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生体膜表面を模倣した材料「MPCポリマー」で機械と人との機能的融合を実現するインテリジェント・サーフェス株式会社

2018.09.11

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同社が入居する東大柏ベンチャープラザの玄関にて。代表取締役の切通義弘氏

学ぶべきポイント

  • MPCポリマーの技術開発に注力し、案件に合わせてその構造をカスタマイズ
  • 医療機器に活用することで、健康寿命の延伸に寄与
  • 医療機器での用途を基本に、工業用途にまで活用の領域を広げている

生体模倣技術を駆使した機能性材料「MPCポリマー」を開発する東大発のベンチャー企業インテリジェント・サーフェス株式会社は、2016年、東京大学柏キャンパス近くの(独)中小企業基盤整備機構が運用するインキュベーション施設である東大柏ベンチャープラザで設立された。同社は、MPCポリマーにより医療機器や工業製品などの人工的な素材表面を自然で機能的な表面にすることで、人と機械とが、より機能的に融合する社会実現のために、日々、技術開発に励んでいる。代表取締役の切通義弘氏に事業の核となる、革新的バイオインターフェースのMPCポリマーについてお話しを伺った。

生体親和性に優れたMPCポリマーが誕生したのは約40年前。東京医科歯科大学の中林宣男教授(現 名誉教授)らによる基礎研究によるものだった。後々、医療の現場に画期的な革命をもたらすこのMPCポリマーであるが、驚くべきことに1977年に初めて合成された際の年間合成量は1gにも満たない状況だったという。その後、石原一彦助手(現 東京大学教授)の参画により十分な収量が得られる新規合成法が確立され、委託開発制度により研究費を確保した大手企業と共同で研究を進め、MPCポリマーの大量生産が可能になったという経緯がある。

こうして工業生産が可能になったものの、MPCポリマーが医療の世界でより広く浸透するためには、一層の改良が必要だった。従来の方法でMPCポリマーを人工素材の表面にコーティングした場合、強い応力が加わるとポリマーが基材から剥がれる可能性があるからだ。

従来のMPCポリマー処理方法では、強い応力で剥がれる可能性がある

そこで同社は、MPCポリマーの構造を新たに分子設計することで、従来よりも数百倍以上の耐久性があり、吸着性にも長けた独自のMPCポリマーを開発。同社の処理方法であれば、ガラスやチタン・ステンレス・アルミといった基材とも親和性が高いうえ、優れた耐久性と密着性により基材にしっかり固定できるのだ。このように素材表面に合わせた独自のMPCポリマーが開発できるため、用途に応じてフットワーク良く、カスタマイズできること。それが同社の最大の強みといえる。

同社による独自のMPCポリマー処理方法では、基材にしっかり固定できる

MPCポリマーは生体親和性以外にも防汚性、潤滑性、防曇性などの特性があるため、様々な医療機器に応用が可能だ。同社は医療用ハサミやメスなどの一般医療機器から歯列矯正用器材などの管理医療機器に至るまで、様々な医療機器にMPCポリマーを活用するための開発を行っている。現在も製品化に向けて企業と連携しながら着実に歩みを進めている。

また近隣に位置する国立がん研究センター東病院との連携では、医療機器メーカーも加えてある課題を解決する製品の開発を進められている。それは、腹腔鏡手術を行う際、内視鏡レンズの先端が曇ってしまうため時間的ロスや医師の集中力低下につながるという課題だ。レンズが曇るのは、体内の水蒸気や電気メス使用での加熱術部よりオイルミストが発生することが原因だ。そこでレンズ先端の防曇対策として、MPCポリマーを内視鏡レンズにコーティング処理。この防曇対策の効果はブタを検体とした手術実験によって証明されたため、現在は製品化に向けて進んでいる。

未処理レンズの場合はレンズが曇り、手術が滞ってしまう

MPCポリマーを内視鏡レンズに処理した場合、レンズが曇らずに手術が行える

このようにMPCポリマーを医療機器に活用すると、機器がより進化することで医師や医療従事者の作業効率がアップし、患者にとっても手術や治療の負荷が少なくなるといったメリットがある。

医療機器への活用はもちろんだが、MPCポリマーの可能性はまだまだ広がっているようだ。防汚性、超親水、セルフクリーニングの特長を活かしてキッチンやトイレなどの住生活空間への組み込みや、メンテナンス性向上を目的とした食品・飲料製造装置類の配管部分へのコーティングなど、工業用途においても注目が集まっている。
海洋生物養殖場の設備において、フジツボ類の吸着抑制のためにMPCポリマーが活用されるケースもあり、様々な素材にコーティングすることでその効果が発揮されている。

同社のMPCポリマーは、用途に応じてカスタマイズできるメリットがあり、革新的なバイオインターフェースとして無限の潜在能力を秘めている。
そして同社のビジネスモデルは、まず、事業の核となる、分子設計とポリマー合成によるMPCポリマーの技術開発に注力すること。そして原料はサプライヤから購入し、アセットライト(資産の軽量化)に事業を展開すること。さらに医療機器メーカーや工業用途で活用する企業をパートナーとして連携し、販売体制を構築すること、の三つが挙げられる。これらにより同社の事業が広く展開される仕組みだ。

また営業的な側面で言えば、展示会での企業とのマッチングの他、出資元であるリアルテックファンドを通しての問い合わせが多いという。直接やり取りをしている企業も現在、40~50社あり、事業の成長が期待される。
従来のMPCポリマーを独自に処理することで新たな用途を見出したように、同社はこれからも大手企業や医療機関などと連携しながら「研究開発型企業」として独自の新たなる道を歩んでいくだろう。

取材日:2018年8月23日

 

企業情報

インテリジェント・サーフェス株式会社

生体親和性に優れたMPCポリマーによる医療機器表面改質を目的としています。MPCポリマーは元々のタンパク質非吸着性、超親水性、潤滑性以外にも、曇り防止やセルフクリーニング機能を示すことから、汎用製品へも応用の場を広げています。生体に優しい材料を、生活に優しい材料、環境に優しい材料へと展開しています。

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