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クラウドサービス「Holoeyes」で広がる医療コミュニケーションHoloeyes株式会社

2019.03.07

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治療に役立てるために。実物の臓器がそこにあるのと同じように体感させる
(画像提供:杉本真樹 Holoeyes Inc.)

summary

  • XR技術で、手術などにおける医療コミュニケーションを革新
  • 医用画像を、もっと利用価値の高いものに

XR技術で変わる外科手術

Virtual Reality(VR=仮想現実)やAugmented Reality(AR=拡張現実)、Mixed Reality(MR=複合現実)などの“XR”技術(VR・AR・MRを総括した技術)と聞くと、ゲームやエンターテイメントなどをイメージする人も多いだろう。Holoeyes株式会社は、このXR技術を用いた医療画像サービス「HoloEyesXR」を提供している。

同社が提供するクラウドサービス「HoloEyesXR」を利用すると、CTやMRI、超音波などで得られた患者の3D画像データを、市販のVRデバイスなどを使って立体的に体感するVRデータに変換することができる。手術などにおける医療コミュニケーションに革新をもたらすサービスとして、今、医療従事者の注目を集めている。

CTやMRIなどで得られたデータを、モニターの中で3D画像として再現して手術を補佐する技術は、10年ほど前から広く使われている。一方で、同社のサービスは、CTやMRI で得られた3D画像データ(STL/OBJ形式)を、インターネットを通じて専用サイトにアップロードすることで、VR体験用のアプリケーションデータに変換するというものだ。

生成されたデータをVRゴーグルで見ると、あたかもそこにあるかのような、奥行きや立体感で、臓器や血管の位置関係を把握することができる。さらに、Microsoft社のHoloLensなどの透過型ホログラムディスプレイを使うと、実空間に3Dモデルを浮かべて閲覧するMixed Reality(MR=複合現実)を表示させることも可能だ。

従来のように、CTやMRIの画像を四角く切り取られたモニターの中で3Dに置き換える方法では、表現できる情報量は限られる。同社のサービスでは、それを、VRで再現できるようにしたことで、誰もが、より簡単に、直感的に、身体の構造や状態を理解することを可能にした。VRゴーグルをつけている顔の動きとデータの動きが連動するため、実際に自分が回り込むことで裏側の画像を見ることもできるし、360度回転させたり、拡大・縮小させたりすることもできる。臓器などのデータを拡大して表示すれば、まるで自分が小さくなって、体の中に入り込んだかのような“没入体験”が可能だ。

画像を大きく表示すれば、身体の中に入り込んだような“没入体験”が得られる
(画像提供:杉本真樹 Holoeyes Inc.)

通常、医師や看護師などは、手術前に、手術方法について検討・計画する「カンファレンス」と呼ばれる会議を行うが、そこでVRを用い、病態や血管の三次元構造などを体感的に把握し、共有しておけば、より安全・確実に手術を進めることができる。また、手術中には、患者の身体に重ねて3Dモデルを投影し、実際の見た目には隠れて見えない臓器や血管などを可視化することによって、手術の負担やミスなどを減らすこともできる。

同時に複数の人が、空間を共有できるという点も特長の一つ。医療チーム間のコミュニケーションの改善やベテランから若手への教育などにも役立つ
(画像提供:杉本真樹 Holoeyes Inc.)
透過型ホログラムディスプレイのゴーグルを使えば、実物に重ねて3Dイメージを表示できる。ゴーグルをつけたまま、手術をすることも可能だ
(画像提供:杉本真樹 Holoeyes Inc.)

手術支援のあり方を探って、たどりついたXR技術

Holoeyes株式会社の創業者である杉本真樹氏は、外科医として臨床現場に立つ一方、医用画像解析や手術支援システム、3Dプリンターによる臓器立体モデルなどの開発を手掛けてきた。
臓器の柔らかさなどの質感をリアルに再現した臓器立体モデルは、手術前のシミュレーションツールなどとして非常に有益だ。ただし、3Dプリンターでのモデルの制作には、コストや時間がかかるなどの課題もあるという。

そこで、臓器立体モデルの制作時にも使用していた「ポリゴンデータ(3Dで立体を表現する際に用いられる、多角形の平面データ)」を、共同創業者であるエンジニアの谷口直嗣氏とともにVR化することに取り組む。臨床実例で有用性を確認し、2016年10月にHoloeyes 株式会社を起業。2018年4月より本格的なサービスの運用を始め、2019年1月末までに、約50施設で導入している。既に、イギリス、アメリカ、シンガポールなどの海外でも導入実績があり、集まったデータをサービスの改良に活かしている。

サービスの基本価格は、1ケース10,000円(税別)。多数のケースを扱いたい場合のパッケージや、月間、年間でフリーに利用できるプランも用意されている。今後は、アップロードしたデータを公開し、他の病院からも閲覧することができるライブラリー機能を追加することも検討しているという。医療機器承認の準備も進めており、これが通れば、より広く普及することも期待される。

医療関係者から、一般の人まで。もっと広がる医療コミュニケーション

また、手術だけではなく、医学生への教育や、医療機器メーカーの営業活動での活用など、周辺分野での活用も始まっている。営業担当者が製品を医師に説明するのにVRを使ってシュミュレーションをして見せれば、新しい製品であっても、視覚的・直感的に理解してもらいやすいという。
「HoloEyesXR」が広まれば、一般の患者が、自分の医療データを自分で閲覧し、病気を発見する時代が来るかもしれない。

現在、CTやMRIで撮影した3D画像データは、時間が経つと削除されている。VRアプリの状態で保管することで、これらの3D画像データの利用価値が高まるだろうと同社は考えている。
今後も、「HoloEyesXR」のような世界中で利用できるサービスを提供することで、医療に貢献していきたいとのことだ。

取材日:2019年1月31日

企業情報

Holoeyes株式会社

VR/MRを用いた医療コミュニケーションを革新する、経産省J-StartUpにも選出された医療ベンチャーです。技術者、医師、ビジネスデザイナーというコアメンバーは、参入障壁の高い医療の内側に入り込み、国内で圧倒的なポジションを確立しました。共に新しい世界を目指すビジネスパートナーを探しています

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