BreakThrough 発想を学ぶ

中小企業と大学が連携し合って、Win-Winの関係になることが理想玉城 絵美/早稲田大学准教授

<連載第4回(全4回)>

2019.04.25

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玉城 絵美氏へのインタビューの第4回目。輝かしい経歴を持つ同氏だが、事業を行っていく上での難しさ、気づかなかった面もあるという。その面に触れながら、ものづくりにおいて今後、どのようなアイディア・発想が求められるのかなどを伺った。そして最後は中小企業の皆様に向けてのメッセージをいただいた。


使用する際のルールづくりが不可欠となる

研究開発したものを社会に落とし込む時に、使用する際の「ルールづくり」のための研究は必ず必要で、それは、少しだけ苦労する部分ですね。「インターフェース」に身体の動きを入出力し、それを複数人数で共有することを「Body Sharing」と呼んでいます。「Body Sharing」によって、例えば今、このオフィスにいる社員全員が「今からみんなでハワイに行く」といったことが可能なります。

これは楽しい反面、非常に危険な部分もはらんでいるのです。このオフィスに社員が在室しているのに、外から侵入者が入ってきても、「意識が移動している」ため、実際に身体があるオフィスへの侵入者に誰も気づかないという恐れがあります。
こういった危険を規制するための法律をつくって整備しなければなりません。ルールを作って、このルールに従えば社会的に問題なく使えることをアナウンスする必要があります。新たな分野で、今までに存在しないから、自分達でつくり上げないといけないのです。

「BodySharing」とはキャラクターの身体、ロボットの身体や人の身体と、ユーザの様々な感覚を相互共有すること

自身が開発をはじめた頃は、「病室にいながら外に出られること」を可能にするインターフェースづくりに専念していた。そのため使用するためのルールを自分が手掛けることは想定外だったようだ。また、玉城氏は医療や福祉分野における製品開発に対しても思うことがあるという。

医療や福祉分野を市場としてどう捉えているのか

Kinectという身体の動きをとらえる装置があって、リハビリなどにも、非常に活用されています。この装置は医療や福祉の分野で普及していますが、そもそもはダンスのゲームに使われて人気が出たのです。こうした経緯は、結果的には効率的な手法とも言えます。それは、医療分野でリハビリ装置として開発して発売や普及に向けて進めるよりも、一回他の分野で市場に展開し、多くの方に様々なシーンで使ってもらい、普及していくと、「この装置は、リハビリのためにも使えるかもしれない」と多くの方が考えるようになるからです。一般に普及させて、安全性などに関するデータも整ってから医療や介護の分野を視野に入れた方が、量産関係も整っていますし効率的です。
また、現在の金融構造として、マーケットに見合った投資システムがまだできていないということが感じられます。医療や福祉の製品開発は、実現するまでに結構時間がかかるのですが、現在の投資の考え方では、何年以内に回収する、など回収時期の設定がすごく速いのです。それゆえ、現在、医療や福祉分野に本格的に参入していく機器の開発はなかなか難しいのではないか、と思われます。

ポゼストハンドやアンリミテッドハンドで、「病室にいる方が外の世界を体験できれば」という玉城氏の想いは変わらない。医療福祉分野での活用はもちろんだが、さらに、人間のライフスタイルや在り方の変化に深く関わるツールと言えるかもしれない。
最後は、ものづくりにおいて今後、どのようなアイディア・発想が求められるのか、について。そして中小企業の皆様に向けてのメッセージも玉城氏からいただいた。

世界の市場を意識したアイディアや発想を

昔よりも、現在は製品開発したものが世の中に出やすくなっています。Webサイトの広告とかインターネット販売のおかげで、会社がローカルなところにありながら、戦うエリアにいきなり海外が入ってくるみたいな状況にもなっていますね。今はテレワークで遠隔地ともすぐにやりとりできます。自分たちも外に出やすい反面、海外の方たちも自分たちの地域やローカルなエリアにも入りやすくなっている。ですので、もう少し世界の市場を意識したアイディアとか開発や発想が今後、求められていくのではと思います。弊社の開発製品に関しては、手ごろな価格で使いやすい「アンリミテッドハンド」がおかげで、世界中で展開されています。

中小企業の皆様に対するメッセージ

もっと大学を利用してほしいですね。ただ大学と連携するには、すぐに思い通りの展開になると考えないほうがよいでしょう。その研究が製品開発の応用に使えるかどうかは研究者も企業側もわからない段階がありますので。何人かの大学の先生にあたって情報交換してみるのがよいかと思います。
また大学側も企業と連携することはメリットがあります。大学の研究者としては、知見を周知するという役割がありますので、自分の研究が社会的にどのように需要があるかの情報を得られることはすごくありがたいですね。また社会にどの程度寄与したのか?を実際のビジネスをされている方からフィードバックいただけると、研究論文を書く時などに説明しやすいです。「こういう理由があって自分はこのような研究しているのだ」と。意義を決定づけてくれることに大きなメリットがあります。中小企業と大学が互いに連携し合って、Win-Winの関係になることが理想ですね。

取材日:2019年3月14日

<連載第4回・完>

 

連載

第一回 「部屋にいながら外に出ること」を実現するため、新たなインターフェースを開発することに

第二回 ポゼストハンドは、医療や福祉をはじめ、様々な分野に活用できるインターフェース

第三回 クラウドファンディングを活用することは、効率のいいマーケティングといえる

第四回 中小企業と大学が連携し合って、Win-Winの関係になることが理想


玉城 絵美(たまき・えみ)

1984年沖縄県生まれ。2006年琉球大学工学部情報工学科卒。2008年筑波大学大学院システム情報工学研究科修士課程修了。2009年東京大学エッジキャピタル(UTEC)にてシーズ探索インターン。2010年 Disney Research Pittsburghにて研究に従事する。
2011年コンピュータが人間に手の動作を制御する装置「ポゼストハンド」を発表、多数の学会で注目を浴びる。「ポゼストハンド」は、米国のCNNやABCで報道され,『Time』誌が選ぶ50の発明に選出される。同年,東京大学大学院にて博士号取得。「東京大学総長賞」受賞と同時に総代をつとめる。
研究用装置を研究者に提供し消費者へ共有するため,2012年にH2L株式会社を創業。2013年 早稲田大学に移籍し,研究活動も継続。2015年 KickStarterにて世界初触感型ゲームコントローラ「アンリミテッドハンド」を発表し22時間で目標達成。さらに同年 「日経ウーマン ウーマンオブザイヤー準大賞」受賞。2016年 「WIRED Audi Innovation Award 2016」、「日経ビジネス 次代をつくる100人」、「科学技術・学術政策研究所 (NISTEP) ナイスステップな研究者(科学技術への顕著)賞」受賞。同年から内閣府 総合科学技術・イノベーション会議、科学技術イノベーション政策推進専門調査会にて第5期科学技術基本計画の総合戦略に関する委員を務める.2017年 外務省 WINDS(女性の理系キャリア促進のためのイニシアティブ)大使に任命される。2019年現在は、早稲田大学理工学術院准教授を務めている。

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