BreakThrough 企業インタビュー

類例のない「曲がる導波管」で大容量時代のデータ伝送を担う株式会社米澤物産

2020.03.12

SHARE
  • facebook
  • twitter

「株式会社米澤物産」は、インテリア資材、アパレル雑貨資材、産業用資材を手がける社員65人の細巾織編メーカーです。同社は70年近い歴史のなかで磨いてきた高度な織物技術を活かす企業連携により、5G時代の有望なデータ伝送路として注目を集める「フレキシブル導波管」を開発しました。「金属を織る」という新たな分野に挑み、IT分野への進出を果たした同社代表取締役社長の米澤稔喜氏に、製品の概要や企業連携への思いを伺いました。


独自の二層構造で、データ伝送に高い総合力を発揮

大容量のデータを安定して伝送できる有線データ伝送路は、デジタル革命の進展に欠かせません。しかし従来品には、一長一短がありました。

「同軸ケーブルには汎用性とコストメリットが有りますが大容量・高速通信性には劣ります。光ファイバーには高速通信性・大容量のメリットが有りますが、接続性・コストの問題が有ります。既存の金属導波管には接続性・屈曲・コストの問題が有ります。開発したフレキシブル導波管は光ファイバーと比べて通信距離は劣りますがトータルでは扱いやすく使いやすいケーブルになっています。」

米澤物産の「フレキシブル導波管」は、管を樹脂製の内部誘電体と組紐状に織った銅箔の2層構造にすることで、金属製の導波管が持つ高速通信性などのメリットを保ちながら「柔軟に曲げられる」性質を与えたものです。

「金属を屈曲に対応できる組紐状にすることで、曲げても電波の伝送が妨げられないのが特徴です」

高い総合力に柔軟性を兼ね備えたこの製品には、省スペース性が求められる通信基地内の配線、データサーバやスーパーコンピューターの高速通信配線、車など移動体内部の配線として、また大容量通信時代の一般通信向けケーブルとして大きな期待が寄せられています。

技術を活かした挑戦で業務の幅を拡げる

同製品は「福井県工業技術センター」と「オリンパス株式会社」との共同開発に、米澤物産が後から加わる形で完成されました。

「当時、管の構造はほぼ形になっていたものの量産に向け課題があるという話でしたので、当社の“織る”技術で協力したいと申し出ました」

これまでにも同社は、大学や研究機関などとの共同開発・研究を積極的に進めてきたほか、設備投資にも力を入れています。

「産業界の変化の早さや今後の社会状況を考えれば、現在の主力事業が好調でも安心してはいられません。そこで国内外の展示会への参加や他社との交流で情報を集め、“織る”技術を軸にしながら事業の幅を広げてきました」

実は金属だけで織物を織るのは初挑戦でしたが、数カ月の入念な調査の末、対応可能と判断。「後から加わった分、リスクも取りながら開発に深く貢献したい」と専用織機の独自開発にも取り組み、2月にはサンプル用試作品の量産に入る予定です。

新たな分野での企業連携も歓迎

現在、同製品が金属製の導波管とほぼ同じ性能を実現しているのは60GHzの帯域です。同社ではこの電波帯域を広げながら、航空機や宇宙事業向け、2030年からの6G向けにも展開していきたいと考えています。

「製品化に当たっては、導波管を覆うジャケットなどを手がける協力会社も必要です。“餅は餅屋”のことわざどおり、畑違いの分野では専門性の高い企業の力を借りた方がいい。技術とやる気のある企業さんに手を挙げていただくのは大歓迎です」

連携による課題解決を有望な選択肢とする同社。そこには米澤氏の次のような考えがあるようです。

「今手がけている仕事が、明日もあるとは限らない。今後も、“織る”という軸はしっかり守りながら、時代に合わせて柔軟に変わっていける会社でありたいと考えています」


企業情報

株式会社米澤物産

代表取締役社長・米澤稔喜(よねざわ・としのぶ)

1952年に創業した、福井県福井市の細巾織編メーカー。ブラインドの紐などのインテリア資材を中心に、アパレル雑貨資材、各種産業用資材など、細幅繊維資材に特化した専業メーカーとして、国内でも数少ない社内一貫生産体制を敷いている。性能・機能・寸法公差などにおいて工業製品並みの品質管理を目指し、外部連携にも積極的に取り組んでいる。

企業情報ページはこちら

取材日:2020年1月23日

SNSでシェアしよう

関連記事