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農地とエネルギーを未来につなぐ「mSeソーラーシェアリング」有限会社エムエスイー

2019.04.23

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太陽光を農業と発電で分け合う、「ソーラーシェアリング」。有限会社エムエスイーでは、モデル農場などで、そのノウハウを磨いてきた

学ぶべきポイント

  • 「農家の収益性の向上」と「エネルギー・環境問題」を同時に解決。次世代農業のあり方を提案
  • 数年に渡る実証実験にてノウハウを開発し、その有益性を確認している

日本の農業にとって、「担い手不足」は深刻な問題だ。平成30年の農業就業人口は175.3万人。平成22年対比で、▲85.3万人と減少を続けている。175.3万人のうちの約68%(120万人)が65歳以上の高齢者であることから、今後、高齢の農業者がリタイアすると、この傾向はますます進むことが予想される。

その背景にあるのが、「農業では食べていけない」という不安だ。気候などの影響を受けやすく、生産性、収益性が不安定な農業で、生計を立てていけるのかということは、他に安定した収入源がない限り、ほとんどの新規就農者が感じる悩みである。そのため、農家であったとしても、農業を継がずに外に働きに出る後継者は多い。

そこで、注目されているのが、農地の上部空間に、太陽光パネルを設置し、その下で農作物を栽培する「ソーラーシェアリング」という考えだ。太陽光を「分け合う(=シェアリング)」ことで、農業と発電を同時に行う。これにより、売電収入を得たり、自家消費によって農業収益自体を向上させたりすることが期待できる。

「ソーラーシェアリング」の発案者は、CHO研究所所長の長島彬氏だとされる。長島氏は、一定の強さ以上の太陽光は、植物の光合成量にほとんど貢献していないという「光飽和点」の特性を踏まえ、農産物生産を基本としつつ、剰余の太陽光で発電を行うソーラーシェアリングの技術を開発して公開している。
有限会社エムエスイーでは、2014年ごろから、長島氏の研究グループの一員として、技術ノウハウの研究を行ってきた。エネルギー問題に関心の高かった同社代表の前野静夫氏が、長島氏に出会ったことが事業着手のきっかけとなった。

農作物を育てながら、太陽光発電を行うためには、パネル設置の仕方に工夫がいる。パネルとパネルの間に空間があり、遮蔽率が30%以下であれば、農作物の生育に影響を与えないとされ、作物の種類によっては、むしろ収穫量が多くなるものもあるという。農業従事者からは、「影があることで、炎天下の日差しが妨げられて作業がラクになった」という声も寄せられている。発電した電気を自家消費すれば、井戸水の汲み取りや機械の充電などに使えるほか、冷暖房設備やトイレ、冷蔵庫の設置など、労働環境の改善にも役立てられる。

パネルを載せる架台は、建築の足場用資材などとしても使用される単管パイプをクランプ材で組んだ簡易な構造になっていて、その分、初期費用を抑えることに成功した。また、長島彬氏の開発した時間によってパネルの角度を東から西に変えることで、太陽を追いかける「自動太陽追従装置スマートターン」を利用し、発電効率を約15%アップすることができたという。もともと同社は、制御盤製造やケーブルアッセンブル事業を主力としているが、このシステムにも、同社の制御技術が活かされている。

影ができるため、炎天下での農作業も負担が減らせる

2015年4月からは、千葉市内の耕作放棄地を購入して合計50kwの太陽光発電装置を設置し、モデル農地として、実証実験を行っている。現在は、農作業専任の社員の手で、有機農法にて作物を育て、見学も随時受け付けている。耐用年数は20年以上を見込んでいるが、経年変化などは確認中だという。

「ソーラーシェアリングを普及させるためには、初期費用を抑えることが重要」と前野氏は語る。また、個人経営の農家で取り掛かる場合には、300坪程度の農地に、50kW未満の小規模太陽光発電で導入することを勧めている。この規模なら、売電契約の際に、「低圧系統連系」となり、申請が比較的容易で、契約や配線工事などにかかる費用の個人負担を抑えることができるという。

300坪規模の農地なら、管理がしやすく、兼業などにも向いているという

再生可能エネルギーで発電した電気は、2012年に開始された「再生可能エネルギーの固定価格買取制度(FIT制度)」により、電気会社が、一定期間、固定価格で買い取ることになっているが、買い取り価格は年々低下しているため、最近は、単に「売電で収益を得たい」というよりも、「再生可能エネルギーを利用することで、環境やエネルギーの問題に、できる限り取り組みたい」と考える人たちの関心が高まっているという。

事現場や災害時の避難休憩場所としての使用を想定し、冷蔵庫、クーラー、シャワー、水洗トイレも完備した「ソーラー移動ハウス」なども提案。この技術やノウハウが進歩すれば、「電気が通っていない場所でも、電気を使用できる環境が作れるのではないか」と前野氏
太陽光パネルを、ハウスの壁面に設置している例。発電した電力は、冷房などの設備にも使用できる

現在、日本の食料自給率は生産額ベースで65%、エネルギー自給率はわずか7%ほどとされていて、他の先進諸国と比べても低い水準となっている。
「このシステムにより、耕作放棄地を、農地として有効に活かせるようになり、エネルギー問題にも貢献できれば嬉しい」と前野氏は語る。同社が直接施工できる地域は、千葉、東京などに限定しているが、これまで培ったノウハウを、他の企業などに提供することで、省エネや食料生産の問題を共有できる輪を広げていきたいとしている。

取材日:2019年2月14日

 

企業情報

有限会社エムエスイー

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