BreakThrough 発想を学ぶ

オープンイノベーションも生かして、SDGsを成長のきっかけに平本督太郎(金沢工業大学 情報フロンティア学部 経営情報学科 准教授/金沢工業大学 地方創生研究所 SDGs推進センター長)

<連載第4回>(全4回)

2020.02.13

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金沢工業大学SDGs推進センター長である平本督太郎氏に、中小企業のSDGsへの関わり方などについて伺ってきた本連載。最終回となる第4回では、SDGsへの取り組みの一つとしてオープンイノベーションを取り上げます。また中小企業経営者への総括的なアドバイスもいただきました。


◆SDGsとは?
SDGs(Sustainable Development Goals/持続可能な開発目標)は、2015年9月に国連総会で採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」のなかに記載されている、2016年から2030年までの国際目標。持続可能な世界を実現するため、「貧困」「飢餓」「気候変動」「エネルギー」「教育」など17分野の目標=「ゴール」と、17の各分野での詳細な目標を定めた169のターゲットから構成されており、2001年に策定されたミレニアム開発目標(MDGs)の後継として、150を超える加盟国首脳の参加のもとで採択された。2017年7月の国連総会では、各ターゲットの進捗を測定するため232の指標も採択された。

SDGsの17の目標(国連広報センターウェブサイトより)

 

オープンイノベーションで社会課題を解決するには

「社会課題を解決するためには、イノベーションを通じた新たな技術やビジネスモデルの創出がカギ」「自社の技術だけでは足りなければ、イノベーションを『協創』していく発想が必要」。経済産業省が「SDGs経営ガイド」で、そう伝えるとおり、オープンイノベーションは、SDGsが掲げる社会課題の解決に有力な手段となるでしょう。

「ただし、オープンイノベーションはどう進めるかが重要です。取り組むべき分野や地域の特徴をしっかり理解し、市場に即したビジネスモデルをつくり、必要なプレーヤーを揃えることが大切になります」

その「プレーヤー」として平本氏が挙げたのは、新しい技術を保有する「テックホルダー」、新技術を生かせる社会システムを創り、事業を回していく「システムイノベーター」、利用者の立場に立って社会や生活の変化を語りながら技術を広げていく「ストーリーテラー」の三者です。

「あとは市場を見極めて、必要な情報をオープンにしていくこと。新たな市場を育てるフェーズなら技術をどんどん提供して使ってもらい、成熟市場では利益を取るために自社の技術を守るなど、ステージを見極めながら情報を出し分ける必要はあるでしょう」

「SDGsに関わる理由」を明確に

これからもSDGsを羅針盤に、新たな価値創造によって、成長を目指す中小企業は増えていくでしょう。そこで企業のリーダーは、どのような点に留意すべきでしょうか。

「まずはブームに流されないこと。SDGsはきっかけでありツールです。施策を進める上で、自分たちがなぜSDGsに関わるのかを明確にすることが大切でしょう」

その過程では、社員全員で考え、話しあっていくということをぜひ恐れずにやってほしいと力を込めます。

「経営者には、社員の仕事を管理する“マネジメント”よりも、社員を鼓舞しモチベートする“リーダーシップ”が求められます。大きな方向性を示し、従業員が希望を持ってやりたいことを発見・追求できるような場作りができれば、従業員も本気になり、利益が大きく伸びる。これは、私自身が多くの中小企業の経営に関わって強く実感したことですね」

確実に変わる世の中に投資する

日本人がSDGsに対して受け身になりがちだというのは、第1回の記事で指摘した通りです。その大きな理由は、SDGsを設けた際の意思決定の場に、日本人があまり関わっていなかったことだと平本氏は指摘します。

「SDGsは、国連や加盟国の政府だけでなく、企業、学術界の組織、NGOなど多様なステークホルダーの1000万人以上が関わるオープンなプロセスで策定されました。しかし日本の民間からの参加は決して多くありませんでした」

日本では経済成長を内需に頼ってきたことなどから、国際的なルールづくりへの関与が薄く、自国の利益に寄せたルールづくりでアドバンテージを得るのが難しくなっていると平本氏。しかし、企業には「SDGsのさらに次」を目指し、積極的な取り組みを進めてほしいと考えています。

「SDGsへの取り組みは、すぐ利益につながるわけではありません。しかし、『将来の大きな成果につながる』という意味では、今の市場でこれほど確実性が高い分野もない。これから5〜6年間、SDGsにしっかり取り組んでおけば、2025年頃、SDGsの後継目標を立てる議論が始まる時に、状況をしっかり掴んだ上でルールを作る側に回ることができます。中小企業の経営者の方にも、そのような思いを持って、自社と人類社会全体の持続的成長を目指し、確実に変わる世の中に投資をしていってもらえたら嬉しいですね」


連載「オープンイノベーションも生かして、SDGsを成長のきっかけに」

第一回 世界を導くSDGsは、自社を成長させる大きなチャンス
第二回 SDGsの「三つのキーワード」を踏まえ、自社の事業を広く展開
第三回 日本企業の社会課題解決型ビジネスに、SDGsへの取り組みのヒントを見る
第四回 オープンイノベーションも生かして、SDGsを成長のきっかけに


平本督太郎(ひらもと・とくたろう)
金沢工業大学 情報フロンティア学部 経営情報学科 准教授/金沢工業大学 地方創生研究所 SDGs推進センター長

慶応義塾大学大学院政策メディア研究科修士課程、メディアデザイン研究科博士課程修了後、野村総合研究所入社。同研究所の経営コンサルタントとして、貧困等のグローバルイシューを解決するBoPビジネスや、アフリカビジネス推進支援、経営改革支援などに2016年度末まで携わる。BoP Global Network日本代表、BoP Global Network Japan創設者兼代表。08年より宮城大学事業構想学部非常勤講師、12年より明治大学経営学部特別招聘教授を歴任し、16年に本学講師就任。2019年より現職。

◇主な編著書
・『アフリカ進出戦略ハンドブック』(東洋経済新報社/共著)2015年
・『BoPビジネス戦略』(東洋経済新報社/共著)2010年

取材日:2019年11月18日

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