化する地産地消の循環型イノベーション」という構想に、水資源は少なく、石灰石が豊富にあるサウジアラビアなどが関心を寄せている。

「LIMEX」は、水や森を守り、石油資源の使用量の削減にも大きく貢献する。株式会社TBMは未来を見据えて研究を進め、広報活動を行ってきた。今後は販売を強化し、導入実績の向上を目指すという。日本発の新素材が、世界の環境問題解決の大きな手立てとなるべく、新たな一歩を踏み出そうとしている。「LIMEX」のこれからに注目していきたい。

取材日:2018年12月11日


株式会社TBM

平成23年8月に創業。独自製法で「LIMEX」を開発しました。紙・プラスチックシートの代替品である「LIMEXシート」と、プラスチック代替品である「LIMEXペレット」で、世界の環境負荷低減を推進しています。次代を担うNEXTユニコーンとしても注目を集める新進気鋭の企業です。

SNSでシェアしよう

関連記事