AI(人工知能)を活用するための第一歩

世の中で AI(人工知能)やディープラーニング(深層学習)といったフレーズを聞いたり見たりする機会が増えています。
ただ、なかなかAIとは何かといった正確な知識を知ることは難しいのも事実。
そこで、AIの正しい理解を得るためにLeapMind(リープマインド株式会社)さんが取り組まれている「ディープラーニング(深層学習)」事業のお話を基に、次世代の社会を動かす力になり得る「AI」のお話をエンジニアの脇坂さんに伺います。

AI(人工知能)とは?
ディープラーニング(深層学習)とは何か?

長崎

高度な技術を持っている中小企業も、継承者不足や生産性低下など人材不足の問題が顕在化しています。しかしAIをうまく活用し、機械がその部分を行えるようになれば、そういった問題を解決する糸口が生まれるかもしれませんね。

AIは人工知能と呼ばれがちですが、それ以外にも実に多くの定義がされています。しかし、世間では「AI」という言葉をよく見たり、聞いたりします。少なくともビジネスに実用できるまでに技術が進歩したということでしょうか?

まずLeapMindさんでは、AIを使って、どのような取り組みをされているのか教えてください。

脇坂

私たちはAIを使ったファクトリーオートメーション※1に注力しています。その中でも開発を進めているのは、「AI」の技術の中にある機械学習(マシーンラーニング)の一種「ディープラーニング(深層学習)」です。

機械学習とは人工知能のプログラム自身が学習するための仕組みです。機械が学習するには、データを「YesかNo」で判断する必要があります。なぜならコンピュータは0と1でしか判別できないためです。この判別を「分ける手法」とし、機械学習は、コンピュータが大量のデータを処理しながらこの「分け方」を自動的に取得しています。

この「分ける」という処理にも色々と手法があります。ディープラーニングに用いられる手法は、「ニューラルネットワーク」という方法です。

「ニューラルネットワーク」は人間の脳神経回路をヒントに考え出された手法で、脳のニューロン※2の繋がりを疑似的にプログラムで表しています。その繋がりを何層にも重ねて学習することを「ディープラーニング(深層学習)」といいます。

ディープラーニングでは、画像データ、音声データ、自然言語データなどの複雑なデータを扱うことが可能になりました。これらのデータの中には様々な情報が入っています。今までは情報から意味のある「特徴」をすべて人間が考えて取り出していました。人間が「特徴」となるデータを適切に出すことができれば、機械はうまく動き、そうでなければうまく動かなかったのです。

しかし、ディープラーニングは、大量のデータをもとに、コンピュータ自らが「特徴」を抽出します。そうすることで、状況や目的に合わせて適切な知識を自ら獲得し、活用ができるようになりました。

※1 工場における生産工程の自動化を図るシステム。FA(エフ・エー)と略される
※2 脳を構成する「神経細胞」。神経細胞は、電気信号を発して情報をやりとりする細胞

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ディープラーニングの可能性
=人と機械の融合とは

長﨑

その技術は先ほどお話に出たファクトリーオートメーションという部分で、どのような使い方をされているのでしょうか?

脇坂

ファクトリーオートメーションでは、異常検知など不良品を見つける技術でディープラーニングが使われています。

例えばネジを大量生産した際の不良品を見つけるために、センサや画像から得たデータを活用するのですが、膨大に溜まっていくデータから異常な部分を高い精度で見つけるためにディープラーニングが用いられます。

AI自体が最適な指示を探索する学習モデルを作成するために、膨大な量のデータを処理する時間や電力、GPU(画像処理ユニット)のように大量のデータを処理できるサーバが必要です。そのため弊社ではディープラーニングを行う演算処理を加速させながらも、長時間使用する電力のランニングコストを抑えるために省電力化を実現させたソフトウェア開発とネットワークモデルを効率的に進められる独自の小型ハードウェアを開発しています。

複雑で大量の計算が必要になるディープラーニングをコンパクトでシンプルにすることで、様々な用途で活用できます。

長﨑

今まではスーパーコンピューターのような大掛かりな設備が必要だったものが、小型化し、あらゆる場所に「AI」を組み込めるようになるということですね。 省電力化、高速化の技術を進めるのはなぜでしょうか?

脇坂

われわれは、「人と機械の境目をなめらかにし、世界をより良くする」ことを目標としています。人間の能力を拡張する役割として機械がありますが、さらに肌感に近いところで使用できるようにしたいと考えています。

例えば現在でもスマートフォンをあまり意識せずに私たちは使用していますが、より使用者が意識せず機械によって、拡張された能力を感覚的に使用できるようにするのが私たちの目標です。
イメージは、アニメの「攻殻機動隊」のような世界※3です。そのような近未来的な世界を、現実で再現しようとすると高度なGPUが入ったサーバが数えられないほど必要です。しかし、巨大な設備のままでは私たちの目標は遠くなってしまいます。その域に達するには、高速化と省電力化を実現させたソフトウェアと軽くて小型のハードウェアが不可欠です。

※3 科学技術が飛躍的に高度化し、多くの人間が電脳によってインターネットに直接アクセスできるような世界

長﨑

人間と機械を繋ぐ役目として、「AI」が存在しているということですね。

脇坂

その通りです。繋ぐ役目としての「AI」にするために「ディープラーニング」の高い認識性能や分類性能が重要になってきます。今までの機械学習では理解できなかったデータの「特徴」を抽出することができるからです。画像を見て、「特徴」を抽出して、見分けるというのは人間の視覚に相当するといえます。その精度がさらに上がれば視覚や聴覚などに頼っていた部分を機械に代替することができます。さらにセンサを組み合わせることで、匂いや味などもAIに学習させることができるようになります。

ディープラーニングを使ったデバイスが多く生み出されて、それらが自律的に動くようになれば、デバイスを意識することなく使用できる未来がグッと現実味を帯びてきます。

長﨑

人間の感覚などが互換されて、人と機械の境目がなめらかになるとどんなことが起こるのでしょうか?

