株式会社クリスタルプロセス営業本部長の葛間優太氏
自社の技術を活用しながら、事業の幅を広げていきたい——。そんなとき、ほかの業界の企業からニーズを聞き出したり、異業種の頼れるパートナーとタッグを組むのは有効な方法です。では、その相手を見つけるには、どのような方法があるのでしょうか。コーティング剤・研磨剤といった表面処理技術の研究開発を行い、新価値創造展への出展をきっかけに国内外のさまざまな企業と連携を進めてきた「株式会社クリスタルプロセス」にお話を伺いました。
異分野への展開効果により10年連続で出展
「株式会社クリスタルプロセス」では、多彩な表面被膜の技術を活かして開発したコーティング剤・研磨剤などの製品を、主として自動車産業向けに提供しています。同社が新価値創造展に初めて出展したのは、公式名称が「中小企業総合展」だった2010年。以来、今2019年度まで出展を継続してきました。
「自動車業界が大きく動くなか、異業種にも事業の幅を広げたいと考えたことが出展のきっかけでした。特定の産業にフォーカスした一般的な展示会と異なり、新価値創造展にはさまざまな業種の方が参加します。そこで既存商品の利用方法や新商品開発のヒントが探せるのではないかと考えました」
同社営業本部長の葛間優太氏は、出展の狙いをそのように語ります。より多くの出会いの機会を得るため、出展の方法にも工夫を凝らしました。
「自動車関連の展示会であれば、社名を見て来場者の方からブースに来てくれますが、異業種の方が多い新価値創造展ではそれが難しい。そこで出展製品で処理した実物や、製品の使い方が分かる実演を中心に展示することでブースに足を止めていただけるようにしました」
その成果もあり、同社は多数の企業との出会いと知名度の向上に成功。展示会で縁を得たジュエリーメーカーとは同社のコーティング剤を用いて金属アレルギーを防ぐための共同研究を行い、同じく展示会で出会った韓国のハウスメーカーとは、人工大理石を使用したキッチン用コーティング剤の製品開発を行っています。
世界初の手法により、どこでも、手軽にメッキが可能に
この11月に行われた「新価値創造展2019」では、同社は新たに開発した「Polisher Plating System」によるめっきにしたい部分を鏡面メッキ被膜にするコーティングシステムを出展。ハンドポリッシャーを使って塗布することで、素材を鏡のように光り輝かせる効果を持つと言います。
「本製品はめっき無機塗料と専用のポリッシャー(研磨機械)を使ってメッキを行う、世界でも例のないタイプのもので、当社ではその仕組みを『Polisher Plating System』と呼んでいます。電着メッキや真空蒸着メッキといった従来のメッキ方法では設備の初期投資が必要になりますが、この方法なら場所を選ばずどこでもメッキ加工が行えます。また電着メッキのように、毒性がある六価クロムなどの薬剤も不要。メッキ加工したい部品を取り外す必要がありません」
こうして開発された特許出願中の「Polisher Plating System」は、その効果と手軽さから自動車をはじめとする各種製造業や住宅分野など、幅広い分野で導入が期待されています。
一般的な展示会との違いが活用のポイント
10年間出展を続けている新価値創造展の特徴を、同社ではどのように捉えているのでしょうか。
「新価値創造展に出展あるいは来場するさまざまな業界の方々からお話を伺うことで、各業界のニーズを把握できますし、勉強にもなります。既存製品の異業種展開の方法や新製品開発のヒントを得られることが、まず利点の一つとしてあげられるでしょう」
もちろん、「こういう商品が開発できないか」「貴社の製品はこういう用途には使えないか」など、より直接的な質問を受けることもあります。さらに知名度の向上や、製品の販売、別業種への展開などにもつながっているそうです。
このような多様なメリットにつながるポイントとして、葛間氏は出展者同士がフランクに意見交換できることを挙げてくれました。
「未知の企業にこちらから連絡を取り、『一緒に研究開発しませんか』と話をするのは、通常は非常にハードルが高いと思います。しかし新価値創造展での出会いであれば、最初の取りかかりもスムーズで実際の案件にもつながりやすい。ここでの出会いをきっかけにまた新たな価値を生み出していければと考えています」
取材日:2019年10月17日
企業情報
株式会社クリスタルプロセス
葛間優太営業本部長
1994年創業。無機合成化学・有機合成化学分野の最先端技術を駆使した高機能な表面被膜剤の研究を通し、メンテナンスフリーへ向けた無機質塗料、窓ガラス用透明カラーコート剤など、表面処理技術に関わるコーティング剤・研磨剤といった製品の開発・製造・販売を行う。
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