BreakThrough 企業インタビュー

課題に寄り添うことで新たな価値が見えてくるユニバーサル・サウンドデザイン株式会社

<連載第2回>(全2回)

2019.09.26

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聞く側ではなく話す側から難聴者をサポートするコミュニケーション支援スピーカー「comuoon」(コミューン)。しかし、いくら素晴らしい製品を作っても、その価値を世に知らせることができなければ、真価を発揮することはできません。連載第2回は、発売から6年弱という短期間で、いかにして「comuoon」という新たな価値を社会に広めたのか、その手法などについて掘り下げていきます。


課題とニーズが拾える現場との連携で機能を拡充

「comuoon」は試作機の段階から、多数の医療機関や介護施設、NPOや市民団体などに貸出を行い、現場の意見をもとに改善を重ねてきました。移動しながらも使えたらという要望により、バッテリー内蔵のモバイルタイプも開発。2019年10月には、有線化で価格を下げた普及版も発売する予定です。

「課題とニーズは現場にあり、利用者の方と一緒に動いていかなければ見えてきません。課題の当事者である難聴の方も開発パートナーであり、こちらはその要望を試作や検証を積み重ねることで形にしていく。みなさんに『次の製品を企画したいんです』と言うと、喜んで協力してくれます」

近年では、聴覚のリハビリに「comuoon」を使うなど、新たな活用法も広がっています。

「聞こえた音を脳で処理するという機能は、日々活用することで能力を維持することが期待できます。一方で難聴を放置してコミュニケーションの頻度が減ると、脳が萎縮し認知症のリスクファクターになることが海外の研究で明らかになりました。そのような事態に陥らないよう、難聴の入所者の方に『comuoon』を使ってカルタに挑戦してもらい、楽しみながら聴覚のケアに取り組む介護施設さんも出てきています」

ただし、聴覚ケアが必要な人を見つけるのは簡単ではありません。耳が不自由なことを知られたくないと考える難聴者も少なくないからです。

「そこで東京都産業技術研究センターと協力し、ゲーム感覚で言葉の聞き取り能力を調べられるアプリ(=写真)を開発しました。これを使えば、誰にどのような聴覚ケアが必要なのかがわかるわけです。こちらも2019年11月にリリースできるよう準備を進めています」

製品よりその製品が解決する課題の方を啓発

現在は医療・介護施設はもちろん、市役所などの公共施設や銀行の窓口、検察庁などでも活用されている「comuoon」。前例のない製品ながらこれだけ普及が進んだのは、「聞こえの壁」がもたらす課題について、中石氏自身が熱心に発信を重ねてきたことも大きいでしょう。

「自社製品を導入してほしいと考えると、どうしてもその製品の説明から入ってしまいがちです。ただ特に前例のない製品の場合、課題の存在に気づいてもらうことの方が大切。課題を可視化し、浸透させることで、なぜその製品が必要なのかの理解が深まります。ここには時間や労力をかけるべきです。目に見えない『聞こえ』の問題は、特に一般の方に理解されにくい側面があります。当社はこの課題に気づいてもらうためにNPO団体と協力し『ヒアリングハラスメントゼロ推進プロジェクト』を推進。著名な映画監督にもご協力いただき、理解していただくための映像作品も制作しています」

「comuoon」の試作品完成以降は、テレビなどに取り上げられる機会も増加。大学の研究者から話を聞きたいと連絡をもらったり、研究や製品について講演を依頼されたりすることも増えました。そのような場では、相手に合わせて最適なアピール方法を検討。講演などの場合は、当日になっても自分より先に登壇した講演者に対する観客からの反応を見て、プレゼン内容をアレンジしていくといいます。

「私は、プレゼンテーションはライブのようなものだと考えています。求められてもいない製品の説明を一方的に繰り返したって誰にも響かない。それよりも目の前のオーディエンスが何を求めているかを探り、いかに楽しんでもらうかが重要だと思います」

そうした場で何か一つでも相手の脳裏に残るような話ができれば、一緒に研究したいという人や、相談に乗ってほしいという人が現れ、協力者の輪が広がっていく。この協力者の輪は、類似品が現れたときに差別化を図るためのエビデンスという面でも有効です。このため中石氏は、「小さい頃苦手だった」というコミュニケーションについても積極的に学び、伝える力を身に着けていきました。

 

製品を必要とする人と一緒に作り上げる

「comuoon」のような新たな価値を生み出すため、社会課題への気づきを得るにはどのようなことを心がけておくべきでしょうか。

「月並みですが、何事にも興味を持ち、さまざまな知識を身に着けておくことは必要だと思います。一つのことを深堀りすることも重要ですが、色んなことに知識を広げておくと、それらが紐づく時がある。これが未知の課題や新たな価値の発見につながります」

最後に自社の製品を広く世に広げていきたいと考える中小企業へのアドバイスを伺うと、次のように答えてくれました。

「単に『商売をしたい』というだけでは難しいと思います。想定顧客の購買力を考えて売れそうな製品をつくるという考え方もあるけれど、“買える”と“買いたい”は違う。買い手が買いたいと思う価値あるものを適正価格で出していくことが重要です。そのためにはまず世の中にどんな課題があるかを洞察する必要がある。社会課題を解決するためなら未来のお客さんたちも皆協力してくれますから、その方たちと一緒に本当に必要なモノを作り上げる『ホンモノ作り』のスタンスが大切だと思います」


連載「課題に寄り添うことで新たな価値が見えてくる」

第一回 「聞こえ」という社会課題の新たな解決法を提案
第二回 課題に寄り添うことで新たな価値が見えてくる


企業情報

ユニバーサル・サウンドデザイン株式会社

代表取締役社長・中石真一路(なかいし・しんいちろう)

熊本YMCA専門学校建築科卒業後、建築施工管理に従事した後、デジタルハリウッド大学を経て、webディレクターやプロジェクトマネージャーなどとして大手企業Webサイトの立ち上げなどに携わってきた中石真一路氏が、2012年に実父とともに設立。話す側から聞こえの支援ができる対話支援スピーカー「comuoon」の開発・製造・販売をメインに、「聞こえ」の課題解決につながる多様な事業を展開する。

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