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未熟児の命を救う高頻度人工呼吸器株式会社メトラン

2016.11.28

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新生児小児用人口呼吸器HummingVue

  • 医療機器のほとんどを海外メーカーに依存する日本で、ベトナムからの留学生が画期的な人工呼吸器の開発に挑戦した。

ベトナムからの留学生、日本で人工呼吸器の開発を目指す

株式会社メトランは、1984年に設立された医療機器メーカー。創業者のトラン ゴック フック氏(現代表取締役会長)は、1968年に南ベトナムからの留学生として来日。大学卒業後は日本の医療機器メーカー、泉工医科工業株式会社で研修生として学び、いずれ帰国した時には医療用PVCチューブを製造する会社を立ち上げようと考えていたという。ところが1975年4月のサイゴン陥落によって、フック氏は帰るべき故郷を失ってしまう。

フック氏は熟慮の末、日本に残ることを決意し、泉工医科工業の社員として働き始める。外国人が日本人といっしょに働くことがまだまだ珍しかった時代、日本企業独特の制度や慣習にとまどいながらも、製造現場、開発部門、さらに営業職まで幅広い経験を積んでいく。特に営業として全国の大学や病院を訪れ、多くの医師たちとの間で築いたネットワークは、フック氏にとって大きな財産となった。

「いずれは独立したい」と考えていたフック氏は、日本メーカーが進出していなかった人工呼吸器の開発を思い立つ。関連する論文や参考文献に片っ端から目を通し、呼吸器学について専門知識を深めていった。

トラン ゴック フック 代表取締役会長

アメリカでのコンペティションで最優秀賞を受賞

泉工医科工業を退社し、メトランを起業したフック氏は、「高頻度振動換気(High frequency oscillation)方式」の人工呼吸器の開発をスタートさせる。従来の人工呼吸器は肺の中に強制的に空気を送り込む方式だが、肺機能が十分に育っていないまま生まれた未熟児に使用した場合、命を救うことはできても、様々な障害を残すことがあり、最悪の場合失明するリスクさえあった。高頻度方式では高頻度の気圧振動を発生させ、低い圧力で酸素を肺まで届けることができるため、未熟児の呼吸器系を傷つける心配がない。フック氏は交流のあった医師たちと共同で開発に取り組み、高頻度方式の人工呼吸器「ハミングバード」の実用化に成功する。

1985年、メトランはアメリカ国立衛生研究所(NIH)主催の高頻度人工呼吸器コンペティション「HIFI trial」にハミングバードを出品。北米2000人の新生児を対象とした調査の末、欧米の医療メーカーを退けて、メトランが最優秀賞を受賞。この快挙により、起業して間もないメトランの名前が世界的に知られるようになる。

現在では国内の新生児医療の現場において、メトランの高頻度人工呼吸器がスタンダードとなっている。日本の新生児死亡率は世界トップクラスの低さだが、メトランはそれに大きく貢献していると言える。

高頻度人工呼吸器「ハミングバード」(初代)

本当の治療とは何かを考え、製品開発に活かす

近年は在宅医療機器の分野にも進出し、睡眠時無呼吸症候群(SAS)向けの持続的自動起動陽圧ユニット「JPAP」を開発している(2016年度グッドデザイン賞で金賞受賞)。自らもSASに悩まされていたというフック氏も自社製品を使うことで症状が改善し、よく眠れるようになった。一方で「欧米の製品も使ってみたが、われわれとの考え方の違いに気づいた」という。「欧米メーカーは医療機器なのだから無呼吸を解消するだけでいいという考え。睡眠そのものへの配慮がなく、朝起きてもきちんと眠った気がしない。快適な睡眠は人間にとって重要な要素なのだから、JPAPの開発では眠りの質にもこだわった」

よく眠れなくても無呼吸ではないからよい、後遺症があっても命が助かったからよい――それは果たして本当の治療と言えるのだろうか。病気を治して、かつ健康で豊かな人生を送れるようにすることを目指すべきではないか。そうした考えがメトランの開発姿勢の根幹にあるように思える。

持続的自動起動陽圧ユニット「JPAP」

企業情報

株式会社メトラン

株式会社メトランは、医療機器(人工呼吸器・麻酔器・モニター関係)の開発・製造・販売及び輸出入業務、動物医療関連機器の製造・販売を通して社会に貢献し、安全性と優しさを提供しています。

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