脇坂

例えば製造業では品質や精度などをあげるためにAI自体が、自立的に色々と判断するようになります。すると今まで品質管理に使っていた時間が大幅に削減できるようになります。

長﨑

製品検査にAIが入ってくれば、製品精度は飛躍的に伸びていきますね。
中小企業は、まずは品質管理のような部分からAIの導入を初めてみればいいのかもしれません。人の手先として、機械を用いることもできるようになりますか?例えば何かを磨きあげたりすることなどできるのでしょうか?

脇坂

「お手本」があれば、可能だと思います。「お手本」があるのと無いのとでは、学習の効率が違います。無い場合でも学習する方法はありますが、まだまだ精度が低くいため、効率的ではありません。

長﨑

さらにAIの技術が進めば人間は、お手本となるモデルを作る方に一生懸命になるということですね。モデルができたあとは、機械とコンピュータに任せておけるというのが理想のひとつですね。

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AIを活用するための第一歩

長﨑

中小企業がこれからAIを活用すると考えた時に何から始めればいいのでしょうか?

脇坂

各企業がもつ「お手本」は何か?を意識して、それをデータ化しておくことでAIに活用できます。「お手本」となるデータとは、製品やサービスの良し悪しがわかる「意味」のあるデータです。

例えばネジの「不良品」を写真にとっておけば、AIに不良品を学習させることができます。それが1個だけですと異なる「不良品」は発見することが難しいので、多種多様な「不良品」の画像データを残しておいてください。それが100個、1000個と不良品のデータが集まる分だけ、将来多くの不良品を見つけることができるようになります。集まった不良品データと合格した良いネジのデータを分類してAIに学習させることで、精度の高い製品を安定して生産させることができるようになります。

長﨑

中小企業はAIやディープラーニングを導入することで、多くの「お手本」データを抽出し、学習させることができますね。その結果を上手く活用できれば新しいイノベーションを起こすることができるかもしれないですね。

しかし「お手本」があれば良いとすると人工知能は、人間を超えることはないということでしょうか?

脇坂

今のディープラーニングでは、論理的なことができないという欠点があります。物事を段階的に関連付けて考えるというよりも、感覚的に分けるのがこの技術の特徴です。

例えば「ケニア」と書かれた看板と一匹の黄色い動物が写った写真があったとします。人間ですとケニアという土地柄と動物の色や形をみて、この黄色い動物は「ライオン」という答えが簡単に出ます。しかしディープラーニングだと画像の中にある特徴を段階的に関連させていくことが苦手なため画像一枚だけでは「ライオン」という答えを出すのが難しいのです。

逆に多くの画像データがある上で、その中からどれが「ライオン」なのかを感覚的に判断するのが、ディープラーニングは得意です。

論理的に段階を踏んで関連付けしていく技術は、別の「機械学習」で研究されています。他の技術と掛け合わせることで論理的に考え、直感的に判断する人工知能が生まれる可能性がありますが、人間を超えて考えるというのは現段階では、現実的ではありません。

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ディープラーニングの未来

長﨑

さらに未来で、ディープラーニングはどのように活用されていくのでしょうか?

脇坂

宇宙や、深海、火山などで人間の活動に制限がある場所で、機械が自立的に活動出来るようなディープラーニング開発を進めています。個人的な夢の話ですが、AIが初めて見る月でも自律的に岩を削り、更地にし、ビルを建てるなどの活用も考えています。

長﨑

機械を行かせるだけで、沢山のことができたり、わかったりするということですね。月にAIが自律的にビルを建てるというお話も非常に可能性を感じます。さらに中小企業がもつ技術を組み合わせれば、より可能性は広がるのではないでしょうか。今後も「人と機械の境目がなめらかになった便利な世界」の夢に期待したいと思います。

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comment

少々難しい話も登場しましたが、単に人工知能という捉え方では、本当の意味でのAIを理解したとは言えないようです。しかも、彼ら(LeapMind社)の目指すAIによるディープラーニングは、中小企業の生産現場に大きな可能性をもたらせてくれそうです。
脇坂さんも「ぜひ、中小企業の方々も相談に来て欲しい」とおっしゃるように、AIをどう活かし、どう取り入れるかは、中小企業のイノベーションの一つの鍵になると思います。

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脇坂琢也 Vice president of engineering

横浜国立大学電子情報科在学中よりアルバイトでSIer(System Integrator)に、退職後フリーランスとして、Webサービス・アプリの設計・構築・開発をメインに、インタラクティブなプロジェクションなどの技術支援を行うフルスタックエンジニアとして活動している。

LeapMindは、Deep Learning専業のスタートアップ。
「インターネット」と同じくらい重要な21世紀を代表する技術「Deep Learning」技術を応用し、LeapMindはあらゆるモノに適用するDoT (Deep Learning of Things) を加速させている。GPUやクラウドコンピューティングを頼れないような場面でもDeep Learningの適用が可能となるDeep Learningソリューション「JUIZ(ジュイス)」を開発中。その開発に向けてLeapMindでは、Deep Learningのソフトウェアとハードウェアの両領域において研究開発を行なっている。

長崎義紹 新価値創造ナビゲーター/paragraph代表

『Begin』や『Men's EX』などの創刊編集企画、『WIRED日本版』の再創刊時の編集長を務める。また様々なファッションブランドなどのブランディングディレクションも経験。現在はUNIQLOCKやNikonなど数多くの企業のWEBディレクションを行い、WEBマガジン『TOKYOWISE』の編集長も努めるなど様々なクリエイティブ活動を行っている。

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